野菜と果物を多くとっているほど心血管系の死亡率は低い

野菜や果物は、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患に対してよい効果がもたらされることが指摘されています。野菜や果物に含まれるカリウムやマグネシウムには血圧を下げる効果があり、また、それらには抗酸化作用のある栄養素も含まれており、動脈硬化を予防する効果があるといわれています。今回紹介する論文は、ヨーロッパで行われた大規模な疫学調査の結果示されたものです。European Heart Journal 2011118日号に掲載されたものです。

ヨーロッパ8カ国で行われた疫学調査をまとめたもので、1992年から2000年にかけてエントリーされた519,978人の男女が対象となっています。このうち、脳卒中や心筋梗塞などの心血管系疾患をすでに起こしている人や、喫煙歴などがはっきりしない人などは除外され、また、40歳以下、85歳以上の人も除外されています。それにより313,074名の男女が対象となりました。食事に関する調査を行い、その後の経過を追跡調査しました。いも類は野菜には含めず、また、果物は生の果物だけを対象とし、ナッツ類、種子類、ミックスフルーツ(缶詰のフルーツなど)は果物に含めなかったそうです。野菜と果物の摂取量は、何皿( portion)食べたかで表現しています。結果として、平均8.4年の調査期間で1,636名の方が心筋梗塞や脳卒中で亡くなっています。そして、野菜、果物の摂取量と、それらの疾患の死亡率を比較すると、次のようだったそうです。野菜、果物の一日の摂取量を、3皿以下、34皿、57皿、8皿以上に分け、死亡率を比較すると、3皿以下の人に比べ、34皿、57皿、8皿以上の人の死亡率は0.90, 0.79, 0.78と多く食べているほど低かったというのです。つまり、野菜、果物を一日8皿以上食べる人は、3皿以下の人より、心血管系疾患による死亡が22%少なくなったというのです.

22%という予防効果は、コレステロールや血圧を下げる薬の効果に匹敵するくらいになりますので、かなりの効果といえます。ただ、果物をたくさん食べると血糖値が上がってしまうのではないかと心配になります。この研究で対象になった人たちの中には糖尿病の方も含まれていますが3%前後と非常に少なく、糖尿病でも果物をたくさん食べても大丈夫かどうかはこの研究からは判断することはできませんので、その点は注意が必要でしょう。血糖値がコントロールされている範囲であれば、野菜、果物を多く摂るのはきっとよい効果があると考えてよいでしょう。

新鮮な野菜や果物には、まだ十分解明されていない栄養素も含まれている可能性があります。日本では、バランスのよい食事のために、毎日30品目の食材を摂るようにすることが推奨されています。この30品目の中でも特に、野菜、果物を多く摂るようにすると考えるのがよいかもしれません。当院のホームページ内の「野菜を食べましょう」も参考にしてください。

ホームへ