肥満、メタボ解消、血糖コントロールのための運動において、運動量と運動強度のどちらが重要か

肥満、メタボリックシンドロームの解消、糖尿病の治療などには運動がよいとされています。厚生労働省の「メタボリックシンドロームの予防改善編に「運動習慣を徹底しようというページがあります。この中では週に23エクササイズを行い、そのうち4エクササイズは活発な運動を、と述べられています。多くのデータと、長続きするためという視点からそのような運動が推奨されるようになったものと思われます。

今回紹介する論文は、運動量、運動強度の異なる運動の効果について検討したものです(Ann Intern Med 2015, 162(5): 325- 334)。

アメリカでの研究で,対象となったのは330人の腹囲100cm以上のいわゆるメタボ体型の成人です。対象者は全員、糖尿病にはなっていません。運動量、運動強度から3パターンの運動を用意し、対象者を4つのグループに分けました。すなわち、グループ1:コントロールグループ(運動については一般的な指導に留めたもの)グループ2:低運動量低運動強度、グループ3:高運動量低運動強度、グループ4:高運動量高運動強度です。そして、指定された運動を週5回行い、24週後の変化を検討しました。ここでいう「運動量」は消費カロリーで計算され、低運動量はといのは、一回当たりの運動量が女性180kcal、男性300kcalというものです。高運動量は、それぞれ360 kcal600 kcalです。「運動強度」については、低運動強度というのは最大酸素摂取量の50%、高運動強度は75%としたということです。最大酸素摂取量というのは特別な装置がないと測定できませんので、運動強度は一般的には心拍数で測られます。心拍数の目安は年齢によって異なりますがhttp://www.karada-navi.com/diet-medthod/diet-medthod-aerobics/3333/などに掲載されています。

その結果、コントロールグループに比べていずれのグループでも腹囲は明らかに小さくなっていました。そして、興味深いことは、糖尿病予備軍の目安となる、食後2時間の血糖値が、高運動量高運動強度のグループだけで明らかに低下したという結果でした。

つまり、メタボ体型の人が運動をすれば、たとえ低運動量低強度だとしても、腹囲は減ります。しかし、血糖値の改善は高運動量高運動強度のみで得られたということです。メタボは糖尿病予備軍と考えられていますが、高強度の運動を行うことにより,糖尿病への進展が予防できるかもしれないという期待はできると思います。

前述した厚生労働省の運動では、強い運動強度でもせいぜい最大酸素摂取量の70%に相当する程度ですので、糖尿病にまだなっていないメタボの人たちに対しては,心配機能が許せばもう少しきつめの運動を行ってもよいのかもしれません。最大酸素摂取量の75%の運動強度というと、ちょっときついですよ。前述の心拍数を参考に考えて頂けばいいと思いますが、運動が終わったときにハアハア息が上がるくらいの強度になると思います。あくまでも、そういうデータがあるということであって、高強度の運動をしなければならないということではありません。運動量と運動強度には人それぞれの適量がありますから、まずは主治医に確認を。

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