イチョウ葉に認知症予防効果なし

健康に年をとりたいというのは誰でもが持つ願いだろうと思います。そのためには、身体的のみならず認知機能の低下を来たさないことも重要な要素となります。脳の動脈硬化が認知機能低下と深い関わりがありますが、それだけではなくまだ十分解明されていない要素があるようです。そのため、様々な食品やハーブが認知機能低下の予防効果があるのではないかといわれています。

イチョウ葉には古くから記憶力を保つ効果があると信じられてきたそうです。そして、認知機能に対しての効果が検討されてきました。これまで、すでに認知症になっている人たちに投与し、わずかながら効果を認めたという報告があります。しかし、2007年にコクランレビューという多くの研究を集積した研究によると認知症のある人に対する効果は確かとはいえない、というものでした。一方で、アルツハイマー病に対して少人数の短期間の研究で効果が認められたという報告もあり、結果は一定したものではありませんでした。最近では87歳以上の高齢者に対して認知機能低下の予防効果を検討した研究がありますが、結果は効果はなかったというものでした。

今回紹介する論文は、米国医師会雑誌JAMAの 2008年11月19日号(vol 300, No 19, 2253- 2262, 2008)に掲載されたものです。

75歳以上の高齢者3,069人を対象に行った、アメリカの多施設での研究です。参加者のうち2,587人は認知機能は正常、482人は軽度の認知機能低下があり、2000年から2008年にかけて平均6.1年間フォローを続けました。参加者を2グループにわけ、一方にはイチョウ葉ハーブ120mgを一日2回投与し、他方にはプラセボを投与しました。その結果、観察期間終了時に523人に認知機能の低下が認められました。246人はイチョウ葉ハーブ投与群、277人はプラセボ投与群の人でした。以上の結果を統計的に解析するとイチョウ葉ハーブを投与しても認知機能低下の予防効果はないという結果となりました。この研究はこれまでの研究と比べ、期間も長く、調査対象となった人数も多く、信頼性の高いデータといえるでしょう。論文の著者らは認知機能低下の目的でイチョウ葉を勧めることはできない、と結論づけています。

認知機能低下は家族や介護者も困惑し、介護の負担も大きくなりますが、何といっても本人が一番苦しんでいます。今のところはっきりしていることは、高血圧、脂質異常、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足などによって動脈硬化が早く進むことが認知機能の低下と深くかかわっているということです。副作用のなさそうなハーブに期待を寄せる気持ちは理解できますが、まずは、上述した疾患や生活習慣を一つ一つ改善していくことから始めましょう。

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