10.日常生活の注意点

Q:通院先、落ち着いているときは近くにしたいが注意すべき点

A:まず近くのリウマチ、膠原病の専門の先生を捜すことです。自分の住まいの周辺に、現在の主治医の先生の知っている先生がいないかどうか聞いてみるのも良いでしょう。あるいは日本リウマチ財団(03-3946-3551)に問い合わせてみるのも良いでしょう。そしてこれまでの経過や現在の状態、今後の見通しなどについて詳しい紹介状を、今かかっている先生に書いてもらう必要があります。忙しい外来の最中に書くのは大変ですし、あわてて書いて大事なことを書き漏らしてはあなたにとって不都合になりますので、余裕を持って次の外来受診の時までに書いておいてもらうようにお願いするのがよいでしょう。そしてその後も近くの先生と現在の主治医の先生とが連絡を取り合えるような状態であればなおさら良いでしょう。そうしておけば万が一、近くの先生では解決の難しい状況になったとき、連絡もスムースに運ぶでしょう。そのようなことを頼むのは先生に失礼なのではないかと考える患者さんもおれるようですが、それも大学病院など特定機能病院の役割ですので、難しく考えずにお願いしてみてください。(p. 64〜67)

Q:名古屋の膠原病専門医を教えて欲しい

A:日本リウマチ財団に問い合わせてみると教えてくれます。(p. 64)

Q:どの程度の運動なら可? ダンス、エアロビ、ダイビングなどは?

A:どの程度動いても大丈夫かということを安静度といいますが、患者さんの安静度というのは主に内蔵病変の状態によります。もし蛋白尿が多量に出ているような腎病変があるとか、肝臓の病変があるとか、間質性肺炎があるというような場合には運動の制限が必要になります。逆に内蔵病変がなく皮膚症状や関節痛だけの場合には運動の制限はかなり緩くなります。翌日まで疲れが残らない程度の運動でしたら可能です。具体的に運動をどのくらいにするのがいいかというのは個々の患者さんで異なりますので主治医の先生に確認してください。(p. 230〜231, 239〜241)

Q:太らないように、体力をつけ、バランスのいい食事とは

A:一日のトータルのカロリーは2000Cal前後。総蛋白量は90g前後を目安にし、緑黄色野菜、繊維質、カルシウムを多くとるように心がけてください。糖尿病食交換表に準じて表現すると総カロリーは25単位、内訳は表1 12単位、表2 1単位、表3 6単位、表4 2.6単位、表5 1.5単位、表6 1単位となります。ステロイド服用中は肥満になりやすく、特にプレドニン換算で20mg以上服用しているような場合はカロリーのとりすぎにならないように注意してください。(p. 232)

Q:外出はしてもよいのか

A:内蔵合併症の程度によりますが基本的には外出は可能です。内蔵、特に腎臓、肝臓、肺、心臓などの臓器病変がある場合は多少の制限が必要になります。その場合は主治医の先生の指示に従ってください。特に内蔵の病変がなければ、疲れの残らない程度の運動や仕事、外出は可能です。(p. 230〜241)

Q:日光にあたらない工夫

A:よく患者さんから、日光は避けなければいけないそうですね、ということを聞かれますが膠原病の患者さんはすべて日光を避けなければならないというわけではありません。まず、日光を避けなければならないのは日光過敏症のある患者さん、特にSLEの患者さんです。それ以外の患者さんでは、日光を避けておくにこしたことはありませんがあまり神経質になりすぎない方がよいと思います。日光を避けなければならない患者さんの場合、日差しが強くなければ日焼け止めクリームなしに10〜15分程度の散歩は可能です。日差しの強い日は日傘や帽子を使うようにしてください。乗り物に乗っていても窓からの日差しに注意してください。また日焼け止めクリームの使用もよいと思います。その際、日焼けを防ぐ効果の目安であるSPF、PAの大きなものがよいでしょう。SPFは紫外線のUVBを防ぐ強さを表し、だいたい16以上をすすめています。(p. 239〜240)

Q:散歩時、筋肉痛、関節痛があったときは我慢して続けない方がいいか?

A:リウマチの患者さんでは基本的には関節は動かすようにしていた方がよいのですがどの程度まで動かしてよいかが問題になります。関節の腫れと熱感のあるような炎症の強い時期には関節への負担は減らしながら動かすようにします。具体的には、膝や足首などの加重関節では、歩行により体重の負担がかかりますので、歩行よりもベッド上での運動などがよいです。また、プールでの歩行は体重をかけずに筋力の訓練になるのでよい方法だと思います。そのような運動で筋肉痛や関節痛が長く残るような場合は関節への負担は大きいと考え、運動量を減らすようにしてください。従ってご質問のようなケースでは筋肉痛や関節痛が翌日まで残るようでしたら散歩の距離を減らすなどの工夫をしてください。また運動のあと入浴するというのも良い方法です。手や指の関節の場合はボール握りなどの力をつけるような運動は控え、マッサージや関節をよく動かす運動を中心にしてください。(p. 138, 240)

Q:歯の治療のどんなことがいけないか

A:このような場合、二つの方向から考えなければなりません。一つは歯科治療が膠原病に及ぼす影響であり、もう一つは膠原病や膠原病の治療薬が歯科治療に及ぼす影響です。歯科治療の中でも虫歯の治療のように歯を削って型を取るだけで済むような治療は問題ないと考えられますが、抜歯などの処置では、処置そのものあるいは抜歯後の感染などが体へのストレスとなり、膠原病の再燃のきっかけとなることがあります。また、膠原病の治療薬のうちステロイドや抗血小板薬などは歯科治療に影響することがあります。従って歯科治療が必要となった場合は必ず主治医の先生に相談して、歯科の先生宛の紹介状を書いてもらうようにしてください。(p. 233〜234)

Q:関節リウマチといわれたがこのままの治療(痛み止め)を続けてよいか、妊娠、出産はよいか

A:関節リウマチの薬物治療は抗炎症剤と抗リウマチ薬の併用が一般的ですが、関節の痛みや腫れが落ちついたら抗炎症剤はやめるか痛みの強いときだけ服用することにし、抗リウマチ薬は継続するという方法もあります。疾患自体が慢性に経過するものですので、ほとんどの場合、治療も継続することが必要となります。妊娠出産については関節リウマチだから不可能ということはありませんが、妊娠出産によってリウマチが悪化する可能性があります。妊娠出産の経過中も関節リウマチについて専門医に診てもらうようにするのがよいでしょう。抗炎症剤は胎児に影響する可能性がありますので、妊娠中は中止にするのがよいとされています。抗リウマチ薬や免疫抑制剤は胎児への安全性が確認されていませんので、妊娠の半年くらい前から中止しているのがよいでしょう。妊娠中はむしろリウマチは落ちつくことが多いとされていますが、痛みが強いときはステロイドを使ってコントロールをするようになります。(p. 236〜239)

Q:紫外線をどの程度避けたらよいか

A:日光過敏症のある患者さんでは紫外線を避けた方がよいわけですが、どのくらいということについては一定の基準がないのが現状です。少なくとも、海やプールで体を焼くというようなことは避けてください。そのほか街を歩くとき、乗り物の窓際に座っているときなども注意が必要です。日傘、帽子、日焼け止めクリーム(SPF 16以上のもの)などを使って日光をできるだけ避けるようにしてください。しかし、日光過敏症のない膠原病の患者さんではそこまで日光を避ける必要はありません。(p. 239〜240)

Q:かかりつけの先生もシェ−グレン症候群と言っても半信半疑、どうしたらわかってもらえる?

A:おそらく大学病院などでシェーグレン症候群の診断を受けておられるのだろうと思います。風邪などの症状の時は大きな病院に行かなくても、診てくれる先生が近くにいるとよいと思います。しかし、その先生があなたがシェーグレン症候群であることを理解していてくださることが必要です。一言でシェーグレン症候群といってもいろいろなタイプや合併症もありますので、あなたがどのようなタイプで、どのような合併症があるのかということを、診断をつけてくださった先生に、かかりつけの先生宛の紹介状として書いていただくのがよいでしょう。

Q:手のひら、足の裏が熱をもって眠れないときは水で洗うのと湯で洗うのとどちらがよいか

A:シェーグレン症候群では暑くないのに汗が出るとか、逆に暑いのに汗をかかないといったような症状が出現し、かなり悩まれる患者さんもおられます。このご質問の症状もシェーグレン症候群の症状かもしれません。手や足の裏が熱を持つ原因が関節炎によるものであれば水で冷やす方がよいですが、そうでない場合はどちらでもかまいません。ご自分にあった方法で対処してください。

Q:体力が落ちてきたと思うので水泳をしたいがよいか

A:これまでも運動や安静度についてのいくつかの質問がありましたが、水泳も同様に考えてください。内蔵病変の有無や膠原病の症状が落ちついているかどうかなどによって変わってきます。また、ステロイドを大量に服用している場合は感染に対する抵抗力が低下していますので、プールは尿路感染の原因となる可能性があります。プレドニン20mg以上服用してるような場合は控えた方が無難でしょう。(p. 230〜231)

Q:本を読んでも言葉が難しすぎる

A:我々もできるだけわかりやすい言葉で書こうとつとめているのですがどうしても難しくなってしまうようです。やはり病気そのものが免疫や炎症などと深くかかわっているだけに病気の説明は難しいものとなってしまいます。そこで一つの方法ですが、膠原病についての本を読まれるとき、病気の原因や免疫とは何かというような難しいところはとばして、何をすればよいのか、何をしてはいけないのかというような、日常生活の中で実践的な必要な部分をまず読んでみてはどうでしょうか。

Q:ステロイド内服中、妊娠、出産時の胎児への影響、本人の注意事項

A:ステロイドの服用量としては少ないにこしたことはありません。妊娠容認の目安のうちステロイド投与量についてはプレドニン15mg 以下と我々は考えています。ステロイドの中でもプレドニンを飲んでいる場合は大丈夫ですがリンデロンでは胎児への影響が出ます。出産後はプレドニンの増量が必要となりますがプレドニンで20mg以下であれば授乳は可能です。(p. 236〜239)

Q:災害のとき薬はどうしたらもらえるのか

A:阪神大震災の経験から、病院への薬の配給は災害後約2日で回復すると予想されています。順天堂では少なくとも1週間分の備蓄が常にありますので、順天堂まで来ていただければそれまで飲んでいた薬をお出しすることは可能です。(注、順天堂で膠原病教室を担当していたときの回答です)もし遠方にお住まいで災害時に順天堂まで来られないという場合は問題になると思います。近くの病院で自分はいまこういう薬を飲んでいるということを申し出て、出してもらうしかないでしょう。そのためにはまず、自分の飲んでいる薬の名前と量はわかるようにしておいた方がよいでしょう。またそのようなときのために1週間分くらいは自宅に備蓄しておくのもよいかもしれません。

Q:担当医からこうしなさいという指示がないので不安

A:外来の時間は限られていてなかなか日常生活指導まで説明できないのが現状かもしれません。我々も反省しなければなりません。患者さんの方からこういうのはどうでしょうかと積極的に質問をするのも一つの解決策でしょう。また“膠原病を克服する”のような患者さん向けの本も読んでみるのも良いでしょう。膠原病、リウマチ関連の患者さん向けの本についてはこのホームページでも紹介していますので参考にして下さい(こちら)。

Q:食事で気をつけることは?

A:もし、腎臓病変があって蛋白制限や塩分制限が必要な場合にはその指示に従ってください。もしそのような制限がない場合には以下のことに注意してください。総カロリーは2000Cal前後を目安とし、蛋白量は90gくらい摂るようにします。ステロイド服用中は脂肪が付きやすいので、糖分や脂肪分の摂りすぎにならないように気をつけてください。緑黄色野菜などをたくさん摂り、ビタミンを摂るように心がけてください。ステロイドによる骨粗鬆症の予防のため、カルシウムも十分に摂るようにしてください。動物性脂肪では魚の脂であるエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸は膠原病の治療によい効果をもたらす可能性があります。このようなことに注意してバランスよく栄養を摂るようにして下さい。(p. 232)

Q:気分が悪く食事がとれなくなったときの対処は?

A:風邪で熱のあるときや体調のすぐれないときなどは食事のとれないこともあるでしょう。そのような場合でもできるだけ栄養はとるように心がけて下さい。ご飯はお粥など消化しやすい形にするのもよいでしょう。また、薬は必ず飲んだ方がよいのですが胃に何も入っていないと胃への負担になってしまいますので必ず何かとるようにして下さい。牛乳で薬を飲むのもよいでしょう。但しそのような飲み方がよくない薬もありますので主治医の先生に相談して下さい。食事も薬も全く受け付けないような状態の場合には必ず診察を受けるようにして下さい。

Q:自分でできる握力、筋力回復の運動療法

A:いろいろなタイプのリウマチ体操が考え出されていますのでそれを参考にして下さい。病気の状態によっては運動は控えた方がよい場合がありますので、運動を始める場合には必ず主治医の先生に相談して下さい。(P259〜261)

Q:強皮症のスキンケア

A:強皮症患者さんの皮膚は皮膚硬化、皮膚潰瘍をつくりやすく、いったん傷ができると治りにくいので皮膚を清潔に保ち、ひび割れなどしにくいようにクリームを塗るなどしてください。レイノー現象も起きやすいので指先をよく暖めるようにしてください。もし皮膚潰瘍ができてしまった場合はこまめに消毒し、軟膏を塗るようにしてください。どのような軟膏がよいかは潰瘍の状態で異なりますので、まずは主治医の先生にみてもらってください。指先に潰瘍ができてしまったときバンドエイドのような絆創膏を巻いている患者さんもおられますが、一日中そのままにしておくとかえってバイ菌がつきやすくなりますので、こまめに消毒してはり替えるようにしてください。(p. 168〜169)

Q:偏見対策

A:膠原病患者さんは、その病気について世間一般の人々の理解不足から様々な偏見を受け、いやな思いをされることもあるようです。伝染性の病気と誤解されている場合もあるようです。周囲の人にわかってもらうためにもまず、自分はただ膠原病だというのではなく、膠原病の中のどの疾患で、どのような状態で、どんな治療を受けているのかをまず自分自身できちんと理解するようにしましょう。そのうえで周囲の人たちにも説明してわかってもらえるようにしましょう。

Q:SEXについて

A:SEXそのものが膠原病の経過に悪影響を及ぼすことはありませんが、慢性関節リウマチや強直性脊椎炎の患者さんでは関節をいためない体位を工夫して下さい。また、妊娠は膠原病の経過に影響しますので、妊娠可能な状態かどうかは主治医の先生に相談してください。避妊には妊娠用隔膜やゼリー、コンドームの使用が安全です。(p. 239)

Q:アイバンク、腎バンクに登録しているが大丈夫か

A:アイバンク、腎バンクでは、登録された患者さんの臓器をいただくときに、その患者さんの状態や受けていた治療などを検討し、移植可能かどうかを判断します。膠原病の患者さんでも、それらの臓器に特に問題がないと判断されれば移植は可能です。また膠原病でなくても、それらの臓器に問題があったり、感染性疾患のある患者さんでは残念ながら移植は無理です。ですから膠原病だからという理由だけで移植できないということではありません。

Q:腎機能が回復すれば軽いスポ−ツは大丈夫か?

A:SLEを例にとると、腎機能が回復し、ほかの臓器病変がなく、ステロイドもほぼ維持量まで減量できたら軽い運動やスポーツは可能です。必ず主治医の先生に確認してからにしてください。しかし疲れ具合などに注意しながら運動量は少しずつ増やすようにしてください。もし翌日まで疲れが残るようでしたら運動量は多すぎると考えてください。(p. 230〜231)

Q:家族に理解してもらえず働け働けと言われる

A:膠原病は女性に多い病気ですので、嫁という立場の患者さんも多く、このような悩みをお持ちの方も多いことでしょう。病気が安定していないのに無理をするのは治療上好ましくないことですので家族の方の理解は是非とも必要です。もし入院するような機会がありましたら、その時に御家族の方にも主治医から説明してもらうようお願いするのがよいでしょう。入院していなくてもそのような時間を作ってもらい、説明してもらえるよう頼んでみるのがよいでしょう。

Q:会社を休んで通院することを会社の人に理解してもらえない、外見は元気そうに見える

A:前の質問と同じような状況ですがやはり周囲の方たちにはよく理解してもらった方がよいでしょう。会社の人となると主治医から説明するということはほとんどありませんので、患者さん自身が自分の病気を理解し、きちんと説明できることが重要です。もしどうしても理解が得られず、仕事の負担が病気の療養に影響するようでは仕事の内容をかえてもらうこともやむを得ないかもしれません。就職難、リストラの時代で容易なことではありませんが、あなたの体を第一に考えることも大切でしょう。

Q:縁談や見合いで病気のことをどのように話したらよいか

A:あなたがこれからも長くつきあっていかなければならない病気のことを相手に理解してもらうことは是非必要です。ですから、少なくとも、全く知らせないというのはよくないでしょう。しかし、縁談や見合いでは病気の理解の前にまず、お互いの理解が大切なわけですから、お互いの理解が得られた頃に病気について話し合うのもよいのではないでしょうか。

Q:来年からアメリカにすむ予定があるが、専門医はいるのか心配

A:アメリカにも膠原病の専門医はおりますし、膠原病の患者さんをサポートしてくれる会もあります。アメリカでは、リウマチについてはARTHRITIS FOUNDATIONという会が、SLEについてはLUPUS FOUNDATIONという会が、それぞれ患者さんに専門医を紹介したり、患者さん向けのパンフレットをつくったりしています。そこに問い合わせてみるのがよいでしょう。そして、現在かかっている先生からの紹介状を必ず持っていくようにして下さい。

Q:膠原病の患者の会のようなものはないのか

A:全国膠原病友の会日本リウマチ友の会があり、それぞれ定期的に専門医の相談会、講演会、などを開いており、患者さんの療養の参考となるような定期刊行物も出版しています。

Q:”病気とうまくつきあうように”といわれましたがどういう意味でしょうか

A:病気を持っていない我々が何気なく口にする言葉ですが、常に病気と向き合っている患者さんにとってはわかりにくい、あるいは失礼な表現だったかもしれません。

膠原病は日常生活の過労やストレスで悪化を来すことがよくあります。逆にある程度までは病気を悪化させることなく過ごすことができます。この”加減”には個人差があって、一概には言えません。また、日光、寒冷なども患者さんによっては病状に影響を及ぼす場合があります。こういったことをよく理解して、病気を悪化させないように過ごしていきましょう。というのがうまくつきあうという言葉で言いたかったことなのです。