「たらふくになるまで食べること」と「早食い」のリスク

肥満や太りすぎはがん、心血管系疾患、糖尿病などの危険因子となることはよく知られています。肥満は世界中で、また日本でも近年大きな問題となっています。バランスのよい食事や運動などが推奨されているわけですが、「食べ方」にも注意が必要なようです。「早食い」が摂取カロリーの増加につながることはいくつかの報告で示されています。今回紹介する論文は、日本人での研究で、早食いや、たらふくになるまで食べるということがどのくらい肥満のリスクになるかを検証したものです。

British Medical Journal 20081021 (2008; 337: a2002)に掲載されたものです。30〜69歳の日本人男女3,287名を対象に、2003年から2006年にかけて調査は行われました。BMI(25以上は肥満と定義)と食べ方に関する質問票による調査を検討しました。

50.9%の男性と58.4%の女性がたらふくになるまで食べると、また、45.6%の男性と36.3%の女性が自分は早食いだと答えました。そして、たらふくになるまでは食べないでかつ、早食いでもない人たちと比較して、肥満になるリスクについて検討しました。その結果、たらふくになるまで食べる人の肥満になるリスクのオッズ比は、男性で2.00、女性で1.92、早食いでは、男性で1.84、女性で2.09でした。さらに、たらふくになるまで食べてかつ、早食いという場合、男性で3.13、女性で3.21でした。たらふくになるまで食べたり、早食いの人は摂取カロリーが多いのだろうと思いますが、この調査では、摂取カロリーには有意な差はなく、「食べ方」も肥満の独立したリスクとなると結論づけています。また、「食べ方」を変えたらどうなるのかといった介入試験や、早食いで肥満になりやすくなるメカニズムの解明も必要だと述べられています。

日本発のユニークな研究で、論評の中でも高く評価されていました。その論評の中で興味深かったのは、「食べ方」については、子供のうちからの教育が大切だということが強調されていたことでした。親はどうしても子供に、もっと食べろ食べろと言ってしまいがちで、それが子供のうちからの食べ過ぎの要因になっているというデータもあるそうです。

昔から言われている、「よく噛んで、腹八分目」には、科学的な根拠の裏付けもされたといえそうです。

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