生活習慣の変化のもたらした血清脂質の変化?

脂質異常症の主要な原因は、脂肪分の多い食事と運動不足が指摘されており、その治療のためには食事療法、運動療法が勧められ、効果も認められています。ちょっと違った見方をして、食事、運動の問題をみんなが意識し始めるとどんな変化が現れるか、という疑問に答えてくれるような研究結果が発表されました。

Archives of Internal Medicine 2009年2月9日号 (169(3): 279- 286)に発表された論文です。アメリカで行われた研究で、フラミンガム研究という、生活習慣病に関する最も古くから行われている住民対象の疫学調査があります。1948年代始まったこのフラミンガム研究の成果により、脂質異常と動脈硬化の関連をはじめ、多くのことが明らかとなりました。欧米型の食事と動脈硬化の関係も明らかとなりました。その後、アメリカでは食事を見直す動きが始まりました。フラミンガム研究で対象となっている住民は、初代の対象者たちの子あるいは孫の代になっています。つまり、生活習慣を変えている考えられる世代となっています。今回の研究はその世代の人たちが対象となっています。1991年から2001年の10年間に1666人を対象に調査が行われました。対象者には心疾患、脂質異常症に対する治療、ホルモン補充療法などは行われていません。期間中3回の検査を行い比較しています。

その結果、最初の検査と比較して、肥満度を表すBMIは、男性で27.8から28.5に、女性で27.0から27.6に(平均的に肥満傾向になった)と増えていたにもかかわらず、善玉コレステロールであるHDLコレステロールは男性で44.4から46.6に、女性で56.9から60.1に増え、中性脂肪は男性で144.5から134.1に、女性で122.3から112.3に減少していたというのです。つまり、10年間で体重はやや増えたもんのの、血清脂質の状態はよくなっているという結果でした。

この結果について、論文の著者らは、アメリ力国民が、全体として食生活を見直して、脂肪分、特に飽和脂肪酸を少なくした食事をするようになり、運動をするように生活習慣を変えてきた結果ではないかと推察しています。

この結果からもうーつ言えることは、食事や運動などの生活習慣を変えて、体重が減るという結果が現れていなくても、決してがっかりすることはなく、血清脂質にはきっとよい変化が現れており、動脈硬化を防ぐのによい効果があるはずと考えてもよいのではないかと思います。

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