短時間の運動でも効果はあるのか

 生活習慣病の予防と治療には運動が大切で、ー日20分から30分の早歩きなどが推奨されています。しかし、会社勤めの方たちにとっては、毎日そのような時間を確保することはなかなか難しいようです。しかし、10分を3回だったら通勒途中の駅までの道や、昼休みや、仕事の移動の際などを速歩で歩いたりすることによって運動時間がとれます。しかし、そのような短時間の積み重ねの運動でも同様の効果があるかどうかはきちん検証されていませんでした。今回紹介する論文は、その点をある程度明らかにしてくれるものといえるかもしれません。Journal of Human Hypertension 2008年7月号(22(7): 475-482)に掲載された論文です。

対象となったのは前高血圧(120〜139/80〜89)の成人(血圧の平均:131.9/82.5)です。10分間の運動を、50分以上あけて3回行ないました。運動強度は最大酸素摂取量の50%ですから、いわゆるニコニコペース(少し汗ばむが、ー緒に歩いている人と話ができるくらい)の強度ということになります。

その結果、運動後には収縮期血圧が平均で4.0mmHg低下するという効果が認められました。拡張期血圧の低下は認められませんでしたが、収縮期血圧は1回目、2回目、3回目と回を重ねるごとに低下する傾向が認められました。

この結果は、論評の中でも述べられていますが、いくつかの点で有意義といえます。30分連続でなくても10分の積み重ねでも降圧効果が得られること、その結果は患者さんたちにとって、生活習慣改善のきっかけとなりうること、回を重ねるほど血圧は下がり、3〜5 mmHgも下がったという点などが挙げられます。

ただし、この論文で検証されたのは、短時間の運動でも積み重ねることによって、「やや高目の血圧を下げるのに効果があった」ということです。もっと血圧の高い場合にも効果があるかどうかは検証されていません。また、運動は、高脂血症、糖尿病、脂肪肝、骨粗鬆症など多くの病気の治療と予防に効果がありますが、これらに対しても同様の短時間の運動の積み重ね効果があるかどうかはまだわかっていません。

短時間の運動にも効果はあるわけですが、やはり、可能な限り、ある程度まとまった運動の時間をとれるよう、生活習慣を見直しましょう。

ホームへ