痔のある方へ 痔のセルフケアについて

肛門の痛み、排便痔の出血、排便後の肛門部の痛みと粘膜の脱出(脱肛)など経験した方は意外に多いのではないでしょうか。まずは病院で診てもらい、適切な診断と治療を受けて下さい。

ここでは、最も頻度の多い、脱肛のセルフケアについて解説しましょう。

脱肛というのは、排便時に直腸の粘膜が出てきてしまう状態を言います。多くは内痔核に伴って生じますが、出産後の女性や、老化に伴う肛門括約筋のゆるみに伴っても起こります。

脱肛のケアで大切なのは、(1) 出たら引っ込める、(2) 内痔核を大きくしないために便秘を避ける、(3) 肛門部の血行をよくする、といったことなどです。内痔核は左の図に示すように、肛門から直腸にかけての静脈の血流が悪くなり、静脈の拡張が原因で起こります。内痔核を大きくしないことは脱肛のケアの上で大切なことです。そのためには静脈の流れをよくすることが大切なのです。

(1) 軽度の脱肛は、排便時のみ出て、あとは引っ込みますが、さらに進行すると歩行時など排便と関係なく出てくることがあります。出たままにしておくとさらに血行が悪くなりますので、まずは出たら引っ込める、が基本です。そのためにはトイレのあとウォシュレットを使ったり、シャワーをあてて、指で戻すようにして下さい。多少抵抗があるようでしたら石鹸を使ってゆっくり戻して下さい。そのあと軟膏を塗っておくといいでしょう。軟膏は肛門の中まで塗った方がよいので、指をゆっくり、少しつっこんで塗って下さい。肛門の中に注入できる使い切りタイプの軟膏であれば使いやすいでしょう。

(2) 便秘を避けるのがよい理由は3つあります。第一は便が硬いと肛門を傷つける。第二は排便時いきむと痔が大きくなる。第三は便秘の状態では骨盤内圧が高まり、静脈圧が上がり痔を大きくする原因となる、などです。便秘を避けるために無理して便を出そうとして、トイレに長い時間座っているのは逆効果です。もし、朝出なくても、昼でもよいですから、出そうになったら我慢しないようにし、トイレで座っている時間を最短にするよう工夫しましょう。外出中もできれば排便後はウォシュレットを使って、@で述べたケアをして下さい。また、尿を我慢して膀胱が張った状態を続けるのも静脈圧が上がり、内痔核を大きくする要因となりますので、尿も長い時間我慢するのはよくないでしょう。

(3) 内痔核は肛門から直腸にかけての静脈の流れが悪くなるために起こります。血行をよくするために、肛門部を暖めることが必要です。一日3回、お湯をはった洗面器にお尻をつける、温水のシャワーをあてるなどを行うのがよいでしょう。

痔に使う軟膏にもいくつかのタイプがあります。血行をよくする成分、腫れを引かせる成分、血栓を溶かす成分などが様々な割合で含まれています。痔の状態によって使い分けがありますので、病院でよく診てもらい、痔の状態にあった軟膏を使いましょう。

痔には手術療法もありますが、メスは入れずにすめばそれに越したことはありません。ここで述べたようなセルフケアを続けて、痔とうまくつきあっていきましょう。

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