禁煙時の運動の効能

喫煙は、発がんや動脈硬化の促進などの問題があり、現在タバコを吸っている方は、ぜひとも禁煙に取り組んでほしいと思います。しかし、実際には、長年の喫煙習慣のもたらした影響は大きく、禁煙後の喫煙衝動(タバコが吸いたくてたまらなくなる気持ち)、禁断症状(タバコを吸わないでいるためにイライラする、手がふるえるなど)などに悩まされ、なかなかうまくいかないことが多いのも現実です。一方、運動をすることによって、それらの喫煙衝動、禁断症状などが和らげられるという報告がされています。今回紹介する論文は、そのような報告をまとめて検討したものです。Addiction(中毒という意味)という医学雑誌の2007年3月14日号(102, 534~ 543, 2007)に発表されました。

禁煙後の運動の効果について過去に発表された14の論文についてまとめたものです。12の論文は、一定期間の運動が禁煙後の喫煙衝動や禁断症状を和らげるという内容でした。喫煙衝動や禁断症状は運動中に急速に低下し、運動後も50分までは低下したまま続いていました。4つの論文では、運動すると、次のタバコを吸うまでの時間が2〜4倍に伸びることが報告されていました。喫煙衝動や禁断症状を低下させる運動量としては、多い場合で、予備心拍数の60〜85%で30〜40分、少ない場合で予備心拍数の24%で15分、あるいはアイソメトリック運動(等尺運動、関節は動かさずに、筋肉の収縮だけさせる運動)を5分、などが挙げられていました。最も効果のあった運動は、早足で1マイル(1.6km)歩くことによって喫煙衝動が50分間は抑えられていた、というものでした。

なぜ、運動によってそのような効果が得られるかについて、いくつかの可能性を挙げています。

喫煙という一種の薬物中毒と、運動のもたらす精神への影響についてはまだまだ未解決の部分が多く、メカニズムとしては十分解明されてはいませんが、禁煙したら、運動をすると、禁煙が長続きし、禁煙が成功する可能性も高くなるということは言えそうです。

禁煙に挑戦しようとしている人、禁煙中で苦しんでいる人たちの参考になれば幸いです。

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