膠原病と目について

今回、膠原病友の会の皆様にお話しをさせて頂くこととなりました。テーマは、「膠原病と目について」です。私自身は内科医ですが、眼は全身の状態を映す鏡でもあり、内科医にとっても眼の所見はとても大切です。皆様の療養のお役に立てれば幸いです。

まず、膠原病と眼の話に入る前に、膠原病の特徴をおさらいしたいと思います。

膠原病の特徴

眼の所見が重要なわけ

このような理由で、膠原病の患者さんでは、眼に所見があるかどうかを確認し、所見があれば早急に対処することが大切です。

膠原病領域でみられる眼病変

上強膜炎 ぶどう膜炎 角結膜炎 網膜病変 網膜血管閉塞
関節リウマチ
全身性エリテマトーデス
±
シェーグレン症候群
++
血管炎症候群
±
±
±
側頭動脈炎
高安病
++
ベーチェット病
++
強直性脊椎炎
++

眼の構造

眼はボールのような球形をしています。外から見えるのは眼の正面の一部分だけです。いわゆる黒目は、角膜といわれる部分です。眼球は大きく分けて3層の膜と、内部をうめる硝子体からなっています。3層の膜は、外から強膜、脈絡膜、網膜となっています。網膜は、光を感知する視細胞が張り巡らされていて、ここで光を感知し、画像として感知します。眼に入ってきた光は、角膜を通り水晶体、硝子体を通り、網膜に到達します。これらは光を通しやすいように透明な構造となっています。ですから、角膜や網膜に異常が生じると見え方に異常が生じます。また、強膜は角膜とつながっていますし、脈絡膜は虹彩、毛様体など光の入り口近くの構造とつながっており、これらの障害はやはり視覚障害の原因となります。また、脈絡膜は網膜の裏にある膜ですから、脈絡膜の炎症は、網膜に影響し、視覚障害の原因となることもあります。

こちらのリンクの図をご参照下さい。

膠原病で起こりうる眼の病気

これらが、膠原病で比較的多く見られる眼の病気です。特に乾性角結膜炎は頻度が高いと思います。

乾性角結膜炎

乾性角結膜炎の特徴

これらの症状は、涙が足りないために起こります。まず、涙について考えてみましょう。

涙の通り道

涙について

角膜の構造

シェ-グレン症候群では

診断

こららの検査により、涙が少ないかどうか、角膜に傷ができていないかなどを調べます。

ドライアイの一般的治療

治療

点眼薬  (ジェネリック薬を除く)

人工涙液 粘性剤を含む点眼薬
防腐剤添加
  • マイティア
  • マイティアCL
  • ティアーズナチュラル(ヒドロキシメチルセルロース)
  • コンドロン(コンドロイチン硫酸)
  • ヒアレイン(ヒアルロン酸ナトリウム)
防腐剤無添加
  • ソフトサンティア
  • マイティアドライミニ
  • ヒアレインミニ(ヒアルロン酸ナトリウム)

強膜炎、上強膜炎

強膜は眼球の最外層を被う膜ですが、そこに起きる炎症を強膜炎といいます。特に、その表面に起きる炎症を上強膜炎といいます。

上強膜炎の頻度

強膜炎の頻度

強膜炎の症状

関節リウマチにおける強膜炎の意義

強膜炎の治療

ぶどう膜炎

ぶどう膜炎を併発する膠原病

ぶどう膜炎の症状

ぶどう膜炎の治療

網膜病変

膠原病における網膜病変には2通りあります

全身性エリテマトーデスの網膜病変

血管炎症候群、側頭動脈炎

網膜病変に対する治療

薬剤による眼の病気〜ステロイドによる影響〜

目薬について

目にやさしい生活

<まとめ>

目は大切な臓器

<参考文献>


<質疑応答>

Q1.健康な人の眼圧と病気の人の眼圧の違いと治療(半年ごとに検査しており、3月29日の検査では右11、左13、ヒアレイン使用)、また、高血圧の諸注意など教えて下さい。 (39歳、男性、SLE、病歴23年)

Q2.4,5年前より耳鳴りと軽いめまいが続いており、現在、検査の結果は異常ないとのことですが、シェーグレン症候群との因果関係はありますか。
(75歳、女性、シェーグレン症候群、病歴28年)

Q3.昨年9月に両眼の白内障の手術をし、術後0.6が0.3に視力が落ちました。今年に入ってまぶたが下がり、視界が下半分見える感じで不自由な毎日です。SLEとの関係、また、良い治療法はありますか。
(66歳、女性、SLE)

Q4.ステロイド剤とサプリメントの相性を教えて下さい。(「葉酸」と「リウマチ薬」では、効き目が悪いという話しを聞いたことがありますが)

   (54歳、女性)

Q5.採血など検査の結果は良いのですが、筋肉痛、胃の痛み、頭痛、微熱、振るえ(手)がひどい。殆どの症状が疼痛やストレス性なので、抜け出す方法が難しい。なにか良い方法はありますか。
(27歳、女性、多発性筋炎、病歴7年)

Q6.最近、朝の起床時に指の関節や足の関節の動きが悪いためやっと歩ける状態です。でも30分ぐらい経過すると直ります。先生に話しをしたら「あー、君はリウマチ系だからな」と言われましたが、特別なアドバイスはありませんでした。将来、寝たきりにならない為のアドバイスをお願いします。

   (64歳、男性,SLE、病歴11年)

Q7.発症して間もない為、日常生活(食事、運動、仕事など)で気をつけること、SLEについての知識を教えて下さい。現在ステロイド25mg服用中、足に静脈炎があります。治るのでしょうか。(32歳、女性、SLE)

Q8.ネオメルクカプセル50mgを4錠服用しています。肺のほうが安定していてもいつまでも服用しなければならないのでしょうか。(副作用かと思いますが、1ヶ月ほど前にめまいをおこしました) 
(59歳、女性、強皮症・多発性筋炎、病歴13年)

Q9.10年程前より、唇と舌の周りがヒリヒリしています。単純ヘルペスと言われ、マズレニンGでうがいをすると症状が軽くなりますが、止めるともとに戻ります。他に治す方法はないのでしょうか。

   また、白内障といわれましたが、手術は困難でしょうか。

   (64歳、女性、シェーグレン症候群、病歴13年)

Q10.15年前頃より、まぶたを閉じたときに稲妻のような光がキラキラと目に映り、テレビの文字が欠けているように見えますが、強皮症の影響なのでしょうか。
(72歳、男性、強皮症、病歴13年)

Q11.35歳のときにSLEを発病し、プレドニン1日おきに5mg服用し、白血球は27年間2500台前後で推移していましたが、今年の5月に急に1200~1700台に落ち込み、主治医より「血液の病気ではないか」と言われています。5/20に軽い脳梗塞で入院しましたので、「今のところもう少し様子を見ましょう」ということなり心配です。

   (62歳、女性、SLE、病歴27年)

12.ワーファリン服用の際にクロレラ・納豆以外に気をつける食べ物と、飲酒量について、また、肺線維症・肺高血圧症に関しての最新情報(治療薬など)を知りたいです。(40歳、女性、SLE、病歴19年)

13. 体重を落とすようにいわれて朝散歩をしています。起きてすぐに飲む骨粗鬆症の薬を飲んでいますがよいでしょうか

14. サルコドーシスでぶどう膜炎があるため、テノン嚢注射を時々受けています。免疫抑制剤の内服投与などはしなくてよいのでしょうか

  • A:免疫抑制剤の内服は、基本的には全身症状があるような場合に使われます。免疫抑制剤も、副作用はありますので使わずにすめばそれに越したことはありませんから、眼の局所だけの場合は、免疫抑制剤は使わず、局所への注射の方がよいと思います。

15. 高血圧の薬を飲んでいて、薬剤師さんからグレープフルーツは食べないように言われていますが、少しならいいですか。

  • A:高血圧の薬でグレープフルーツと相性が悪いのはカルシウム拮抗薬といわれる種類の降圧剤です。グレープフルーツを食べると、カルシウム拮抗薬の代謝、分解に時間がかかるようになり、血中濃度が高くなり、結果的には効果が強く出ることになります。その程度には差があり、血中濃度が1.2倍から多いもので3倍程度まで上昇するといわれています。ですからそのような薬を飲んでいる人は、グレープフルーツは食べない方がよいということになります。どうしても食べたければ、血圧の薬を替えられないか、先生によく相談してみてください。

ホームへ