埼玉県膠原病友の会 医療講演会 テーマ「膠原病の内臓病変について(心臓、肺、腎臓、肝臓) 

平成29年6月4日(日)、埼玉県膠原病友の会医療講演会でお話をさせていただきました。
テーマ:「膠原病の内臓疾患について(心臓、肺、腎臓、肝臓)」
場所:埼玉県障害者交流センター

20170604iryoukouennkai.pdf へのリンク

<質疑応答>

質問1 シェーグレン症候群と強皮症10年目です。この冬頃から朝起きるとのどの痛みを感じます。冬場はそのまま風邪になるのが多いです。今は 昼間自然に治っていますが、のどの痛みのならないようにするにはどのようなケアが必要ですか。シェーグレン・強皮症 病歴10年 女性73歳)

答え:シェーグレン症候群では唾液が少ないために口の中が乾燥しやすくなり、痛みや感染症の原因となることがあります。唾液分泌を促す薬はいくつかありますが、それ以外の方法としては、(1)こまめに水分を摂る:枕元にペットボトルなどを置いておいて夜中でも補給するようにする。(2)マスクをして寝る:吐く息には水蒸気が含まれています。その水蒸気をマスク内にためておいて、息を吸うと湿気のある空気を吸うことになる。感染予防にもなる。(3)加湿器を枕元に置く。(4)バイオティーン、オーラルバランス、ペプチザルなど口腔内湿潤ジェルをつかう。などがあります。

質問2 この病気から出てくる症状は遺伝性関係するのか。今は落ち着いていますが、たまに皮膚がかゆく、そこのところはざらついています。冬の寒い時、1本の指のみ白くなりひどい時は冷たく感覚がなくなる感じです。 強皮症 病歴11年 女性59歳)

答え:いわゆる遺伝病には血友病、筋ジストロフィーの一部、小児代謝性疾患などがあり、一定の確率で遺伝する疾患を指しますが、膠原病、強皮症は遺伝病ではありません。ただ、家系内に膠原病のある方がいらっしゃるケースが多いことは確かです。遺伝だけでなく、環境因子も発症にかかわっているためでしょう。症状はいわゆるレイノー現象の症状です。血管が収縮して指先に血が通わなくなっている状態ですから、そうなっている時間が長くならないように暖めてできるだけ早く元の色に戻すようにしましょう。

質問3 2014年ころ、皮膚筋炎になり7月から9月まで2ヶ月入院してその後通院中です。(現在は3か月1度)現在、プレゾニンを1日7mg服用しています。順調な場合はどの位のペースでプレゾニンを減らすことができますか。例えば、3か月ごとに1mg減らせるとか。皮膚筋炎 病歴 3年 男性69歳)

答え:一般的には一割ずつ減らします。併用薬、間質性肺炎を合併しているか、それまでの減量中に再燃したことがないか、ステロイドによる副作用の程度はどの程度か、なども考慮し、減量していきます。

質問4 ①唾石(だせき)があり口の中より手術したがとれず、やはりまた少しですが腫れ心配です。②ここ2年くらい尿蛋白が1+2+を繰り返しています。腎臓の検査は必要ですか。SLE 病歴 36年 女性61歳)

答え:①SLEと直接関係があるかどうか疑問ですが、唾石はまたできるということもありますし、口の中という敏感なところですから手術による違和感や腫れも残るでしょう。時間をかけてよくなっていくものだと思って下さい。②「腎臓の検査」というのは生検のことだと思います。講演の中でも話しましたように、ループス腎炎には6つの型がありそれによって治療方法も変わってきます。腎生検をする上で問題となること(長時間仰向けでいられない、出血が止まりにくい、腎臓がすでに萎縮して小さくなっているなど)がなければ一般的には受けた方がよいと思います。

質問5 ステロイドと免疫抑制剤を併用して3年になり、血圧、血糖値が上昇してきました。今後どのような進み方をするのか、またどう対処していけばよいのか教えてください。多発性筋炎・皮膚筋炎 病歴 4年 女性60歳)

答え:ステロイドにより糖尿病が顕性化したり、悪化したりすることがあります。また、血圧が上がることもあります。ステロイドや免疫抑制剤を使っていなくても、糖尿病や高血圧に対しては、糖分、塩分を控える食事と、可能であればウォーキングなどの運動が勧められるわけですが、ステロイドや免疫抑制剤を使っていてもその点は同じです。さらにそれでも十分下がらなければ、高血圧、糖尿病の合併症を防ぐために薬が必要となることもあります。ステロイドは脂肪がつきやすくなる副作用があり、それも体の中心に脂肪がつきやすくなるのですが、それに加えて食欲が増す、という副作用もあります。非常に難しい問題ですが日頃の少しずつの努力の積み重ねが大事です。

質問6 3年前、心筋梗塞でステントを入れていただきました。退院指導で納豆、お味噌汁、水分を制限されました。最近、納豆は食べて大丈夫だと分かりました。血液の流れを良くするためのアスピリンとクロピドグレルが納豆を食べても大丈夫とのことでした。恐る恐る食べ始めようかと思っていますが、本当に大丈夫でしょうか。SLE 病歴 37年 女性72歳)

答え:講演の中でもお話ししましたように、ワーファリンを飲んでいるときは、ビタミンKを多く含む納豆は食べるとワーファリンの効きが悪くなってしまうので、納豆は食べられませんが、アスピリンとクロピドグレルなら問題ありません。納豆は食べても大丈夫です。

質問7 ①先日、電車内と駅で意識を失ったのですが、脳梗塞を起こすこともあると聞きました。今後、起こりうる合併症や症状を知りたいです。橋本病・シェーグレン・原発性胆汁性肝硬変・強皮症・SLE・頸椎症 病歴 12年 女性51

答え:脳梗塞につながるかもしれない意識障害だとすると、一過性脳虚血発作だったのでしょうか。確かにその場合、脳梗塞を将来起こす危険があります。それを防ぐためには、脳梗塞の危険因子と言われる、高血圧、脂質異常(コレステロールや中性脂肪が高い)、糖尿病、肥満などをしっかり治療することが必要です。また、水分もこまめに摂るようにしましょう。心臓や腎臓の状態が許せば、食事の時の水分以外に1リットル以上は摂りましょう。中身の量がわかるペットボトルや水筒を使って、一日何本以上の飲むと決めて飲みましょう。

質問8 病院で、プラケニルを勧められているのですが、どうしたらよいでしょうか。SLE 病歴 15年 女性44歳)

答え:プラケニルには抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用などがあり、アメリカではSLEや関節リウマチの標準薬ですが、日本では過去に抗マラリア薬による網膜症の副作用が問題となり(当時はマラリア、リウマチ、全身性エリテマトーデス、腎炎、ネフローゼ、てんかんにも使われた、クロロキン9001800mg/日が使用量だった)、使用できなくなってしまったことがあり、認可されていませんでした。しかし、クロロキンの代謝物であるヒドロキシクロロキンは網膜に対する結合はクロロキンよりは弱い、といわれ、最近効果が見直され、副作用についても十分注意して使えば比較的安全であることはがわかり、数年前に日本でもSLEに対しては使用できるようになりました。ガイドラインでは、「累積投与量が 200 g を超えた患者,肝機能障害患者または腎機能障害患者, 視力障害のある患者,あるいは高齢者は,網膜障害など の眼障害のリスクが高い」とされています。そのような患者さんは定期的に(年1回)眼科で網膜の検査を受けることとなっていて、もし初期変化が見られたらすぐに中止することとなっています。一日200mgか400mgが投与量ですから、200mgの場合1000日、400mgの場合500日を超えたら定期的な検査が必要です。

質問9 現在、プレドニンを5mg飲んでいます。すでに、白内障になり、虫歯がひどくなり、大学病院で抜くことになりました。次にどんな影響がでるのか心配です。顕微鏡的多発血管炎 病歴 10年 女性75歳)

答え:プレドニンは現在5mgということですが、もっと多く飲んでいた時期もあったことでしょう。ステロイドの副作用が気になるところだと思います。確かに、白内障が進みやすい、歯周病が悪化しやすい(虫歯そのものは関係ないと思います)、などはステロイドとは無関係ではないでしょう。いろいろな副作用はありますが、ポイントはバランスのよい食事、適度な運動、休養、睡眠、感染予防(うがい、手洗い、歯磨き、入浴、フットケアなど)などで予防できることもあります。もともと歯が悪い、糖尿病、高血圧の素因がある、骨粗鬆症の家族歴がある、など副作用が出やすい人は特に副作用対策を主治医と相談しましょう。

質問10 4月からプラケニルという薬を飲み始めました。副作用を心配しています。どのような薬なのでしょうかSLE 病歴 10年 女性61歳)

答え:質問8の答えと同じ

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