大腸がんの再発と食事の関係

大腸がんの発生と食事の関係は以前から議論があり、食物線維を多くとっている方が大腸がんになりにくいという説もありますし、一方でそれほど関連はないのではないかといった指摘もあります。また、食事中の赤肉(牛肉、豚肉)、アルコール、カルシウム、ビタミンD、ビタミンE、葉酸などが大腸がん発生に影響するという指摘もされています。近年、日本人の大腸がんが増えている要因にも、食事の欧米化が挙げられています。

今回紹介する論文は、進行大腸がんの化学療法後の再発や生存率に、化学療法後の食事がどう関係するかというものです。米国医師会雑誌2007年8月15日号(JAMA 2007; 298(7); 754- 764)に掲載されたアメリカでの研究結果です。

1999年から2001年にかけてステージⅢの大腸がんと診断され、摘出手術を受け、化学療法を受けた1006人を対象に追跡調査を行っています。平均5.3年間の追跡調査を行いました。ステージというのは、がんの進行度を表す尺度で、Ⅰ〜Ⅳまであり、Ⅲというのは、腫瘍自体も大きく、リンパ節転移などを伴う進行した状態をさします。化学療法後、6カ月間の患者さんたちの食事が調査されました。食事の内容を、欧米型の食事と倹約型の食事に分けました。欧米型というのは、赤肉、脂肪、精製した穀類、デザート類の多い食事。倹約型の食事は、果物、野菜、鶏肉、魚の多い食事です。5.3年間の追跡期間中に、残念ながら再発してしまった方が324例、再発のために亡くなられた方223例、他の原因で亡くなられた方が28例いらっしゃったわけですが、食事のタイプと再発や死亡との関連を検討しました。

その結果、欧米型の食事をとっている人の方が、再発が早く、また、生存率も低かったということが見いだされました。性別、年齢、もともとの状態にかかわりなく2〜3倍の違いが認められました。

その要因については、欧米型の食事をとっていると、血中のインスリン、Cぺプタイド、レプチンなどが増加することが知られています。一方、インスリンや、インスリン様成長因子は腫瘍の成長と関連があることが知られています。したがって、欧米型の食事を、大腸がんの術後にとっていると、残存したがん細胞の増殖を促されるのではないかと著者らは述べています。

がんが見つかり、つらい化学療法を受け、食欲が出てくれば、肉を食べて力をつけようと思いたくなりますが、はやりバランスのよい食事はどんな状況でも大切なのかも知れません。

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