Googleは診断の助けになる?!

ちょっと気になる症状があると、インターネットで調べてみる、ということは今では常識かもしれません。では、どう検索をかけるのがいいでしょう。また、検索エンジンはそのような目的にどのくらい答えてくれるでしょう。

英文の一流誌であるBritish Medical Journal 2006年12月2日号 (Vol 333, p1143- 1145, 2006)に掲載された論文です。

論文の著者らは、New England Journal of Medicineというこれまた一流の医学雑誌に掲載された症例検討の症例を用いました。これは、診断の難しい疾患について、深く掘り下げて検討し、診断に到達していく連載記事で、伝統のある記事でもあります。そこから26例をピックアップし、検索エンジンのGoogleを用いて診断に到達できるかを検討してのです。検索の実際は、各症例の特徴的な症状や所見を3〜5選び、それを検索の語句として入力しただけです。感染性心内膜炎、消化管出血、クッシング症候群、ネコ引っかき病、肥大型心筋症、脳炎、GVHDなど診断の難しい症例ばかりです。

彼らの検索によれば、26例中15例(58%)はGoogleの検索で正しい診断に到達したというのです。そして、このような検索エンジンは患者さんにとってはもちろん、医師にとっても難しい症例の診断の助けとなると述べています。

検索で重要なのは、適切なキーワードを選んで入力できるかにかかっているということも言えるでしょう。この点は、論文の著者らも、検索者の基礎知識によるところがあると指摘しています。これは私たち医師が患者さんの診断をするときにも同じことがいえます。適切に重要な症状を聞き出せるかどうかが、検索エンジンを使う以前に大切なことです。そして、ご自分の症状から検索を試みる場合も、適切な用語を使い、先入観を排除して用語を選択して検索をかけることが重要でしょう。

私もGoogleの日本語版で試してみました。全身性エリテマトーデスの症状として、「関節痛 発熱 皮疹 リンパ節腫脹」の4つを入力して検索してみましたが、出てきた結果はウイルス感染症に関するホームページがほとんどでした。しかし、検索語句を「関節痛 発熱 紅斑 リンパ節腫脹」と変えると全身性エリテマトーデスの情報が多く表示されました。このように、適切な用語で検索することは重要です。

このように、時代は大きく変わり、進歩してきました。このような新しいテクノロジーを適切に取り入れながら、患者さんとのコミュニケーションも大切にして、患者さんにとって負担の少ない、効率のよい診断と治療につなげて行きたいと考えています。

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