ヨウ素剤について

福島第一原発の事故に伴い、身近なところで放射性物質が検出されるようになりました。政府は「直ちに健康に影響はない」と繰り返していますが、もし、直ちに影響が出るかもしれない事態となった場合はどうなるのでしょうか。放射線の発生源から一定以上の距離に退避することはもちろんですが、被曝が疑われる地域の住民にはヨウ素剤が配布されます。これは、すべての放射線から身を守る訳ではなく、あくまでも、放射性ヨウ素による甲状腺への影響を減らすために使用されるものです。これについて解説します。

甲状腺という臓器が首の前のところにあります。ここでは甲状腺ホルモンが作られます。甲状腺ホルモンは体の代謝に作用する重要なホルモンです。この甲状腺ホルモンの材料となるものの一つがヨウ素なのです。このヨウ素は、甲状腺の中のヨウ素プールというところに蓄えられていると考えられています。(図1)

もし、放射性ヨウ素が大量に体内に入ると,甲状腺のヨウ素プールにも放射性ヨウ素が入り、甲状腺に放射性ヨウ素が蓄積するということになります。放射性ヨウ素の半減期は数日と,短いのですが、甲状腺がんの発生につながることが懸念されるます(図2)

放射性ヨウ素の半減期は数日ですので、甲状腺がんの発生が増えると懸念されるのは若い人に限られており、40歳未満の人たちにはヨウ素剤が配布されます。これを被曝した直後に飲めば、ヨウ素プールには要素が満たされ、放射性ヨウ素は甲状腺に入らなくなり、甲状腺に蓄積される心配がなくなる、というわけです。(図3)

万が一の場合、大事なことは、ヨウ素剤を早期に服用すること、となります。被曝前にヨウ素プールがヨウ素で満たされていることが理想的です。実際には配布されたらすぐに飲む,ということになるのでしょう。前述したように、ヨウ素剤投与の対象となるのは40歳未満の方です。
ただ、日本人は普段から海草類の摂取量が多く、ヨウ素の摂取は多いとされています。不必要なヨウ素剤の服用はヨウ素過剰になる恐れもあります。また、うがい薬に含まれるヨウ素はヨウ素化合物であって、甲状腺のヨウ素プールに取り込まれるようなヨウ素ではなく、また、消毒剤としてのアルコールなどの成分も摂取してしまうことになりますので、うがい薬を飲んでもヨウ素剤の代わりにすることは決してしないでください。

以下のリンクが詳しく書かれていますので、参考にしてください。

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