運転中の携帯電話の使用と交通事故の関連

運転中の携帯電話の使用は、事故の原因となり危険であることは広く知られ、また、日本でも法律で罰せられるようになりました。危険である根拠として、多くの事故が現実に起きていることや、運転実験によるデータが根拠となっているようです。今回紹介する論文は、実際に事故を起こした人たちからの聞き取り調査によって、携帯電話の使用が事故のきっかけとなったと考えられるかどうかを検討したものです。

British Medical Journalの2005年8月20日号(BMJ 2005: 428)に掲載された、オーストラリアからの報告です。

2002年4月から2004年7月までの間に、入院を要する交通事故を起こした17歳以上の運転手で、携帯電話を所有もしくは使用していた456名を対象に行った調査です。

それによると、事故発生時刻から10分以内に携帯電話を使用していた場合の事故発生の危険度は4.1倍と推定されました。また、興味深いことは、いわゆるハンズフリーを使っていても危険度はあまり変わらなかったということです。つまり、携帯電話を手持ちで使っていたか、ハンズフリーで使っていたかで分けて検討した場合、手持ちの場合4.9倍、ハンズフリーの場合3.8倍だった、というのです。この数字は統計学的にはあまり差はなく、同じくらい危険だという解釈になるというのです。また、男女間での差や、年齢による差は認められなかったということです。

運転中の携帯電話の使用は、様々な実験により、反応時間、車線、スピード、車間距離の変わりやすさ、状況判断などに悪影響を及ぼすことが証明されています。また、それらの変化は注意力散漫によるもので、それはハンズフリーであっても同様であることがわかってきました。

それらは、主に実験によるデータでしたが、今回の論文では、実際に起きてしまった事故に関して、携帯電話の使用の危険性を裏付けるものとなりました。また、驚くべきことに、ハンズフリー装置の使用があまり役に立たないという結果でもありました。今回の研究ではハンズフリーをひとまとめにしていますが、論文の著者らも述べていますが、ハンズフリー装置にもいろいろなものがありますので、それによって事故の発生率の間に差があるかもしれない、という点は今後の調査のポイントとなると思われます。

たしかに、運転中に携帯電話で話をすると、意識がそちらにかなり奪われてしまい、運転について注意力が低下するということは、私自身も感じるところです。また、私が不思議に思うのは、同乗者と話をしていても運転に対する注意力は多少低下しますが、携帯電話のときほどではない、と感じる点です。携帯電話と、人との会話では、声の聞こえ方も違いますし、言葉以外の、雰囲気や身振りなども加わりますので、そのあたりに違いがあるのかもしれません。携帯電話を手持ちで使った場合や、イヤホンなどで片方の耳だけで声を聴く場合と、同乗者との会話のように両方の耳で声を聴く場合とでは、意識の使われ方が違うのかもしれません。

いずれにしても、運転をするときは、事故を起こさないよう十分気をつけて、運転に集中できる態勢にすることを心がけたいものです。また、バスの運転手さんに話しかけるようなことは、大変危険ということもわかります。

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