インフルエンザの場合の、早退、出席停止の扱いについて

インフルエンザについて

インフルエンザは毎年冬になると流行するウイルスによる感染症です。カゼやインフルエンザのウイルスは、咳やくしゃみをしたときに飛ぶしぶき(飛沫)に多く含まれます。そして、インフルエンザがカゼと異なる点の一つは、飛沫が空気中でさらに細かく分かれた飛沫核という粒子にも多くのウイルスが含まれ、感染力が強いという点が挙げられます。また、症状もカゼとは異なり、発熱やだるさや食欲低下などの全身症状も激しく、肺炎やまれには脳症といった合併症を併発するという点もカゼとの大きな違いです。

感染、発病、潜伏期間

ウイルスが体の中に入ってしまった状態である「感染」から、発熱、咳、鼻水といった症状が出始める「発病」までの時間を潜伏期間といい、約3日間(1〜5日間)といわれています。この潜伏期間でもすでにだるさは感じられ、特に、お子さんの場合、何となく機嫌が悪いといった症状が現れることがあります。インフルエンザの経過の例を図に示します。

<図:インフルエンザの一例の経過(体温の変動などは様々なパターンがあり、これはあくまでも一例です)>

 インフルエンザの予防

予防のためにはマスク、うがい、手洗いが大切なのはいうまでもありません。そして、睡眠や栄養をしっかりとることは免疫力を高めます。ウイルスが体に入ってしまっても、免疫の力によってウイルスが体内で増殖しなければ発病はしません。さらに免疫には特異的な免疫といって、インフルエンザウイルスそのものに対する免疫があり、それは体の中でつくられる抗体によります。抗体がウイルスにくっつき、ウイルスの増殖を防いでくれます。ただ、インフルエンザウイルスには、後述するように多くの型があり、抗体はそれぞれの型に限って有効です。そして、抗体は、感染を経験するか予防接種を受けることによって作られます。一度インフルエンザにかかると、同じ型のインフルエンザウイルスに対しては、抗体を持ちます。ただ、年によって流行するウイルスは型が異なるため、以前かかったからといって二度かからない、とは限りません。また、インフルエンザの予防接種により、インフルエンザウイルスに対する免疫がつきます。ただし、予防接種による発病予防効果は100%ではないという点は注意が必要です。0歳〜15歳の場合、1回接種で68%、2回接種で85%、16歳〜64歳の場合、1回接種で55%、2回接種で82%とされています。予防接種は、1回目と2回目の間は1〜4週間空け、接種後2週間で効果が現れ、効果は約5か月間は続くといわれていますので、10月から11月に接種するのがよいでしょう。また、毎年受けた方がよいでしょう。

インフルエンザの場合の出席停止期間

さて、表題の出席停止の期間ですが、発病した場合、まず本人の回復を確認することが大切です。熱が下がっても、図示したように二峰性の発熱の可能性もあります。また、解熱後もウイルスを排出し、他人にうつす恐れがあるとされています。それは、抗ウイルス薬で治療して早く治った場合でも同じとされています。ですから、解熱しても、状態確認と感染予防のため、さらに2日間は自宅療養を行うことが勧められているのです。

学校で発熱した場合の対応

インフルエンザの場合、学校にいる間に急に熱が上がり、初期症状が現れることもあります。その場合、本人の重症化を予防する意味で、本人は早退させるべきでしょう。また、発熱が始まった時点でもすでに少量のウイルスの排出は始まっていますから、他の生徒たちへの感染を防ぐためにも早退させるのがよいでしょう。結果的にインフルエンザではなかったという場合もあり得るとは思いますが、インフルエンザが広まれば、小さいお子さんやお年寄りのいらっしゃる家庭にも広まり、不幸な事態を招く恐れもありますから、最善を尽くしておいた方がよいでしょう。また、予防接種を受けている生徒だとしても、その効果は100%ではないという点を考慮し、同様に扱うべきでしょう。

インフルエンザの検査が陰性でも要注意

インフルエンザの診断には、迅速診断キットを用いて、のどや鼻の奥にいるウイルスを検出して行います。しかし、ある程度ウイルスが増えていないと検査は陽性となりませんので、たとえば、学校で熱が出て、すぐに病院に行って検査を受けた場合、検査は陰性で、翌日に再検査をすると陽性という場合があります。インフルエンザなどの感染症の場合、体温は夜間に高くなり、朝にはいったん下がりますので、すぐに受けた検査が陰性で、翌朝の体温がそれほど高くなくても一日は様子を見るべきでしょう。

インフルエンザの際の解熱剤について

インフルエンザにかかったときの解熱剤については、多少の誤解があるかもしれません。基本的に、高熱でつらい場合は使って構いません。ただし、インフルエンザの場合には使えない解熱剤があります。アスピリン、ジクロフェナク(商品名:ボルタレンなど)、メフェナム酸(商品名:ポンタールなど)は、15歳未満のインフルエンザの患者さんには使ってはいけないことになっています。しかし、よく使われる解熱剤の、アセトアミノフェン(商品名:アルピニ、アンヒバ、カロナールなど)は大丈夫です。市販の風邪薬にはアスピリンを含んだものもありますので、特にお子さんの場合には使用は控えた方がよいでしょう

今年の流行予想は?

インフルエンザウイルスには大きく分けて、A型とB型があります。A型はさらに、ウイルス表面にある2種類の蛋白HとNの組み合わせで多くの型が存在します。例年流行するインフルエンザはA型H3N2(A香港型)という型とA型H1N1(Aソ連型)という型と、そしてB型の3種類です。しかし、インフルエンザウイルスは、同じ型でもごくわずかの変異を起こしていることがあり、その場合は過去にかかったという免疫は効果が弱くなります。今シーズン(2007-2008)もその3種類が流行すると予想されています。インフルエンザワクチンにはこの3種類のウイルスに対するワクチンが含まれています

<参考文献>

1.      日本医師会のホームページ(http://www.med.or.jp/)内のインフルエンザQ&A(http://www.med.or.jp/influenza/inqa17.html

2.      かぜとインフルエンザー日常生活の注意、予防、治療―」順天堂大学医学部編、学生社

3.      インフルエンザワクチン 接種の実際とコツ、加地正郎編、南山堂

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