BMI について再考が必要か

健診などでは肥満度が健康の目安となっています。肥満の人ほどいろいろな病気になりやすく、死亡率も高くなるとされているからです。肥満は、高血圧、糖尿病、高脂血症の要因となり、動脈硬化の原因となり、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こします。そればかりでなく、一部のがん、および、睡眠時無呼吸症などのリスクにもなるといわれています。

肥満度の指標として、BMI (Body Mass Index)が用いられます。体重(kg)/(身長(m)x身長(m))で計算します。(身長の単位はm、メートルですので注意しましょう)
このBMIによって、やせすぎ、正常、肥満に分類されます。正常は18.5〜25で、肥満に分類されるのはBMI 25以上です。

ところが、肥満をさらに細かく分け、BMI 25〜30の軽度肥満、BMI 30〜35の肥満、BMI 35以上の高度肥満に分けてみると、意外なことがわかってきました。Journal of American Medical Association誌 2013年1月2日号(JAMA, 2013; 309(1): 71- 82)に掲載された論文です。

論文の著者らは、過去に発表された2012年9月までの論文からデータをまとめました。BMIと死亡率の確認できたものからデータを集積したところ、288万人の追跡調査のデータが集まりました。そのうち27万人以上の方が亡くなっているのですが、BMIと死亡率を比較検討したところ、正常BMI(18.5〜25)の人たちに比べ、BMI 25〜30の軽度肥満の方たちのハザード比は0.94、BMI 30〜35の肥満の方たちは0.95、BMI 35以上の高度肥満の方たちは1.29でした。つまり、BMIが正常の人たちよりも軽度肥満の人たちの方が死亡率が低かったのです。言い換えると、BMIだけでみるとBMI 35までの軽度の肥満なら死亡率が増すということはない、ということになります。

BMI 35というのがどのくらいかというと、身長160cmの人の場合、体重、89.6kgとなります。かなりの肥満、といえます。なんだ、太ってるなんてそんなに気にすることないじゃないか、と思いますが、こういうデータで注意しないといけないのは、肥満があっても高血圧、高脂血症、糖尿病などがなければ、という条件が付いているということです。もし、軽度の肥満であっても、それらがあるようであれば、やはりやせている方がいいのです。それらがなければ、多少太っていてもよい、とはいえます。ただこの研究に採用されたデータの多くは欧米人のデータですので、日本人の場合は、肥満によって糖尿病などは発病しやすくなるといわれていますので、やはり、肥満には気をつけた方がいいと考えられます。ただ、どうしてもBMI 25以下にしなければいけないというわけではない、多少それより高くてもよい、ということはいえそうです。日本でも特定健診でBMIやメタボリックシンドロームが注目され、追跡調査の地盤ができたのはここ数年のことです。これから見直しがされるかもしれません。学問というのは日々進歩し、解釈も変わっていくものです。皆さんが健康に過ごしていくためにはどのように導いていくのがよいか、考えていきたいと思っています。

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