2001〜2002年、今シーズンのインフルエンザ流行予想

毎年この時期になると話題になることですが、インフルエンザは大流行するのでしょうか。今シーズン(2001〜2002年)のインフルエンザの流行予想が出ていますが、興味深いことに予想は二通りあります。一つは大流行、もう一つは大きな流行の可能性は少ないというものです。

前者については、インフルエンザの流行には周期性があり、一昨年は中流行、昨年は小流行であったので今年は大流行する可能性が高い、ウイルス型はA香港型とB型が協調して流行する可能性が高くこのパターンは大流行につながる、今年の天気は小雨傾向で、これも大流行と相関する、97の大流行から数年経っており、インフルエンザに対する日本人全体の免疫は低下している、などがその根拠となっています。

一方、大流行はないとする根拠は、A型インフルエンザの流行予想株が昨年と大きく変化しておらず、抗体保有率が高くなっていると考えられ、B型については流行の可能性はあるもののA型を上回る可能性は少ない、というものです(Medical Tribune 2001年10月18日)。抗体を持っていればかかりにくく、抗体を持っている人が多ければ大流行にはなりにくいからです。

しかし、もうひとつ大切なことがあります。インフルエンザウイルスには変異という現象があり、突然ウイルスの抗原性が変化することがあるのです。そうなるとワクチンも効かないことになりますから、ほとんどの人は抗体を持っていませんし、多くの人がインフルエンザにかかることになるのです。それが今年起こるかどうかは全く予想はできません。過去、ウイルスの変異、すなわち新型インフルエンザウイルスの出現は1918年、1957年、1968年、1977年に起きています。

実は、この冬、仙台で検出されたインフルエンザウイルスが、ワクチンに使われた型と異なる可能性があるといわれています(メディファクス12月12日)。つまりA型インフルエンザの変異が起きているかも知れないというのです。それが事実とすると、そのウイルスが蔓延してしまうと今回のインフルエンザワクチンは効かないということになり、大流行につながる可能性もあります。

インフルエンザウイルスの変異が起こるは、このウイルスが人にも動物にも感染するという性質が深く関わっています。北海道大学獣医学部教授の喜田宏先生の説では、鴨の腸内でウイルスが増殖し、アヒルを通じて豚に伝播し、豚の呼吸器上皮に感染する。豚の呼吸器上皮ではヒトのインフルエンザウイルスも感染するため、ここでヒト由来のウイルスとカモ由来のウイルスとの間で遺伝子の交換が行われて変異株が作られるという可能性を指摘しています。そして、その考えに基づき、新型ウイルスの調査を行う国際計画がスタートしているそうです。今後は流行株の予想だけでなく、変異の予想も可能となることが期待され、それに応じたワクチンの供給によりインフルエンザの克服も可能となる日は遠くないことでしょう。

それは将来の話ですが、インフルエンザに対する医療はここ数年でずいぶん進歩しています。インフルエンザの迅速診断キットが普及しはじめたのはここ2-3年ですし、抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル、ザナミビルが保険適応となったのは昨シーズンからです。ですから、仮にウイルスの変異が起きても流行の様相はこれまでとは異なり、大流行は防げるかも知れません。

しかし、現状で大切なことは、体調を整え、栄養をとり、こまめにうがいをし、可能な限り予防接種を受けておく。そして、もしインフルエンザと思われる症状があればすぐに医療機関を受診する。といったことでしょう。

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