C型肝炎について

厚生労働省の呼びかけ

B型・C型肝炎の感染ルートとして、血液製剤を介した感染ルートが考えられています。そのため、厚生労働省では、血液製剤の使用を受けたことのある方にはB型・C型肝炎検査を受けるよう呼びかけています。公表医療機関で平成13年7月31日まで無料で検査を行うそうです(厚生労働省の正式発表と公表医療機関はこちらをご覧下さい)。当院は公表医療機関ではありませんが、広く呼びかける意味でこのホームページでも扱うことに致しました。その後、保健所でも無料で検査も行うこととなったそうです。

ウイルス性の慢性肝炎の原因として多いのがC型肝炎です。感染経路としてはまだ十分解明されていませんが、通常の接触では感染することはなく、血液を介した感染がほとんどと考えられています。

C型肝炎ウイルスの存在がわかってきたのは1989年(昭和64年)頃のことです。余談ですが、私が医学部の学生の頃にはC型肝炎という言葉はまだなく、非A非B肝炎と呼ばれていました。こんな話を今の学生に話すとびっくりされます。今の学生にとっては常識だからです。つまり、昭和64年以前にはC型肝炎ウイルスの存在もわかっていなかったし、C型肝炎ウイルスをチェックする方法もなかったのです。ですからその当時の血液製剤には、当時の検査方法では安全だろうと思われていたけれども、実はC型肝炎ウイルスが混入していた可能性があるわけです。また、それらによる感染率もまだ明らかにはなっていないため、実態を調査するため今回の検査の呼びかけとなったわけです。

そこで、今回はC型肝炎について解説いたします。

C型肝炎ウイルス抗体陽性の場合

では、その検査で陽性だった場合どうなるでしょうか。また、たまたま行った検査でC型肝炎の抗体が陽性といわれた場合どう対処するべきなのでしょうか。その点を簡単に解説します。

まず、行った検査は抗体の検査です。抗体が陽性といった場合、“ウイルスが体の中に入ったことがある”ことを示します。つまり、今もウイルスが体の中に残っていることもあるし、今はウイルスは消えてしまっているという可能性もあるわけです。

次に確認するのは、そのウイルスが“今も体の中にいるのかどうか”、を調べることになります。そこでC型肝炎ウイルスの同定検査を行います。これも血液検査です。これで陰性であれば、ウイルスは体には残っていないということになりますのでひと安心です。しかし、検査でひっかからないくらいごく少量のウイルスが残っている可能性は否定できませんので、定期的な検査は受けましょう。

もし、ウイルスの同定検査も陽性だった場合は、残念ながらウイルスは体の中に残っていることになります。

C型肝炎と診断されたら

C型肝炎のウイルスが残っていると、慢性肝炎、肝硬変を経て、肝臓癌まで併発する場合があります。

C型肝炎ウイルスに持続感染している40歳以上の100人が治療を受けずに放置した場合、65〜70人が慢性肝炎、20〜30年後に10〜16人が肝硬変になり、このうち5〜10人が肝硬変や肝臓癌で死亡するというデータがあります。

ですから、ウイルスが陽性とわかったら、ここからは大きく分けて2つの検査を行うことになります。一つは、ウイルスについての検査、もう一つは肝臓の状態を調べる検査、となります。

ウイルスについてはウイルスの型と量を調べます。これによって、抗ウイルス薬であるインターフェロンが効くかどうか予測することができます。

肝臓の状態や合併症を調べる検査としては、血液検査、超音波、CT、内視鏡などに加え、肝臓の組織検査が行われます。

現在、C型肝炎ウイルスを駆除できる治療法としてはインターフェロンしかありません。しかし、インターフェロンには様々な副作用もありますので、そのほかの身体的状態を確認した上で治療法を選択することになります。

インターフェロン療法

さて、そのインターフェロンですが、C型肝炎ウイルスを完全に駆除できる率、すなわち著効率は、インターフェロン療法を行った患者さん全体の約30%といわれています。しかし、近年、ウイルスの型によっては効きやすいタイプも明らかとなってきており、その場合には70%程度の著効率が期待できます。さらに、新しいタイプのインターフェロンや新薬も開発されており、著効率は上がってきているようです。

肝庇護薬

それでも100%ではないので、インターフェロンが効かないケースもあります。また、様々な理由でインターフェロンが使えない場合もあります。これらの場合には、進行を抑える目的で肝庇護薬が投与されることになります。注射、内服、漢方などがあり、これらを単独で使ったり、併用したりします。肝庇護薬では、ウイルス自体は残りますが、肝機能を保ち、進行を抑える効果が期待できます。

日常生活での注意

慢性C型肝炎と診断されたら、肝臓に負担をかけないように、過労をさけ、アルコールは控えるなどの注意が必要です。血液を介して感染する可能性がありますので、献血はできません。また、日常生活では、ひげ剃り、歯ブラシの共用などは避けた方がよいですが、そのほかの日常的な接触、握手、抱擁、キス、入浴などで感染することはなく、食器、タオルなどの共用も問題ありません。性行為で感染するという明らかなデータはありませんがコンドームの使用が勧められます。

定期的な通院が必要

慢性疾患として、定期的な受診と検査が必要となります。その目的は、肝機能が悪化し、つまり慢性肝炎が安定期から活動期に移行しないか、肝硬変に変化していないか、肝癌の合併はないか、合併症として食道静脈瘤はないかなどを確認し、必要があれば適切な治療を早めに行うためです。

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