コーヒーをたくさん飲む人はリウマチになりやすい?

“コーヒーの消費量とリウマチ因子、慢性関節リウマチのリスク”というタイトルの論文が発表されました(Annals of the Rheumatic Diseases 2000; 59: 631- 635)。以前、CNNニュースでも取り上げられたので、ご覧になった方もおられるかもしれません。この論文について簡単に解説します。

フィンランドのHelovaara博士たちの研究で、1978年から1980年に行われた健康調査と1973年から1977年に行われた保健調査の2つの研究をもとにしています。前者では6809人、後者では18981人が調査対象となっており、いずれもリウマチや関節炎のなかった人たちです。この人たちからの聞き取り調査で、一日に飲むコーヒーの量と調査期間中にリウマチ因子が陽性になる人の頻度、慢性関節リウマチを発症する人の頻度を調べています。前者の研究ではコーヒーをたくさん飲む人ほど、リウマチ因子が陽性となる率が高く、後者の研究ではコーヒーをたくさん飲む人ほど慢性関節リウマチの発症頻度が高い、というデータが示されています。コーヒーを一日4杯以上飲む人ではリウマチ因子陽性の慢性関節リウマチの発症が2.2倍高い、と述べています。つまり、コーヒーの飲用とリウマチ因子陽性慢性関節リウマチの発症との間に何らかの因果関係があることが推定される、というわけです。

これまで、喫煙、肥満、血清コレステロール高値、オリーブオイル摂取の低下、魚の摂取の低下、輸血歴などと慢性関節リウマチ発症との関連についての報告はありましたが、コーヒーについての報告ははじめてですが、その理由ははっきりしていません。この論文の著者らも、コーヒーに含まれるある種の成分が直接リウマチ発症に関与しているのか、コーヒーを飲むことと関係する生活習慣が関係するものかは不明と述べています。

このようなデータがあると、リウマチの患者さんはコーヒーは飲まない方がいいのか、と考えてしまいます。その点はまだ解決していません。発病している慢性関節リウマチの患者さんにとって、コーヒーが増悪因子となるか、という研究ではないからです。また、論文の著者らも述べているように、コーヒーといっても、フィルターでこしたコーヒー(ドリップ式)と沸騰させたコーヒー(サイフォンコーヒー)とでも異なる可能性があります。日本人と欧米人との違いも当然あるでしょう。ですから、この論文だけでリウマチの人にはコーヒーはよくない、と結論づけることはできません。しかし、リウマチの患者さんは非ステロイド抗炎症剤やステロイドなど胃潰瘍、胃炎の原因となるような薬を飲んでいることが多いので、コーヒーの胃への影響を考えると、一日何杯も飲まれるようでしたらできるだけ減らしておくのが無難とはいえるでしょう。

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