子供の夜間の咳にハチミツがいい?

空気が乾燥するこの季節は風邪をひきやすくなります。お子さんが風邪をひくと夜間に咳込んでいる姿は見ていてとても苦しそうでかわいそうになります。熱があったり、痰も出るようであれば早めに医療機関を受診するべきですが、自宅でできる応急処置はないものでしょうか。市販の風邪薬がまず思い浮かぶことでしょう。しかし、台所にある意外なものに咳を鎮める効果があるようです。

Archives of Pediatrics and Adolescence Medicine 2007年12月号(2007; 161(12): 1140- 1146)に発表された論文です。ただし、この研究が、アメリカの農務省に設置された、国立蜂蜜委員会(Natioinal Honey Board)からもらった研究費によって行われていますので、その点では結果をみる際に慎重な目で見たほうがよいかもしれませんが、紹介したいと思います。

2005年9月から2006年3月まで行われたアメリカの研究で、普通のハチミツと、ハチミツ味の市販の風邪薬(デキストロメトルファン、以下DM)と何もしなかった場合の3通りの効果について比較したものです。対象となったのは、2歳から18歳の105名で、上気道感染(いわゆる風邪のことです)にかかって7日以内の人たちを対象としました。就寝30分前に上記の3通りのいずれかを受け、咳の頻度、咳の重症度、咳によるわずらわしさ、本人の睡眠、親の睡眠、全体的評価の6項目について検討を行いました。ハチミツとDMの投与量は2〜5歳ではティースプーン1/2杯、6〜11歳ではティースプーン1杯、12〜18歳ではティースプーン2杯でした。

何もしなかった場合と比べ、ハチミツを飲んだ場合の方が、咳の頻度や重症度など上記6項目すべてで有意に勝っていたそうです。DMの場合は何もしなかった場合と比べてそれほど明らかな改善は見られなかったそうです。

ハチミツには、抗酸化物質が含まれており、局所の刺激緩和作用などもあるとされています。特に、上気道感染による咳に効いたことについては、「甘さ」というものが重要で、それにより、唾液の分泌や気道粘液の分泌が増えることや内因性のオピオイド(鎮静作用のある物質)の分泌が増えることなどが関係しているだろうとこの論文では述べられています。DMは市販の咳止めに含まれている成分の一つですが、その効果については疑問視する声もあるものの今でも使われ続けています。また、神経系に対する副作用もあり、逆にそれを期待して遊びで使う若者もいるといわれている薬です。オハイオ州の高校3年生を調査した結果では、5%の生徒がDMを遊び目的で服用してみたことがあるという報告もあるそうです。その点、ハチミツは安全です。根本治療ではないものの、症状の緩和に使ってみるのもよい考えでしょう。

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