第19回 健康講座 効果的な運動療法とは
高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の予防と治療や、骨粗鬆症治療にも運動療法が効果的です。効率のよい運動療法について考えてみましょう。
運動習慣は今からでも遅くありません
こんな調査結果があります。
- 65歳以上のアメリカ人女性の調査で、運動をしていなかったが、運動するようになった人たちは、運動習慣のないままだった人たちと比べ、 7年間の調査期間中の死亡率が52%と低かった (JAMA 2003、5月14日号)というものです。
つまり、65歳を過ぎてからでも運動を始めると体によい効果があるといえるのです。
米国スポーツ医学会の推奨する運動( 1995年)
- 中等度の身体活動を一日合計30分以上(8〜10分程度の細切れでも可)、ほぼ毎日行う
- 家事労働など日常生活でのプログラムさていないものも積極的に含め定義している
中程度の運動強度とは
- 心拍数が138ー(年齢/2)となる程度の運動
- 楽であるからややきついと感じ始める程度
この1か2の基準で適当な運動強度を判断してください。1はエアロバイクなどのスポーツジムでは有用でしょう。実際には2を基準とするのがわかりやすいでしょう。
運動強度は中程度でよい理由
- 運動強度が強いと運動を行っている最中の血圧が上昇する
- 強い運動では継続が困難
- 降圧効果は運動強度が軽くても同等
次に、各生活習慣病と運動の効果について簡単に解説します。
高血圧と運動
10週間の運動(週3回の30分程度のウォーキング)後には患者さんの50%に降圧効果が現らます。
平均すると、
- 収縮期血圧がー11mmHg
- 拡張期血圧が-6mmHg
下がると言われています。
しかし、運動を中止すると4週間で効果は消えてしまうこともわかっています。
糖尿病と運動
糖尿病における運動療法には以下のような効果があり、食事療法とともに運動療法は糖尿病治療に欠かせないものとなっています
- インスリンの効きがよくなる
- 食事療法とともにエネルギーの摂取、消費のバランスをよくする
- 加齢や運動不足により体重が減少するときに起こる筋萎縮を防ぎ筋力を保つ
高脂血症と運動
肥満傾向のある中年男性を対象に、週3回45分間の運動を9ヶ月行った。さらに食事療法も行った。中性脂肪、総コレステロールは減り、善玉コレステロールは増えた。運動と食事療法の両方を行うとより効果的だった、というデータがあります。
骨粗鬆症と運動
- 運動は骨を刺激し、カルシウムが骨に沈着するようになります
- 運動によって骨への血流がよくなる
- 転びにくくなり、骨折の予防にもなる
- ウェイトトレーニングのような運動を繰り返すと骨は強くなります
- ウォーキングや水泳でも繰り返すことにより骨は強くなります
日光浴も大切です
- 日光浴をすると皮下にあるビタミンD前駆物質がビタミンDに変わります。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨を強くします
運動療法の実際
ストレッチ
- 運動の前に筋肉を伸ばすストレッチ体操を行いましょう
- アキレス腱、ふくらはぎ、下腿前面、大腿部前面、大腿部後面、肩のまわりの筋肉、背すじをそれぞれ10〜20秒間くらい伸ばしましょう。
ウォーキングの実際
ウォーキングのフォーム
- 目線は正面
- 腕の振り下ろしは力まずに肩甲骨を引くように腕を後ろに引き、ごく自然におろす
- つま先はしっかりとあげる
- 着地はかかとから
- 拇指球を押し出す
- ひざの後ろをのばす
- お腹を引き上げる
- カラダ快適BOOKSウォーキング&ランニング大百科より
生活の中で運動の取り入れ方
- 通勤はつとめて歩く
- なるべく階段を利用する
- 時間があいたら運動しよう、ではなく、この時間は運動をしよう、と決める
- 犬の散歩とウォーキングをセットにする
運動はいつ行うのがよいか
- 早朝:血圧の変動が起こりやすく、特に朝食前では低血糖になる可能性もあるのでよくない
- 食事の直後は、まだ食べ物が消化していないので好ましくない
- もっともいいのは、食後2時間前後
膝や腰が痛い場合は
- プールでの水中歩行をやってみましょう
- トレーニング器具も利用してみましょう
運動を中止すべき症状
- 睡眠不足
- 二日酔い
- 吐き気
- 全身がだるい
- のどが痛い、咳をする
- 足元がふらつく
- 下痢をしている
- 朝食をとっていない
- めまい
<まとめ>
効果的な運動療法のポイントとは
- 太陽の日を浴びながら
- 日光浴(骨粗鬆症に効果)になります
- 時間的には、朝食後あるいは昼食後となり、空腹時をさけることにもなる
- ストレッチなど準備体操をしてから
- 早足のウォーキングを
- 一日合計30分
- できれば1回に20分以上持続
- 水分補給は忘れずに