緑茶と胃ガン

緑茶は日本人の生活に深い関わりのあるものです。緑茶には胃ガンを抑える働きがあるともいわれていますが実際はどうなのでしょうか。その点を東北大学のグループがアメリカの医学雑誌に発表しました(New England Journal ofMedicine 2001; 344: 632- 636)。

1984年から宮城県の26,311人の住民を追跡調査したものです。8年間の調査後、1992年の時点で419人に胃ガンが発見されました。そして、住民の緑茶の量との関係を検討しています。緑茶を全く飲まない、たまに飲む、一日1〜2杯、3〜4杯、5杯以上に分けて比較しました。緑茶以外の生活習慣、年齢、胃潰瘍の既往歴、タバコ、アルコール摂取量などは同じです。結果としては、胃ガンの発生した人たちと、そうでない人たちの間には緑茶を飲む量について差は認められませんでした。

緑茶の抽出物ないしはポリフェノールには、胃ガンを含む、ガンの発生を抑えるのではないかということがいわれています。動物実験やガン細胞を使った実験ではその可能性が指摘されています。

また、実際、胃ガンになった人は、緑茶を飲む量が少なかったというデータも多く報告されています。しかし、これらはいずれもケースコントロールスタディといって、ガンになった人とならなかった人について、緑茶を飲んでいた量との間に関係がなかったかどうかを、本人の記憶を手がかりに調べたものでした。この方法ですと時間をかけずにある程度の因果関係がつかめる利点がありますが、差が小さかった場合、説得力に欠ける欠点があります。

今回の論文では、住民の緑茶を飲む量を先に調べておいて、8年間という長い期間、しかも2万人以上という大規模の追跡調査をするという検討を行ったという点が評価に値するものだろうと思います。 結果は緑茶には胃ガンの発生を抑える効果はなさそうだというものでした。

しかし、緑茶には殺菌効果や利尿作用がありますし、リラクゼーション作用もあります。

疲れたときの一杯のお茶は気分を鎮め、また、コミュニケーションにも役立ちます。そして日本人にとっては大切な文化でもあります。胃ガンを抑えるほどの効果はなくともよいことはたくさんありますね。

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