第25回健康講座 からだにやさしいダイエットについて
今回は、食事のお話ですが、”食事療法”と固く考えずにすむようダイエットのお話をしたいと思います。
ダイエットは、健康のため、治療のため、美容のため、などいろいろな理由で行われますが、なかなかうまくいかないのが現実です。ダイエットがうまくいかない理由として次のような理由が考えられます。
“ダイエット”の問題点
- 無理なダイエットのために長続きしない
- リバウンドが起こる
- 栄養バランスが悪くなり体調を崩す
- でも体重は減らしたい
そこで、今回は、体に無理なく、体重を減らすにはどうしたらよいか考えてみましょう
まず、体重を減らした方がよい場合はどんな場合でしょう。減らさなくてもいいのにダイエットを考える必要はありません。
減量が勧められる場合
- BMIが25以上の場合
- BMI 25以上というのは,
- 体重が、「身長(m)x身長(m)x25」以上ということです。下の表のようになります。
- どうしてBMIが25以上だと減らした方がよいかというと、BMI 25以上の人は糖尿病、高脂血症、高血圧などの罹患率が高くなるからです
145cm |
53kg以上 |
150cm |
56kg以上 |
155cm |
60kg以上 |
160cm |
64kg以上 |
165cm |
68kg以上 |
170cm |
72kg以上 |
- 糖尿病、高血圧、高脂血症、脂肪肝、痛風、逆流性食道炎などがある場合
減量により得られるもの
- 中等度から高度の肥満では減量による健康上のメリットが大きい
- 糖尿病、心疾患、高血圧、高コレステロール血症などに効果あり
- わずかの減量でも、血圧、コレステロールなどに効果がある
BMIについて
- 体格を表す数値、従来の“肥満度”に代わるもの
- 体重÷(身長(m)x身長(m))で計算されます
- BMI=22がよいとされる
- BMI 25以上は肥満と判定されます
- BMI=22というのは次のようになります
145cm |
46kg |
150cm |
49.5kg |
155cm |
53kg |
160cm |
56kg |
165cm |
60kg |
170cm |
64kg |
BMI 22がよいとされる理由
- 平成2年、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川在住の、40〜59歳の男女約4万人の10年間の追跡調査
-
- BMI 22付近の人の死亡率が最も低い(参考文献2より)
- また、BMIが25を超えると糖尿病、高脂血症、高血圧などの罹患率が高くなるということも言われています
減量のために必要なこと
- 体重は食事中のカロリーと消費するカロリーのバランスで調節される
- 体重を減らすには、
- ”もっと動く”(消費カロリーを増やす)か
- ”少なく食べる”(摂取カロリーを減らす)
- のいずれか
- 両方行えばより効率的
- 減量は、運動習慣と食習慣を変えるもので、それらの習慣が以後ずっと続けられるようなものでなければならない
摂取カロリーと消費カロリーのバランスを図で表すとこんな感じです
ダイエットのコツ
- 長続きするダイエットを
- 食事の量を極端に減らしたり、ある食品は全くとらない、というようなダイエットは長続きしない
- 食事のタイプを徐々に変え、食事の量を徐々に減らしていくと長続きさせやすい
- 理想的なダイエットとは
- 好き嫌いも考慮に入れて、健康のために必要なカロリーと栄養素を含んだもの
ダイエットの前に確認すること
- どのくらいのカロリーがちょうどよいのか
- 栄養バランスはよいか?
- 現実的で今後続けることが容易か?
- その食事をずっと続けられるか?
どのくらいのカロリーがよい?
- 今の体重、活動量によって決まる
- 多くの場合、標準体重x(25〜30)カロリー
- 減量ペースは1週間に0.5kg以下に(最初の1〜2週間は水分の低下で早く減るかもしれない)
- いきなりBMI=22を目標としない
- “今よりちょっと減らす”だけでも効果はあるはず
栄養はとろう
- ビタミンとミネラルを
- タンパク質を1日50グラム以上(女性)、63グラム以上(男性)
- 炭水化物は少なくとも100グラム
- 食物線維を20〜30グラム以上
- 脂肪からは1日の力口リーの30%以下
- コレステロールは300mg以下
- 8〜10杯以上の水
具体的にはわかりにくいと思います。バランスのよい食事のとりかたとして、日本では食品交換表、アメリカではフードピラミッドというものがあります。
バランスのよい食事
表1 |
主に糖質を含む食品。ご飯、パン、麺類。いも、糖質の多い野菜と種実、豆類など |
表2 |
果物。ビタミンミネラル、食物繊維を多く含んでいます が、糖質も多く含んでいるのでとりすぎに気をつけましょう |
表3 |
主に、タンパク質を多く含む食品。魚、肉、卵、チーズ、大豆製品 |
表4 |
牛乳、乳製品。カルシウムの供給源として重要 |
表5 |
主に、脂肪を含む食品。バター、サラダ油、マヨネーズなどの油製品 |
表6 |
緑黄色野菜、きのこ、海草、こんにゃく。ビタミン、植物繊維が豊富です。 |
- これらのグループをまんべんなく、あるグループの食品が多くなることがないようにとるように、となっています。
バランスのよい食事
- これだと、どれを多くとって、どれを少なくとるかわかりやすいと思います。食品交換表に比べ、果物、乳製品の量が多くなっていますが、それは、もともと食品交換表が糖尿病の患者さんを対象としたものだからと思われます。
バランスのよい食事
- さらにやさしくすると、このように主食、野菜、蛋白源を必ず毎食とるようにする。そして、できれば1日30品目の食材をとるようにする、という考え方もあります。
何をとりすぎているか・・・よくあるパターン
- 次のようなパターンでカロリーをとりすぎていることがよくありますので参考にして下さい
- 果物のとりすぎ
- 油(ドレッシング、マヨネーズ、揚げ物)のとりすぎ
- 芋類、かぼちゃなどを野菜と思ってとりすぎ
- 肉類のとりすぎ
- 果物は、食品交換表では1日1単位(80 kcal)。リンゴなら半分、バナナなら1本、ミカンなら3個、などです。
- 油はほんの少しです。(食品交換表の写真を見てみてください)
- 肉類は、脂身の量にもよりますが、片手に乗る程度の量まで、と考えましょう
ラベルの読み方
- 食べ物や調味料を選ぶとき、栄養成分表のラベルが参考になります。下のような表が書いてあると思います
栄養成分 |
100gあたり |
エネルギー
たんぱく質
脂肪
炭水化物
ナトリウム
カルシウム |
○○kcal
○○g
○○g
○○g
○○mg
○○mg |
- 1食分で表示されているものと、100gあるいは100mlあたりなどで表示されているものがあります
- とくに、エネルギー、脂質(油)に注目しましょう
- ナトリウム(g)x2.54=食塩(g)となるので注意
はかりを使おう
- 食べるものすべてを測るのではなく、ちょっと減らそう、と決めたものだけは測るようにする
- ちょっと気になったとき測ってみる習慣を
ダイエットに関する迷信
ダイエットに関する誤った情報もありますので、ちょっと解説します。
- 高蛋白・低炭水化物がよい?
- コレステロールや脂肪が多くなる可能性がある。野菜や果物が少なくなる
- 低カロリーとなると思われるので一時的には体重は減る。
- バランスはとった方がよい。
- 穀類を食べると肥る?
- 穀類(ご飯、パン、麺類)はそれ自体は脂肪もカロリーも低い。
- 多くの場合、脂肪の多いトッピングや味付けに問題がある。
- ○○は脂肪を燃やす?
- 脂肪を燃やす食べ物はない
- カフェインのように代謝を早めるものもあるが体重を減らすほどではない
- “低脂肪”、”ノンファット”とはカロリーゼロ?
- 低脂肪製品はカロリーは確かに低い
- 調理されたものでは糖分を多く含んでいてかえってカロリーが高い場合もあり注意を要する
- ラベルをよく見てみましょう
- ファーストフードは体に悪いから食べてはいけない?
- 量の多いものは避けるべき、あるいは人と分けて食べるべき
- フライドポテト、ビッグハンバーガー、フライドチキンなどは避けるか人と分けるようにする
- サラダやグリルドチキンにするべき。
- 食事を抜くのが減量の早道?
- 朝食抜きや回数を減らしている人の方が体重は重い傾向があることがわかっている。かえって空腹感が強くなるためだろう。
- 少量の、低カロリー、低脂肪食を必ず食べるようにしよう。
- 夜8時以降に食べるとふとる?
- 何時に食べるかはあまり重要ではない。一日にどのくらいのカロリーをとるかによって決まる
- 寝る前に食べたくなったら、その日一日どのくらい食べたか考えてからにしよう。
- 筋トレは筋肉をつけるからよくない?
- 腕立て伏せ、スクワットなども体重を減らすのには効果がある。
- ウオーキングなどに加えて筋トレを行うことは減量に効果がある。
- ナッツ類は脂肪が多いからよくない?
- ナッツは不飽和脂肪酸、食物線維、タンパク質などを含む
- 食べ過ぎなければよい。
- 乳製品はよくない?
- 乳製品は体には必要な栄養素を含んでいる
- アメリカでは9〜18歳と50歳以上の人には牛乳、ヨーグルト、チーズを3回とることが勧められている。
- 19〜49歳では2回。1回は牛乳ヨーグルトの1カップに相当。
- 菜食主義になることは健康になること?
- 野菜中心ではカロリー、脂肪は低くなり体重は減る
- しかし、鉄、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB12、亜鉛、蛋白などの摂取量が足りなくなる可能性がある。
外食のときの工夫
- 全部食べたら何カロリー?メニューに表示されていることも多い
- 油を控え、野菜をとるように
- どう食べて、どう残すかを考えましょう
- メニューを見てカロリーの低いものを探すか、食べたいもののカロリーを確認して残し方を考える
- 残す勇気を持ちましょう
- はじめから半ライス、ハーフポーションで頼むなど工夫してみましょう
- 外食用ガイドブック(参考文献4など)も参考に
体重表をつけてみよう
- 目盛りの大きいグラフに
- 小さな変化でも目立つように
- ”ためしてガッテン”で紹介された”計るだけダイエット”方式
体脂肪計も活用しよう
- 水分の影響を受けやすいので測定結果の解釈に注意
- 毎日同じ時間に測るようにしましょう
- 体重が減って、体脂肪率が増えていたら、水分が減ったための体重減少の可能性があるので注意
- 体重と同様、ゆっくりの変化がよいのです
よく噛むことも大切です
- 満腹中枢を刺激するので食べすぎになりにくくなります
- だ液が出ると消化によい
- 歯のためにもよい
<まとめ>
- 今の食事より”ちょっと減らす”から始めてみましょう
- “ちょっととりすぎているもの”は何か考えてみましょう
- よくあるパターンは以下のようなケースです
- 果物のとりすぎ
- 油(ドレッシング、マヨネーズ、揚げ物)のとりすぎ
- 芋類、かぼちゃなどを野菜と思ってとりすぎ
- 肉類のとりすぎ
- バランスを考えて、”ちょっととりすぎているもの”から減らしてみましょう
- 栄養成分表も参考にしましょう
- 外食のときは何を残すか考えましょう
- 体重表をつけてみましょう
<参考文献>
- 米国NIDDKのホームページよりWeight loss for Life
- (フードピラミッド、ダイエットに関する迷信などについて詳しく解説しています、英語)
- 厚生労働省研究班による多目的コホート研究、肥満指数と死亡率との関係について 概要− 厚生労働省多目的コホート研究からの成果 −
- 糖尿病食事療法のための食品交換表 日本糖尿病学会/編、文光堂
- 肥満解消のための外食カロリーBOOK鈴木吉彦/著 塩沢和子/著 主婦の友社
- 外食でのポイントが詳しく書かれています。類似の本がたくさん出ています。
- ためしてガッテン2003年10月15日放送”みつけた!ダイエットに成功する本当の理由”
- (”計るだけダイエット”の体重表がダウンロードできます)