自動血圧計での血圧測定、袖はまくるべきか?

健康への関心が高まる中、様々な健康管理用具が一般的に利用できるようになってきました。デジタル体重計、体脂肪計、血圧計はかなり普及しています。特に、血圧計が普及した背景には、デジタルで結果の表示される自動血圧計が普及したことがあると思います。私たちが聴診器を使って血圧を測るときは、肘の動脈に聴診器をあて、動脈を流れる血流の音をとらえて血圧を測定しています。この音にもある程度の意味はあるのですが、血圧を測る上では、血圧計のマンシェットをしめていって、ゆっくり圧を下げていき、音が聴こえ始めたときの血圧計の値(収縮期血圧)と聴こえなくなったときの血圧計の値(拡張期血圧)がわかればよいので、自動血圧計では、高感度のマイクや血流のセンサーが内蔵されていて、収縮期血圧と拡張期血圧を測定しています。最近の機械はどれも正確で、上腕に巻く自動血圧計であればまず問題ないと考えてよいと思います。ただ問題は、正確に測るためには服を脱いで上腕を露出させて測ることが必要です。自宅で血圧をこまめに測るうえでは、毎回服を脱ぐのは面倒です。そこで、服の上から巻いたのでは正確には測れないだろうかという考えが浮かびます。

今回紹介する論文は、その点について検証したものです。カナダ医師会雑誌、The Canadian medical Association Journal 2008年2月26日号(178(5): 585- 589, 2008)に掲載された論文です。

研究の対象となったのは18歳から85歳のカナダ在住の376人の患者さんです。このうち41%の人は高血圧、11.7%の人は糖尿病と診断されています。患者さんたちには、自動血圧計で3分間あけて2回血圧を測ってもらいました。患者さんを2グループに分け、一方のグループは1回目も2回目も服を脱いで測り、もう一方のグループは1回目は服を脱いで測り、2回目は服を着て、袖の上から血圧計を巻いて測ってもらいました。1回目と2回目の測定値の違いが両グループの間で差があるかどうかを検証したものです。その結果、2回とも服を脱いだグループでは、収縮期血圧が4.1、拡張期血圧が0.1だけ異なっていました。2回目は袖の上から測ったグループでは、収縮期血圧が3.4、拡張期血圧が0.31異なっていました。したがって、服を脱いで測った場合と、袖の上から測った場合の差は、収縮期血圧が0.76、拡張期血圧が-0.31とほとんど差はないという結果でした。

したがって、自動血圧計で測る場合、服を着たまま、袖の上から測っても大丈夫ということがいえそうです。同様の研究は過去にもいくつか行われ、同様の結果が示されています。

ちょっと興味があったのは、1回目と2回目の血圧を比べると、2回目の方が下がる人が多いのではないかという点でしたが、この研究では平均すると2回目の方が3〜4mmHgほど下がるという結果が出ていました。

袖の上から測るといっても、あまり厚いものではだめで、この研究では、ワイシャツ、ブラウス、薄いセーターをさしています。厚いセーターやジャケットの上からでは正確には測れないでしょう。

私たちが聴診器を使って測る場合、服の上に聴診器をあてたのでは服の生地にこすれる音が邪魔になって正確には測れないのですが、それを可能にしている自動血圧計の技術というのはすばらしいと思います。ぜひ、健康管理の一つの道具として自動血圧計を気軽に使ってみてください。

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