ちょっと高めの血圧も要注意

高血圧は、脳卒中や心筋梗塞、腎機能障害などの原因となることが知られており、特に、日本人は高血圧の方が多く、その予防と治療が重要視されています。高血圧の定義は、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上と定義されています。それ以下なら正常とされるわけですが、多くの研究から、正常血圧でもやや高めの場合は高血圧を発症する率が高いことなどがわかってきました。そこで、日本では、正常血圧をさらに2グループに分け、収縮気血圧130未満でかつ拡張期血圧85未満を正常血圧、収縮期血圧が130〜139、または拡張期血圧が85〜89を正常高値血圧と定義しています。住民基本健診でもこの分類が使われていますので目にされたことはあると思います。

今回紹介する論文は、正常高値高血圧の人の予後を追跡し、正常血圧、高血圧の人と比較して検討したものです。British Medical Journal 9月1日号(2007;335:432)に掲載されたものです。

米国で、45歳以上の健康な女性39322人を対象に、1993年から2004年3月まで行った研究です。参加者の血圧を測定し、4グループに分類しました。すなわち、収縮期血圧/拡張期血圧がそれぞれ、(1) 120未満/75未満、(2) 120-129/ 75-84、(3) 130-139/85-89 (これはいわゆる正常高値血圧)、(4) 140以上/90以上(高血圧)に分類しました。平均10.2年間の追跡調査を行い、脳血管障害による死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症、高血圧への進展の有無について調査しました。

全体で982例の方に何らかの心血管系疾患が認められました。発症率を千人年という単位で表しています。これは、そのグループの人が1000人いたとして、それらの人が1年間に心血管系疾患を発症する人が何人いる計算になるかという単位です。心血管系疾患の発症は、グループ(1)、(2)の人では1.6/千人年、グループ(3)の正常高血圧の人では2.9、(4)の高血圧の人では4.3でした。高血圧の人ほど、発症率は高いのですが、正常高値血圧でも高くなることがわかります。また、はじめは血圧が正常でも、調査開始から48カ月の間に高血圧になっている人は30.1%いました。そして、この48カ月間に高血圧になった人の心血管系疾患の発症の危険度は、はじめから高血圧だった人と同じだということです。

はじめは正常血圧だった人も、たった4年間に30%の人が高血圧になっているということは驚きですが、実は、同様のデータは他の研究でも示されています。さらに、今回の論文では、10年間フォローすると、正常高値血圧の人の64%、正常血圧の人の34%は高血圧となっていたと述べられています。そして、論文の著者らは、高血圧はできるだけ早く見つけて早く対処することが必要だと述べています。

このような数値を見ると、高血圧になるのは宿命のように感じられますが、多くの研究で、高血圧の発症に対する予防効果のあるものが示されています。運動、減塩食、オリーブオイルやナッツをふんだんに使った地中海食などに高血圧予防効果が示されています。

また、正常高値血圧の人に、降圧剤による薬物治療を行うことについては、まだ十分なデータがなく、結論は出ていません。

運動と食事は、健康なうちから気をつけることが大切といえそうです。

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