インフルエンザワクチンは毎年うった方がよい?

毎年、10月から12月はインフルエンザワクチンの接種時期とされ、今年も多くの方がワクチンの接種にいらしています。その中で、時々聞かれる質問が、”毎年受けなくてはいけないのでしょうか”、ということです。その答えは、イエスなのですが、理由は、

  1. 毎年流行するインフルエンザウイルスは型が異なり、それにあわせたワクチンをうって予防する必要がある
  2. ワクチン接種を受けてから2週間ほどで抗体ができるが、持続期間は5ヶ月ほどである

といったことが挙げられます。では実際、毎年受けた場合と、1回しか受けなかった場合、と比べて効果はどれほど違うのでしょうか。その疑問に答えてくれる論文が発表されました(JAMA 11月3日号, 2004年Vol 292,2089- 2095)。

オランダの住民調査の結果によるもので、1996年から2002年までの間の、65歳以上の住民を対象に行いました。対象となった人は26071人になり、7年間に3485人が亡くなっています。調査は、死亡率とインフルエンザワクチンの接種状況との関連について行いました。死亡原因は様々で、インフルエンザと直接関係ない場合もありますが、すべて含めて調べています。

その結果、予防接種を全く受けなかった人たちに比べ、7年間に1回受けた人では、死亡のリスク低下率は10%(ワクチン接種を受けずに亡くなった人達が、もし受けていたら10%の人は亡くならずにすんだであろう、という意味)でしたが、毎年受けている場合のリスク低下率は24%となりました。特に、インフルエンザが流行した年では、毎年受けている場合のリスク低下率は28%になりました。このようなリスク低下効果は慢性疾患を有する人や70歳以上の高齢者では顕著でした。

また、興味深いことは、一度中断していても途中から再開していると、再び毎年受けている場合に近い効果が認められることと、2年以上あけてしまうとリスクは上昇するということです。

予防接種のリスク低下率としては低いように思われるかもしれませんが、インフルエンザに関連した死亡例ばかりでなくあらゆる原因の死亡を対象としたリスク低下率ですので、インフルエンザ罹患率や入院するようなケース、ということで調査したら、おそらく大きな差がでたと思います。一般に、インフルエンザワクチンによるインフルエンザ罹患のリスク減少率は、65歳未満の健常者では70〜90%といわれています(米国疾病管理センター1997年発表データ)。重症化を防ぐ効果も明らかで。特に高齢者では肺炎の併発が重要ですが、ワクチンにより、高齢者の肺炎併発による入院を抑制するリスク低下率は50%、肺炎などの合併症による死亡を抑えるリスク低下率は80%といわれています(米国疾病管理センター1997年発表データ)といわれています。後者については厚生省のデータもあり、ほぼ同様の82%とされています。

インフルエンザにはかかるととてもつらいものです。学校や仕事も休まなければなりません。予防のためにはやはり毎年のワクチン接種をおすすめします。

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