5.膠原病の症状

Q:SLEで透析になった人も尿がでるのはなぜ?

A:腎臓にはいろいろな働きがありますが、とくに尿をつくる働きが重要です。体の中を循環してきた血液は腎臓を通過します。そのとき体の中で不要になった老廃物を尿として排泄し、体に必要なものは蓄えておくように選別する働きをしています。SLEでは腎臓が障害される、いわゆるループス腎炎を合併する患者さんがおられます。多くは体に必要な蛋白質が尿に出てしまうというタイプ(ネフローゼ)ですが、中には体には不要なものを排泄する力が弱くなってしまう状態、いわゆる慢性腎不全の状態になるケースがあります。慢性腎不全の状態が進行すると、本来体には不要な有害な物質が体の中にたまってしまします。その状態を尿毒症といいます。そうなってしまうと人工透析が必要になります。そのような状態でどうして尿が出るのかという質問ですが、透析が必要なほど腎機能が障害されても、腎臓の機能はゼロではありませんから尿は多少は出ます。ただし老廃物が排泄されていない尿が出ていることになります。

Q:症状がひどいときに出る紅斑は何?

A:全身性エリテマトーデスの患者さんでは頬に出る蝶形紅斑、手のひらに出る手掌紅斑、胸部や背部に出る輪状紅斑などがあります。いずれも状態が落ちついていないときに出現し、治療が必要となります。皮膚症状だけであれば軟膏だけ、あるいはステロイドの少量投与で済みますが、皮膚症状とともに内臓の異常も出る場合があります。その場合にはもう少し強力な治療が必要となります。入院が必要となる場合もあります。ですから新たな皮膚症状が出たような場合には必ず主治医に相談してください。(p. 146〜147)

Q:胃の激痛は何か?

A:膠原病そのものの症状として胃の痛みが出現することはあまり多くはありませんが、強皮症の患者さんでは、胃液が食道に逆流して起こる逆流性食道炎がおこることがあり、その場合にはみぞおちから前胸部にかけて、痛みや焼けるような感じがおこります。その場合には胃酸の分泌を抑える薬や食事の工夫が必要となります。

 胃の痛みの原因で多いのは、治療薬による副作用としての胃潰瘍や胃炎の場合です。慢性関節リウマチの治療に使われる非ステロイド性抗炎症剤や、ステロイドがその原因となり得ます。これらの薬剤による胃潰瘍の場合、薬剤の変更や抗潰瘍剤の併用により治療可能です。そのためにはまず、胃内視鏡検査を受けて、原因を明らかにする必要があります。

Q:足のつけね、膝がかぶれ、暖まると痒い、これは何か?

A:いわゆるじんま疹様の皮疹のようです。膠原病の症状の一部の可能性もありますし、アレルギーの可能性もあります。アレルギーの原因として、食べ物や衣服、服用中の薬などがあげられます。原因はいろいろ考えられますので主治医の先生の診察を受けて下さい。

Q:指の関節が膨らんで痛い

A:これは関節リウマチにみられる関節の腫れのようです。治療開始当初は効果もみられず痛みが続くと思いますが、徐々に効果が現れます。それまでは適度な安静と温熱療法、湿布等を併用する事が必要です。腫れて痛む時期は炎症が強い時期ですので、重いものを持ったり、負担のかかることは避けてください。しかし全く動かさないのはよくありませんので指の曲げ伸ばしを、痛みの強くならない程度には続けてください。家庭でできる温熱療法も効果的です。手であれば洗面器にお湯を入れて (温度はぬるいお風呂の温度くらい)約10分間つけて、その後水に約2分間つけるということを繰り返すという方法があります。湿布には温湿布と冷湿布があります。腫れて痛いような時期は冷湿布の方がよいでしょう。腫れが引いた時期であればどちらでもあなたに合った方でよいでしょう。温湿布はかぶれやすい欠点がありますので注意してください。(p. 134〜137)

Q:足の底が凸凹している感じ

A:関節リウマチでは足の指の付け根の関節に炎症がおこることがあります。その場合、足の底の違和感や凹凸感として感じられることがあります。このような炎症も長く続くと足の指の変形を来すことがあります。外反母趾として現れることもあります。その予防として足の裏と指のマッサージがあります。足の裏をよくもむことと、足の指の曲げ伸ばしや横へ広げることを行ってください。お風呂上がりに行うのがよいでしょう。

Q:治療開始後、症状が悪化したようだが

A:膠原病の治療は即効性のものはあまりありません。病気自体が勢いのある状態ですと治療効果が出るまでの間、効果が感じられないということがしばしばあります。悲観せず、主治医の先生に症状を話して根気よく治療していきましょう。

Q:膠原病では肺が侵されるが結核の既往は影響するか?

A:結核の既往が膠原病の肺病変の増悪因子になるなどの影響はありません。ただし、ステロイドや免疫抑制剤を使っている場合、結核が再燃することがあります。ステロイドや免疫抑制剤を中止できない場合には結核の治療薬を併用しながら治療していくことが必要になります。ツベルクリン反応も重要な手がかりとなりますので検査することがあります。“肺浸潤”、“肋膜”、“肺門リンパ節炎”なども結核のことを指すことがありますので、そのような既往のある場合は、その時にどのような治療を、どのくらいの期間受けたかも含めて必ず主治医に伝えてください。(p.214-222)

Q:母趾が時々しびれるがこれも膠原病の症状?

A:しびれといった場合、いろいろなことが考えられますが大きく二つに分けることができます。一つは血液の循環が悪くて起こる場合、もう一つは神経に障害がある場合です。前者は血管の通りが悪くなる場合で、血管炎や血栓によって起こります。悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性動脈周囲炎、動脈硬化、抗リン脂質抗体症候群などでみられます。神経障害は末梢神経炎や関節炎による神経の圧迫などでみられます。末梢神経炎は悪性関節リウマチ、シェーグレン症候群、結節性動脈周囲炎などでみられます。血管炎にしても末梢神経炎にしても血栓にしても治療法はありますので、検査を受けて診断をつけ、適切な治療を受けていただきたいと思います。

Q:季節によって痛みに差がある?

A:関節リウマチの患者さんでは一年の中では冬場や、あるいは季節の変わり目、特に入梅時などに調子の悪くなる方が多いようです。また、天候の悪くなる前に調子の悪くなることも多いようです。そのようなときに血液検査をしても悪化の所見はみられないのがふつうです。ですから、秋までは調子が良かったのに冬に入って痛みがでてきたというような場合、季節的な、一時的な症状の悪化の場合もありますし、あるいは治療の見直しが必要な場合もあります。検査結果が悪くなければあまり悲観せずに、関節を暖めて体操などをよくするように心がけてください。

Q:出産してから発病したが、2人目を出産したら悪化するか?

A:出産後に膠原病を発病するということはしばしばあります。また、すでに膠原病を発病している患者さんの場合には出産後に病状が悪化することもあります。女性にとって出産というのは大きな身体的ストレスですので体の変調を来すことは十分に考えられます。ですから膠原病の患者さんの妊娠の許可については慎重な判断をしていますが、もちろん妊娠出産が不可能というわけではありません。ある程度の条件をクリアしていれば可能です。それは膠原病がステロイドの維持量(プレドニンで15mg以下)の治療で長期間落ちついた状態を維持しており、内蔵の合併症もなく、胎児に影響するような薬剤を使っていないか使っていても妊娠中は中止できる、などというようなことです。これらの条件をクリアしており、妊娠中もきちんと管理されておれば出産は可能ですし、出産後に悪化することもほとんどありません。妊娠中のステロイドも胎児への影響は心配ありません。ただし多くの場合、出産後はステロイドの一時的な増量が必要となります。(p. 236〜239)

Q:糖尿病を合併した場合、体重減少について

A:ステロイドの副作用として糖尿病があります。もともと糖尿病のある患者さんでは、ステロイドの投与により糖尿病が悪化する可能性があります。糖尿病の患者さんで体重が急に減ってくるというのは必ずしも良い徴候ではありません。血糖が急に上昇している可能性があり、糖尿病の合併症をおこしてくる可能性もありますので、必ず主治医の先生に相談して下さい。

Q:手首に出ていた紅斑が上の方まで進んできたが

A:どのような紅斑かわかりませんのではっきりしたことは言えませんが皮膚の病変が広がっているということですので状態が安定していないことが考えられます。主治医の先生に相談してください。

Q:レイノ−があります。冬は特にひどい

A:レイノー現象は寒冷によって手指や足趾、耳たぶなどが白くなってしまう現象です。わずかな温度の低下や、精神的なストレスによっても起こることがあり、痛みやしびれを伴います。レイノー現象のある患者さんにとっては冬はもっとも苦手な季節ではないでしょうか。冬場は外出するときは必ず手袋をするとか急激な温度変化をさけるといった工夫が必要です。また、血管拡張剤などの薬も効果があります。(p. 54〜55)

Q:床につくと胃が痛むのはなぜ?

A:これだけでは何の症状かわかりませんが、もしあなたが強皮症の患者さんなら、強皮症に伴う食道蠕動の低下による症状かもしれません。強皮症の患者さんの中には、食道の下部の蠕動機能が低下するために、食べたものが胃に入っていくのに時間がかかったり、胃液が食道に逆流しておこる逆流性食道炎がおこる方もいます。逆流性食道炎では、横になると胃液が逆流しやすくなり、胸やけや胃の痛みを感じることがあります。その場合は、食事はなるべく消化しやすいものにする、食後すぐには横にならないようにする、寝る前にものを食べないように心がけて下さい。また、胃酸の分泌を抑える薬も効果があります。(p. 166)

Q:関節がガサガサしている

A:関節は、関節包という袋に包まれ、中は関節液で満たされています。関節液は関節の動きの潤滑油のような働きをしています。また、骨と骨の間には軟骨があって骨どうしの摩擦をやわらげています。これらの働きによりスムーズな動きが可能となっています。ですから関節包、関節液、軟骨のいずれに障害があっても関節の動きに障害が出る可能性があります。リウマチの患者さんの関節では、関節の中で炎症が起きています。初期には、関節包の内側にある滑膜という膜が腫れ、関節液が濁ってきます。さらに進行した場合、関節軟骨の破壊がおこり、関節の隙間が狭くなってしまいます(p. 126〜130)。関節を動かしたときのガサガサした感じはこのいずれの時期にも出現する可能性があります。適度な運動を行いながら治療していくことによりガサガサした感じも軽くなるでしょう。関節の炎症が強く、熱を持って腫れているような時期は軽く動かすにとどめ、温熱療法を行うのがよいでしょう。炎症の強い時期を過ぎてからはリウマチ体操のような運動を積極的に行う方がよいでしょう。(259〜261)

Q:寒気が時々あるがこれも症状か(シェ−グレン症候群)

A:シェーグレン症候群の患者さんでは眼や口の乾燥感は代表的な症状ですが、暑くないのに体がほてって汗が出たり、逆に寒くないのに寒気を感じたりといった症状も出現することがあります。ご質問の症状もシェ−グレン症候群によるものと考えられます。いくつか有効な薬もありますが、まずは薬に頼り切るよりも洋服の調節などにも十分配慮してください。

Q:下痢をよくするがこれも症状か?

A:膠原病の中でも、特に強皮症の患者さんでは下痢が症状となることがあります(p. 166)。また関節リウマチの患者さんで続発性アミロイドーシスを合併したような場合には下痢が主症状となることがあります(p. 227)。主治医の先生によく相談して下さい。いずれの場合も脂肪の少ない、消化しやすい食事にしてください。

Q:ヘルペス感染が膠原病の悪化に関係したか?

A:膠原病は治療により落ちついた状態(寛解状態といいます)を維持していくことが可能ですが、寛解状態を維持していく上で大切なことがいくつかあります。薬を勝手に減らしたりしないこと、過労、ストレスをさけること、そして感染症をさけることなどです。ですからヘルペスや帯状疱疹などといったウイルス感染が膠原病悪化のきっかけとなる可能性はあります。感染症をさけるといっても風邪をひかないようにすることは困難ですので、もし風邪をひいたような場合にはこじらせないように早期に治療を受けるようにしてください。(p. 214〜222)

Q:中枢神経が侵されると日常生活でどんな変化がでるのか?

A:おそらく、SLEの患者さんで、SLEには中枢神経症状が起こることがあると知って心配されてのご質問と思います。中枢神経というのは脳と脊髄を指します。脳は頭蓋骨の中にあり、脊髄は首からお尻までの背骨の中にあります。脳にはいろいろな働きがあります。手や足を動かす司令塔の役割、痛みや熱さ、冷たさ、視覚、聴覚、味覚などの感覚の中枢としての役割、平衡感覚を司る役割、思考、感情を司る役割などです。それぞれの中枢は脳の中のどこにあるかということもわかっています。そして、中枢神経が侵されたときの症状は、脳の中のどこが侵されたかによって症状は異なります。手足の運動麻痺、感覚の障害、平衡感覚の障害、感情の障害、記憶、認知障害などです。頭痛、吐き気などが起こることもあります。診断には脳脊髄液の検査、CT、MRI、脳波などが用いられ、障害の部位の確認をします。多くの症状は適切な診断と早期治療により回復しますが中には難治性のものもありますので、主治医の先生に症状をお話しになってください。(p. 150)

Q:寒い時手が白くなるがどす黒くなることもある、その違いは?

A:レイノー現象のことです。ふつう、指先が暖かく、ピンク色をしているのは血液が指先まで循環しているからです。そして、寒いときは指先に血液を循環させている毛細血管が収縮するために、指先は冷たくなり、白っぽくなります。レイノー現象のある患者さんではこの反応が強く起こります。普通なら指先が冷たくなるようなことはない温度でも、毛細血管の収縮が起きてしまい、血液が指先まで循環しなくなり、指先が白くなります。毛細血管の収縮がそれほど強くないときや、収縮の起こりはじめや回復してくる途中では、指先に血液が残った状態で循環が障害されることがあります。そうすると色は紫色やどす黒い色になります。色の違いはそのように起こっていると考えられます。いずれもレイノー現象の症状ですのでそのような症状があるときは手をよく暖めるようにしてください。(p. 53〜55)

Q:深呼吸をすると心臓の脇が痛くなるのも症状の一つ?

A:それだけでは膠原病の症状かどうかははっきりしません。深呼吸の時の痛みの原因としては肋骨の炎症、胸の皮膚・筋肉の障害、肺をおおっている胸膜という膜の炎症、心臓を包んでいる心嚢という膜の炎症などが考えられます。胸膜や心嚢の炎症がある場合、多くは持続性の痛みで、深呼吸時だけということはありませんが、初期にはそのような起こり方もあり得ます。胸膜炎や、心嚢炎の場合には早急な治療が必要です。診断には聴診、打診などの診察と、レントゲン、超音波(エコー)に加え、水がたまっているような場合には水をとって調べることも必要です。というのは水がたまる場合としては膠原病そのものによる場合と細菌が入ってしまっておこる場合などがあるからです。細菌によるものは膠原病患者さんに限らず、体力の落ちている状態などでは起こり得ます。このいずれかをはっきりさせる方法は、水をとって調べる方法しかありません。膠原病によるものであれば、ステロイドの増量により回復しますし、細菌性のものであれば抗生物質が有効です。深呼吸時の痛みとして肋間神経痛もあります。これは特に心配のいらないもので、湿布や暖めたりすることでよくなります。原因によって治療法も異なりますので主治医の先生によくお話ししてください。(p. 130, 147)

Q:時々脈が速くなり苦しくなるが

A:不整脈のうちの頻拍発作の可能性があります。必ずしも膠原病と関係はありませんが、強皮症(p. 166)、皮膚筋炎・多発性筋炎(p. 173)などでおこることもあります。診断には心電図、発作時の心電図、24時間心電図、心臓超音波検査などが必要になります。多くは適切な抗不整脈薬の使用で改善しますのでまずは主治医の先生にご相談してください。そのうえで必要があれば循環器の専門の先生にも診てもらうようにしてください。

Q:色素沈着、色素脱失とはどんなもの?

A:強皮症の患者さんにみられる症状で、皮膚の色が黒ずんでくるのを色素沈着、色がぬけ、白っぽいところがまだらにみられるのを色素脱失といいいます。(p. 163〜165)

Q:手足のヒビワレについて

A:強皮症に伴う症状です。手足の先の皮膚が硬くなり、ひび割れしやすくなります。割れたところから細菌が入ると腫れて痛くなります。寒さをさけ、手を清潔に保ち、手を洗った後はクリームを塗るなど保湿に努めてください。(p. 163〜165)

Q:温泉に入ると尿がでて浮腫がとれる。体にはよくないか

A:温泉やお風呂にはいると循環がよくなり、腎臓に行く血液も多くなり、結果として尿も多くなります。そうすると浮腫もとれるわけですが、入浴というのは以外と体力を消費します。長湯をするとだるくなるのはその現れです。ですから安静が必要な状態の患者さんでは入浴はあまり勧められません。温泉に入るのがよいかどうかは患者さん個人個人の状態によって異なりますので、温泉や入浴が可能な状態かどうかは主治医の先生の判断が必要ですので相談してください。(p. 134〜137)

Q:治療前になかった体の脱力感がある、薬の副作用なのか?

A:治療前になかった症状がでてきた場合には2つのことが考えられます。一つは治療がまだ効いてきていないということで、もう一つは薬の副作用です。膠原病の治療でよく使われるステロイドは、もともとは体の中の副腎という臓器から分泌されているホルモンです。これを薬として、本来体の中にある量よりも多くの量を服用しますのでホルモンのバランスが変わり、だるさや、人によっては眠れないなどといった副作用がでることがあります。体の方で順応してくると症状は軽くなりますが、ステロイドの種類を換えることで軽くなることもありますので主治医の先生に相談してください。ステロイド以外の薬でもだるさや眠気といった副作用は起こり得ます。咳止めやアレルギーの時に使われる抗ヒスタミン剤の副作用としてのだるさ、眠気はよくあります。薬の種類を換えることで解決することもあります。(p. 106〜111)

Q:脱力感は病気による筋力の衰えとは違うのか?

A:病気による筋力の低下は筋肉そのものの炎症のため、あるいは筋肉を動かさないための筋肉の萎縮などが原因です。ですから薬によって炎症を抑え、リハビリによって筋力を回復することが治療となります。脱力感というのは筋肉そのもの以外の炎症に伴う全身症状として、あるいはホルモンや電解質や血液のバランスが乱れたために起こります。ですから治療はそれらを正常に戻すことが中心となります。脱力感を感じるからといって病気が進行してきたのではないかと悲観せずに、まず主治医の先生に相談してみてください。

Q:シェ−グレン症候群だが、今のところ目と口の乾きだけだが他のところにも今後でるのか?

A:残念ながらその可能性がないとはいえません。ほかのところにでるとすると関節痛、腎臓、肝臓、甲状腺などです。定期的検査を受けて早い段階で適切な治療を開始することができれば軽くて済みます。症状が目と口の渇きだけでも、シェーグレン症候群と診断されているのでしたら定期的検査は欠かすことができません。(p. 175〜180)

Q:自覚症状があまりないのが恐い(シェ−グレン症候群)

A:シェーグレン症候群はあまり症状のないタイプから、乾燥症状に加え、関節痛、皮疹、発熱などを伴うタイプまでいろいろあります。健康診断の血液検査で異常を指摘されて調べてみたらシェーグレン症候群だったというような場合、あまり自覚症状はないかもしれません。そのような場合には特に治療も必要とされず、定期的な検査などで状態をフォローしていき、治療の必要性が生じたら治療をすることになりますし、治療の必要のないまま経過することもありますので定期的な診察と検査は必ず受けてください。(p. 175〜180)

Q:今の自分は病気のどのくらいの時期か、早期なのか

A:早期といった場合、発病してから日が浅いとか、病変の広がりがわずかであることをいうわけです。たとえば早期がんといえばがnがまだ大きくなっていない状態をいうわけですが、膠原病の場合、リウマチでは早期リウマチという概念が提唱され、発病後6カ月以内をさすということになっています。ですからほかの膠原病でもそのような期間を早期と考えることができると思いますが、疾患によっては短期間で内蔵の病変を併発することがあり、一概にはいえないという難しさがあります。従って今のところ、膠原病一般で早期の定義というのはまだありません。ですからそのご質問にははっきりとした答えは出せません。ただいえることは発病してから数カ月以内で、内蔵病変がないような場合は比較的早期と考えてよいかもしれませんし、治療に対する反応もよいことが期待できると考えていただいてよいと思います。

Q:強皮症だが脱毛するか

A:比較的まれですが、強皮症の皮膚硬化が頭皮に生じた場合には脱毛が起こります。その場合、全身の皮膚病変も進行性のことがありますので主治医の先生によく相談してください。

Q:関節リウマチだが口内炎がでてきた。

A:関節リウマチの症状として口内炎ができるということはあまりありません。他の膠原病、シェーグレン症候群や、全身性エリテマトーデスを合併した場合には起こり得ます。実際にはもっとも多い原因は薬の副作用の可能性でしょう。リウマチの治療に使われるいわゆる抗リウマチ薬の中には口内炎という副作用をもつものが多く含まれています。(p. 111〜113)

Q:眠れない

A:膠原病特有の症状として不眠というのはありませんが、病気についての不安や、痛みのために眠れないということはあるでしょう。また治療に使われる薬のうち、特にステロイドでは飲みはじめや量を増やしたときに寝付きが悪くなるといった副作用がおこり得ます。原因は様々ですので主治医の先生によく相談し、原因を確認して適切な治療を受けてください。あまり薬に頼るのはよくありませんが、眠れない日が続くと体も疲れてしまいますので場合によっては睡眠導入剤や精神安定剤を一時的に使うことで落ちつく場合もあります。

Q:首が痛くてマッサ−ジをするがそれでも効果がない

A:首の痛みといった場合、原因はいろいろ考えられます。首の筋肉からくる痛み、肩の痛みが放散するために起こる痛み、首の骨(頚椎)の変形による痛みなどです。また、首や、肩、胸の手術を受けている場合なども痛みの原因となり得ます。首の痛みの中心が筋肉で、それが炎症によるものでなければマッサージで痛みが軽快することはあるでしょう。しかし筋肉の炎症や頚椎の変形が原因のような場合にはマッサージだけでは効果は期待できません。湿布、消炎鎮痛剤の内服などが必要となることもありますし、関節リウマチの患者さんではまれに頚椎の亜脱臼を起こす場合があるのですが、そのような場合には頚椎カラーが必要になることもあります。原因に応じてマッサージだけでなく様々な治療が必要となりますので主治医の先生に相談し、必要があればレントゲンなどの検査も受けてください。

Q:ものを食べても味がない

A:味覚は、舌で感じて神経を通じて脳に伝わります。ですから舌に異常がある場合や舌の神経に異常がある場合は味覚に異常が生じます。シェーグレン症候群では唾液の分泌の低下に伴い、味覚に異常が生じることがあります(p. 178)。またリウマチや強皮症の治療に使われるDペニシラミン(メタルカプターゼ)の副作用に味覚障害がありますが、ビタミンB6を同時に服用することで予防できます。(p. 112)

Q:シェーグレン症候群といわれています。もともと辛い料理が好きだったのですが、キムチが食べられなくなってしまいました。なんとかならないでしょうか。

A:好きだった食べ物が食べられなくなったのですからお悩みは深刻だろうと思います。このご質問に答えるにはまず唾液の働きについてご理解いただき、唾液が少ないとどうなるのかを知っていただきたいと思います。
 唾液は一日に1.0〜1.5リットル分泌されます。食事をしていないときでも常に少しずつ分泌されているわけです。唾液は、食事の時は、口のなかで噛み砕いた食べ物を固まりにし、飲み込みやすくする働きをしています。また、唾液中の消化酵素はでんぷんなどを分解する働きもあります。また、食事以外の時は、口の中に雑菌が繁殖しないように常に掃除をする働きもしています。また、粘膜を乾燥から守り、粘膜の保護をしています。
 一方、味覚は、舌の味細胞に味物質が触れ、味細胞を刺激することによって神経を通じて認識されます。味覚は主として酸味、甘味、塩味、苦味の4種類の基本味の混合により認識されます。これらの味物質は水溶液の形で味細胞を刺激します。たとえば塩味の味の濃い食品は塩分の濃度が濃い水溶液となって味細胞を刺激するわけです。濃度が濃ければ味細胞への刺激も強く、より塩辛いものとして認識されます。口のなかで水溶液を作るのに大切なのが唾液の働きです。
 もし唾液が少ないと味物質は大変濃い水溶液となり味覚が麻痺することになります。また、味物質の水溶液濃度が濃すぎると痛覚が刺激されて痛みとして感じられます。激辛などの食品を口に入れたときの痛い感じがそうです。
 シェーグレン症候群の患者さんでは唾液の分泌が低下しているわけですが、唾液が少ないとどうなるでしょうか。
 前述した、食べ物を固まりにして飲み込みやすくする働きが低下しますので食べ物を飲み込みにくいという症状が出ます。また、口の中に雑菌が増えやすく、虫歯や歯周病の原因となります。そして、味物質の水溶液の濃度は濃くなるので、味覚が狂うことになります。もともと味の濃い食品では痛みとして感じられるようになってしまう可能性があるわけです。そればかりか粘膜の障害となる可能性があります。
 ですから、唾液の分泌がかなり低下している患者さんでは味の濃い食品は控えた方がよいのです。
 今まで好きだったものが食べられないのは残念ですが、味の濃さを調節して食べるようにしてみてはいかがでしょう。