海外の新型インフルエンザワクチンの効果と副作用について

平成21年12月から、我が国でも新型インフルエンザ(H1N1)予防接種が進んでいます。今のところ使用されているワクチンは国産ワクチンで、従来の季節性インフルエンザワクチンと製造工程は同じものです。効果については、接種を受けた人の血液中のH1N1インフルエンザウイルスに対する抗体がどのくらい上昇したかで判断するしかありません。できれば、接種を受けた人と受けなかった人の間での感染率の差で評価すべきですが、今回初めて流行し、今回初めて作られたワクチンの効果を評価するのですから、抗体価の上昇で評価するのがベストの方法です。国産ワクチンでは、1回の接種で抗体価が十分上昇し、免疫力が低下している患者さん以外は1回接種でよいということになりました。

では、今後我が国にも流通するであろう輸入ワクチンの効果はどうなのでしょうか。2つの論文が発表されましたのでそちらからの抜粋です。

まずはじめは、現在わが国で行われているのと同じ、アジュバント非添加のワクチンについてです。New England Journal of Medicine誌(2009; 361:2405- 2413)に発表された論文です。

オーストラリアで行われた研究で、18〜64歳の健康成人を対象に行われています。ワクチンは、15μgと30μgの2種類が使われ、21日間隔で2回接種されました。抗体価は、検査で抗体価が40倍以上上昇していた場合を効果が得られたと判断しています。1回目の接種から21日後の抗体価が上昇していた人は、15μg接種の96.7%に、30μg接種の人の95%にみられ、2回目の接種から21日後にはそれぞれ、96.7%、95.0%となっていました。抗体価の上昇は若い人ほど多い傾向も認められました。つまり、この結果からは、1回の接種で十分効果が得られる、ということがいえそうです。心配な副作用ですが、注射局所の違和感(46.3%)、とう痛(21.7%)、発赤(9.2%)、内出血(5.0%)、全身症状としては発熱(3.8%)、頭痛(31.3%)、倦怠感(17.5%)、筋肉痛(17.1%)、悪寒(6.7%)、吐き気(7.1%)、嘔吐(0.8%)となっています。いずれも軽度で、数日で軽快しています。

また、海外のワクチンは免疫原性を高める目的でアジュバントという物質が添加されているものがあり、それには、ワクチン内の抗原量が少なくてもすむという利点があります。アジュバントの添加されたワクチンと非添加ワクチンの違いについては同じくNew England Joiurnal of Medicine誌(2009; 361: 2424-2435)に掲載されました。

アメリカでの研究で、18〜50歳の成人を対象に、アジュバント添加ワクチンと非添加ワクチンの比較を行っています。比較する群が多くて複雑ですが、アジュバント添加ワクチンは、7.5μgを0日目に両腕に1回ずつ接種、0日目と7日目に接種、0日目と14日目に接種、7.5μgを0日目と21日目に接種、3.75μgを0日目と21日目に接種する群に分けました。アジュバント非添加ワクチンは、7.5μgを0日目と21日目に接種、15μgを0日目と21日目に接種する群とに分けました。

効果は、42日目の時点で40倍以上の抗体価の上昇がみられたのはアジュバント添加ワクチンでは92〜100%、非添加ワクチンでは78〜83%でした。気になる副作用は、局所のとう痛、筋肉痛などが、アジュバント添加ワクチンでは70%。非添加ワクチンでは42%でした。筋肉痛、悪寒、倦怠感、頭痛などの副作用もみられていますが、いずれも両者の間に大きな差はありませんでした。いずれの副作用も重篤なものはありませんでした。

このように、アジュバント添加ワクチンでは、少ない抗原量で効果が十分得られる、ということはいえるようです。つまり、いっていの抗原量で多くのワクチンが製造できるということになりますが、副作用も多いということこともいえそうです。「ワクチンの副作用」というと、ワクチンを打たなかった場合(当然副作用はない)と打った場合(ある程度の確率で副作用が起こる)とを比較しがちですが、インフルエンザにかかった場合の苦痛や社会的影響(学校や会社を長期間休まなければいけないこと、家族に病気を抱えた人やお年寄りがいる場合の心配など)とワクチンの副作用を比較して考え、接種を受けるべきか決めるべきでしょう。しかし、カナダで製造されたアジュバント添加型ワクチンの一部の製品で重篤な副作用も報告されており、今後の推移を見守り、慎重に使用を考えていきたいと思います。

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