糖尿病における食物線維大量摂取の効果

食物線維は便秘、高コレステロール血症の治療によいことが知られていますが、最近、糖尿病の治療にもよい可能性が示唆される論文が発表されました。(New England Journal of Medicine 2000年、Vol 342、1392〜1398ページ)


これによると糖尿病(2型糖尿病)患者さん13人に、食物線維24グラム(アメリカ糖尿病協会が推奨する一日の食物線維摂取量)の食事を6週間と、食物線維50グラムの食事を6週間摂取してもらいました。いずれも食品でとり、人工的な線維はとっていません。

結果は、食物線維50グラムをとった患者さんでは、24グラムの患者さんたちに比べ、一日平均の食前血糖は13mg/dl下がり、一日尿糖は1.3グラム減り、インスリン分泌量も減り(インスリン抵抗性が下がったことを意味します)ました。また、従来言われてきたようにコレステロール、中性脂肪もそれぞれ6.7%、10.2%減少しています。これらの結果は、食物線維を多くとることは糖尿病の治療にもよい効果をもたらす可能性を示唆しています。


1994年に改訂された“日本人の栄養所要量”では、食物線維の成人の一日あたりの目標摂取量は、20〜25グラムとされています。それと比べると50グラムの食物線維をとるのはかなり大変じゃないかと思います。また、欧米人の糖尿病はインスリン分泌が多いタイプが多く、日本人とは異なる点もあり、このデータをそっくり日本人に当てはめるのは早計かもしれませんが、内臓肥満型で(このタイプの場合はインスリン抵抗性が高いことが多いので)コレステロール、中性脂肪も高いような患者さんには勧めてもいいのかもしれません。食物線維は海藻、芋、穀物に多く含まれていますが、芋や穀物では同時に糖分も多く含まれているので摂取にあたっては注意が必要です。

ところで、一日50グラムの食物線維をとる食事とはどんなものなのでしょう。この論文の中にサンプルメニューが紹介されています。ここでわかることは、フルーツはジュースではなく生を食べる、胚芽パン、フレーク類を多用するなどがポイントのようです。また、ズッキーニ、パパイヤなど線維の多い果物をとるのもいいようです。他に、キウイーフルーツ、バナナ、イチゴなども食物線維の多い果物です。この論文はアメリカ人の食事を基本としていますので、日本人の場合は、海草類、大豆製品で線維をとるのがいいかもしれませんね。

食物線維一日24グラム 食物線維一日50グラム
食品 グラム 食品 グラム
朝食
オレンジジュース 220 オレンジのスライス 300
グリッツ(とうもろこし) 50 オートミール 50
卵の代用品(詳細不明) 40 スクランブルエッグ 37
オリーブオイル 10 オリーブオイル 10
コーヒー 2 コーヒー 2
昼食
ハム(脂肪5%) 50 ハム(脂肪5%) 52
マヨネーズ 6 マヨネーズ 12
レタス 15 レタス 10
トマト 30 トマト 15
低塩パン 60 胚芽パン 60
コーン(缶詰) 140 コーン(缶詰) 40
ビネガー 5 グリーンピース(缶詰) 110
乾燥タマネギ 2 乾燥タマネギ 2
オリーブオイル 10 オリーブオイル 10
グリーンペッパー 10 グリーンペッパー 10
セロリ 15 セロリ 15
フルーツカクテル(缶詰) 105 パパイヤ 250
ティー 2 ティー 2
レーズンクッキー 20
夕食
鳥の胸肉 90 鳥の胸肉 90
ブランフレーク 10 ブランフレーク 10
低塩パン 20 オートブラン 5
パルメザンチーズ 1 パルメザンチーズ 1
1 代用卵 10
トマト(缶詰) 120 トマト(缶詰) 105
低脂肪チーズ 11 低脂肪チーズ 19
スパゲッティ 45 スパゲッティ 19
グリーンビーンズ 75 ズッキーニ 195
オィーブオイル 17 オリーブオイル 19
胚芽パン 21 胚芽パン 30
クラッカー 21 300
ティー 2 ティー 2
夜食
モッツアレラチーズ 30 フルーツカクテル(缶詰) 200
低塩パン 30 チェリー(缶詰) 100
パイナップルジュース 190 グラノラ 15

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