体重増加と食行動の関係

体重増加には、食べ物のカロリーが多すぎることや、脂肪の摂取量が多いことや、運動不足など様々な要素が関係しています。今回紹介する論文は、ヒトの”食行動”と体重増加に関する研究です(American Jounal of Clinical Nutrition 2002; 75: 476- 483)。

ヒトの食行動には以下にあげるような3つの行動様式があり、それぞれの強さによってその人の食行動の特徴が決まると考えられています。その食行動の3パターンは次のようなものです。

人の食行動は、この3要素それぞれの強さが関連して決まるという考えに基づいています。この論文では、この3つの傾向をそれぞれ、低、中、高の3段階に分けて検討しています。

対象となったのは、アメリカ、ニューイングランドに住む55歳から65歳の健康な女性です。この人たちについて、現在の身長、体重、BMI、そしてこれまでの体重の変化について調査し、さらに、一人一人の食行動を数量化しています。食行動については、下表のような質問から分析しています。その結果、脱抑制、節制の強さと体重増加、BMIの関連が認められています。

BMI、体重の増加は、節制が低いほど大きく、また、脱抑制が低いほど大きい傾向がありました。これは当然の結果といえるでしょう。たとえば、50台前半の体重と60台前半の体重増加についてみてみると、脱抑制が”高”で節制が”低”の場合、体重増加の平均は8kg、脱抑制が”低”で節制が”低”の場合、体重増加の平均は2.3kg、脱抑制が”低”で節制が”高”の場合、体重増加の平均は1.7kg、などとなりました。

興味深いことは、脱抑制が大きくても、節制が大きければ体重の増加は少なくすんでいることです。つまり、脱抑制が”高”でも節制が”高”の場合、体重増加の平均は3kgですんでいるのです。

肥満を予防するためには脱抑制を低く押さえ、節制を高く維持することが重要、ということになると思います。当たり前のように思いますが、この論文はそのことを科学的に証明しています。食行動と体重変化の関係についての検討は始まったばかりで、考え方を変えると本当に体重増加が減るかどうかのデータはまだありませんが、食に関する考え方を変えると体重に影響する可能性は十分あるでしょう。

目の前に食べ物があっても、これを食べたら肥るからこの位にしておいてあとは残しておこうとか、空腹でもないのにあるから食べてしまうというような食べ方はやめておこう、と考え方をしっかり持つことが大切だと思います。主婦の方の場合、”捨てるのはもったいないから食べてしまおう”ということがよくあるようですが、翌日にとっておくとか他の方法を考えた方がよいでしょう。

”食べる前に、また、食べながら、ちょっと考える”、が大切かもしれません。

<参考>

食行動分析のための質問(抜粋)

  1. ダイエットをしたことがあるか
  2. 過去5年間の体重の変化
  3. どのくらい食べるか(食べたい分より少なく〜食べたいだけ食べる、4段階)
  4. ダイエットで体重を減らした期間
  5. 食べたいときに食べたいだけ食べたら体重はどうなると思うか
  6. 増えると思う場合、どのくらい増えると思うか
  7. 体重を減らすため、あるいは維持するために自分自身をダイエット者だと思うか
  8. 過去10年間の自分の食の制約をどう評価するか (10年前に比べもっと制約している、やや制約している、変わらない、10年前の方がやや制約している、もっと制約している)
  9. 各年代での体重とそのころの食事のとり方(食べたいときに食べたいものを食べた、食べたい分よりずっと少なく食べた、食べたい分より多少少なく食べた、食べたい分よりちょっと少なく食べた)

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