6.膠原病の検査

Q:検査デ−タを教えてもらっても意味がわからない。(理解したいので膠原病教室を受講しました)

A:外来で行っている検査は主に血液と尿の検査ですがそれぞれ重要な意味を持っています。病気の状態がどうか、治療はうまく効いているのか、薬の副作用は出ていないかなどです。膠原病患者さんの療養においては患者さん自身が病気の状態を把握し、日常生活でどのようなことに注意すべきかを知っておいていただくことは必要です。膠原病教室では、あまり専門的にならずにできるだけわかりやすく検査データについても説明したいと考えています。(私が順天堂大学病院の膠原病教室を担当していた頃の回答です。このホームページでも少しずつ検査の見方を紹介したいと考えています。)

Q:腎生検ではかなり侵されているといわれたが、蛋白尿が出ていないので機能は回復しているといわれた。これはどう解釈したらよいのか

A:ある臓器に障害があるといった場合、その臓器の働きに異常があるといった場合や、その臓器の一部をとって顕微鏡で調べて異常があるという場合などがあります。腎臓の場合、一部をとって顕微鏡で調べることを腎生検といいます。膠原病では特にSLEの場合に必要になります。というのは腎生検の結果で治療法の選択や、予後(今後の見通し)が推定できるからです(p. 68)。腎生検を行い、異常が発見された場合、その異常の程度と血液や尿を調べてわかる腎臓の機能との間には隔たりがある場合があります。つまりご質問のようなケースです。血液や尿を調べてわかることというのは限られていて、表面的な部分しかわかりません。表面的にはよくても、中身は実はいろいろな障害があるという場合があるわけです。ですから腎生検ではかなり侵されているのでしたら油断はできません。しかし蛋白尿が出ている状態に比べればよいことは確かですので、治療前に蛋白尿が出ていて、出なくなったのでしたら治療効果が出ているということはいえると思います。

Q:自分はRF(リウマチ因子、リウマトイド因子)陽性。娘はIgE高値。自分の血を娘に輸血したら反応するのか?

A:RFは変性IgGに対する抗体です(p. 79)。そのような抗体をもった人の血液が体に入った場合に異常な反応が起きるのではないかという意味のご質問ではないかと思いますが、一言で答えるのは難しいです。まずいっておきたいのは、今の医学では、輸血の必要な患者さんに対して、血液型の同じ身内の方に集まっていただいて、血液を採って輸血するというようなことはほとんど行われていません。というのは、たとえ血液型が同じでも輸血による副作用が起こりうることと、時にはその反応は非常に強く、患者さんを死に至らしめることさえもあるからです。それを防ぐには成分輸血といって患者さんが必要としている血液の成分、(たとえば赤血球とか血小板とか血漿成分とか)だけを輸血することが必要になります。ですから身内の方の血液をそのまま輸血するということはほとんど行われません。ご質問に戻りますが、もしも仮にそのような輸血が行われたとしたら異常な反応が起こる可能性はあります。しかしそれはRFによって起こるというよりも他の原因と考えた方がよいでしょう。

Q:保険適応外の検査をされたが何なのか?

A:検査の多くは保険が適応されますのでそれぞれの患者さんの加入している保険によって患者さんの自己負担は1割から3割で済むようになっています。しかし新しい検査などは保険が適応されていません。保険適応外の検査は公費負担の対象にもなりませんので特定疾患の医療券をお持ちの患者さんにも負担していただくことになります。膠原病の診断、治療経過の観察のためにはそのような新しい検査も必要になります。膠原病でそのような検査を行う場合の代表的なものをあげます。

Q:症状を話さなくても検査で糖がでているとか感染症にかかっているとかわかるのか

A:基本的には患者さんの話を聞いて、診察をして、検査も行い、総合的に患者さんの状態を知るわけですが、尿に糖が出ているというようなことは尿を調べなければわかりませんし、逆に尿検査で糖が出ていれば症状を聞くまでもなく糖尿病や、腎性糖尿が考えられます。しかしその場合でも患者さんの症状から原因を探る手がかりは得られますので患者さんの症状は重要な情報ということになります。感染症については検査だけでは難しく、症状をよく聞く必要があります。

Q:検診でリウマチ反応が陽性といわれました。現在リウマチの症状はないと思います。今のうちにリウマチにならないようにする方法はないでしょうか?

A:俗にいうリウマチ反応は、正式にはリウマトイド因子といいます。関節リウマチの患者さんの80%前後で陽性となり、診断上大切な検査です。最近は検診でもリウマトイド因子を測ることが多いようです。ここで注意していただきたいのは”リウマトイド因子陽性イコール関節リウマチ”というわけではないということです。関節リウマチの患者さんでも約20%の患者さんはリウマトイド因子陰性ですし、関節リウマチ以外の膠原病でも陽性となることがあります。特にシェーグレン症候群、強皮症、全身性エリテマトーデスなどです。また、慢性肝炎、感染症、高齢者、妊婦などではリウマトイド因子が陽性となることがあります。だいたい数%といわれています。また、健康な人でも1%以下の人にリウマトイド因子陽性となることがあります。

検診でリウマトイド因子陽性といわれ、関節リウマチの症状(関節痛、関節の腫れ、朝のこわばりなど)がない場合は関節リウマチ以外の病気がないか確認し、それらがないという結果になれば心配することはないでしょう。ただし、早期の関節リウマチの診断や膠原病の診断は専門医で受けられることをお勧めします。

おそらくご質問の趣旨はこれからリウマチの症状が出てくるんじゃないか、そうならば早めに治療を始めたい、ということではないかと思います。ご心配はごもっともだと思います。しかし、今のところ関節リウマチの発病を予測する方法はありません。薬には副作用もありますので、薬を投与するのは薬が本当に必要な場合だけに限るべきだと思います。つまり、関節リウマチの発病が明らかな場合に限るべきだと思います。リウマトイド因子は陽性でも、そのまま健康で過ごせる可能性が高いわけですから、必要のない薬を使う必要はないでしょう。ただし、関節リウマチであれば早期に治療を始めることが重要ですから、関節痛やこわばりなどが出てきたら早めに専門医を受診し、治療を検討してもらいましょう。