第12回 健康講座 骨を強くする食事と運動
今回は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)について勉強しましょう。
目次
からだを支えている骨についてまず解説します。
骨はコンクリートの固まりのように思われるかも知れませんが、実は内部は空洞が多く、その中に骨梁(こつりょう)といわれる柱が無数に存在し、内側から骨を支えているのです。骨梁は骨にかかる力に合わせて、骨をしっかり支えています。
たとえば、背骨なら、体重をしっかり支え、なおかつ左右、前後への動きに対してもしっかり支えられるように、縦横に張りめぐらされた柱のように骨梁が存在しています。
しっかりした骨というのは、骨梁がしっかりしている骨のことを意味します。
骨の内部の骨梁を模式的に示すと下図のようになります。このように、無数の柱が骨を支えているのです。
ところが、骨粗鬆症になるとどうなるかというと、下図のように柱である骨梁一本一本が、細くなり、また、数も減ってしまうのです。そうすると骨はもろくなってしまい、ちょっとした力が加わると(転んだときなどに)骨折が起きてしまうのです。
つまり、骨粗鬆症とは、骨量が減少し、骨が変化してもろくなった状態で、骨折しやすい状態をいいます。
骨というのは、実は、常に作られ、また壊されているものなのです。その働きをしている2種類の細胞があります。骨芽細胞と破骨細胞の2種類の細胞です。
骨芽細胞は、カルシウムを分泌しながら骨細胞へと変わり、固い骨組織=骨梁を作り上げる働きをします。たとえて言うなら、カルシウムというセメントを塗りながらしっかりした骨梁を作り上げる働きをしています。
一方、破骨細胞は、カルシウムをからだに循環させるために完成した骨を溶かす働きをします。どういうことかというと、カルシウムはからだには常に必要なものですが、食事などから摂るカルシウムが少ないとき、あるいは、カルシウムが失われてしまったときのために、骨というのは体の中にカルシウムを貯蔵しておくところでもあるのです。
この2種類の細胞が働いて、骨は常に作られ(骨形成)、また壊される(骨吸収)を繰り返しているのです。
ですから、骨は生きていて、状況によって、骨が強くなることも、また、弱くなることもあるのです。それは生活習慣で大きく変わってくるのです。
骨は身体の成長に合わせて強くなり、骨の強さは18歳ごろにピークとなります。それ以後は徐々に減少していきます。この減少はある程度生理的でやむを得ないものですが、減り方が極端だと骨粗鬆症になってしまいます。特に女性の場合は、閉経とともに女性ホルモンの低下により、骨量の減少が加速されます。女性の場合は特に骨粗鬆症にならないような生活習慣が大切になります。
骨粗鬆症の合併症
骨粗鬆症を予防するための生活習慣のキーワードは、食事、運動、日光浴です。
食事で注意することは、カルシウム、ビタミンD、マグネシウム、リンを摂るようにつとめることです。
カルシウムは骨の材料としてもっとも大切です。カルシウムと多くを摂ることが重要です。
一日のカルシウム摂取量は以下のように推奨されています。
骨粗鬆症の予防には一日800mg以上のカルシウムを摂ることが必要です。今までの食事に最低200mgのカルシウムが追加されるよう、食事を見直してみてください。
カルシウムは、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、大豆製品(豆腐、納豆)、小魚、海草類(ひじき、わかめ、のり)、緑黄色野菜(小松菜、チンゲンサイ)などに多く含まれています。中でも、牛乳のカルシウムは吸収率が高く、カルシウム源としてもっともよいと考えられています。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。
ビタミンDは皮膚に集まり、日光に当たると活性化されるといわれています。ビタミンDの多い食品を摂り、日光にもあたるとより効果があります。
ビタミンDの多い食品は鮭、ニシン、干し椎茸、カレイ、ウナギ、煮干し、サンマなどです。
マグネシウムも骨の材料となります。
カルシウム2:マグネシウム1の割合でとることが理想的とされています。
マグネシウムの多い食品は、アーモンド、カシューナッツ、大豆、落花生、ひじき、納豆、ほうれん草、インゲン豆、鰹、青のり、小豆、トウモロコシ、枝豆、バナナ、ココア、おかひじき、カマス、サンマ、あじ、小麦麦芽などです。
リンも骨の材料となります。
リンは穀類、肉類に多く含まれます。
しかし、リンのとりすぎはカルシウムの吸収を悪くするのでとりすぎは良くありません。インスタント食品、スナック菓子、練り製品などを多くとるとリンのとりすぎになる可能性があります。
逆に控えるべきものもあります。それは塩分と、アルコール、たばこです。
塩分:塩分をとりすぎると、尿へのカルシウム排泄が増えるので、塩分は控えめに。
アルコール、喫煙:アルコールの飲みすぎはカルシウムの吸収を低下させます。
喫煙もカルシウムの吸収を悪くします。
運動は骨粗鬆症の予防のために大切です。
運動は骨を刺激し、カルシウムが骨に沈着するようになり、骨が強くなります。また、運動によって骨への血流がよくなります。
さらに、転びにくくなり、骨折の予防にもななります。
お年寄りが転倒して骨折するシチュエーションとしては、意外と室内が多いのです。畳の上で、座布団につまずいたりして転んでしまうことが多いのです。とっさの時の身のこなしも普段の運動から養われます。
骨粗鬆症の予防のための運動としては、ウェイトトレーニングのような運動が効果的ですが、ウォーキングや水泳でも繰り返すことにより骨は強くなります。
温水プール浴の効果
実際、運動療法によって骨が強くなるかどうか調べたデータがあります(臨床栄養88, p1-12, 1996)。運動習慣のない閉経後の女性では1年間で骨密度は0.92%低下したのに対し、プール浴をはじめた人、すでに行っている人では骨密度はそれぞれ2.16%、1.55%増加しました。根気よく運動を続けることが大切です。
日光浴をすると皮膚にあるビタミンD前駆物質がビタミンDに変わります。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。ですから、時々日光にも当たるようにするとより効果的です。ただし真っ黒に焼くほどの日光浴は必要なく、木漏れ日の下で読書をするとか、公園に犬の散歩に行く程度の日光浴でかまいません。
人口の高齢化に伴い、社会的にも骨粗鬆症が重要視されるようになってきています。食生活や運動の習慣は今からでもはじめれば効果が上がることですので、生活をちょっと見直してみましょう。
<参考文献>