笑い声が表情をつくる

テレビのバライティ番組などを観ていると、くだらないことやってんなあ、と思ってもつい笑ってしまうことがあります。どうして面白くないと思っていても、つい笑ってしまうのでしょう。

どうやらそれには特別なメカニズムがあるようです。今回発表された論文では、笑い声に反応して顔面の筋肉が反射的に動きだすことが示されました。The Journal of Neuroscience2006年12月13日号(vol 26, p13067- 13075)に発表されたイギリスの研究者の論文です。

この論文の中で、著者らは機能的MRIという装置を使い、脳のどの部分が活動しているかを測りました。平均年齢32歳の20人の健常者を対象として行いました。機能的MRIで行うことをかいつまんで説明すると、聴覚によって活動する脳の領域と、自発的に顔の筋肉を動かす時に活動する脳の領域を明らかにし、画像的に引き算すると、聴覚刺激によって直接刺激される運動領域がわかるということのようです。そして、勝利の歓声、笑い声、恐怖の声、怒りの声などを聞かせ、脳の活動を測定したというのです。

すると、歓声や笑い声を聴いたときには脳の運動領域が反射的に刺激され、顔面の筋肉が収縮するということがわかりました。恐怖や怒りの声にはそのような反応は起こりませんでした。つまり、他人の笑い声や楽しい声を聴くと、思わず顔がほころんでしまうということがわかったということです。要するに、笑い声を聴くと、面白いかどうか判断する前に反射的に顔は笑っている、ということなのだそうです。

また、論文の著者は、好ましい感情に対して反射的に表情が現れるということが社会性を築く上で大事な役割をなしているのだろう、と述べています。

これで私の疑問もとけました。くだらないと思いながら、実は心の中では面白いと思っているのではないか、こんなくだらないものを面白いと感じているのか、と不安でしたが、そうではないとわかりほっとしました。笑う門には福来たる、といいますが、みんなが楽しい気分になるのは確かなようです。

それにしても脳の働きは奥が深いと思います。これからの科学の進歩が楽しみです。

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