膠原病と目について
今回、膠原病友の会の皆様にお話しをさせて頂くこととなりました。テーマは、「膠原病と目について」です。私自身は内科医ですが、眼は全身の状態を映す鏡でもあり、内科医にとっても眼の所見はとても大切です。皆様の療養のお役に立てれば幸いです。
まず、膠原病と眼の話に入る前に、膠原病の特徴をおさらいしたいと思います。
膠原病の特徴
- 膠原病はさまざまな臓器に炎症が起こりうる疾患である
- 関節、皮膚、筋肉、肺、腎臓、肝臓、眼などに炎症が起こることがあります。
- すべての臓器に必ず炎症が起こるわけではありません。
- 初期のうちは症状のないものもあります。
- 眼にも炎症、血管病変が起こりうる
眼の所見が重要なわけ
- 眼は大切な臓器
- 眼の所見が、全身の病像を反映していることもある
このような理由で、膠原病の患者さんでは、眼に所見があるかどうかを確認し、所見があれば早急に対処することが大切です。
膠原病領域でみられる眼病変
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上強膜炎 |
ぶどう膜炎 |
角結膜炎 |
網膜病変 |
網膜血管閉塞 |
関節リウマチ |
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全身性エリテマトーデス |
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シェーグレン症候群 |
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血管炎症候群 |
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±
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±
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側頭動脈炎 |
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高安病 |
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ベーチェット病 |
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強直性脊椎炎 |
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眼の構造
眼はボールのような球形をしています。外から見えるのは眼の正面の一部分だけです。いわゆる黒目は、角膜といわれる部分です。眼球は大きく分けて3層の膜と、内部をうめる硝子体からなっています。3層の膜は、外から強膜、脈絡膜、網膜となっています。網膜は、光を感知する視細胞が張り巡らされていて、ここで光を感知し、画像として感知します。眼に入ってきた光は、角膜を通り水晶体、硝子体を通り、網膜に到達します。これらは光を通しやすいように透明な構造となっています。ですから、角膜や網膜に異常が生じると見え方に異常が生じます。また、強膜は角膜とつながっていますし、脈絡膜は虹彩、毛様体など光の入り口近くの構造とつながっており、これらの障害はやはり視覚障害の原因となります。また、脈絡膜は網膜の裏にある膜ですから、脈絡膜の炎症は、網膜に影響し、視覚障害の原因となることもあります。
こちらのリンクの図をご参照下さい。
膠原病で起こりうる眼の病気
- 乾性角結膜炎
- 強膜炎、上強膜炎
- ぶどう膜炎
- 網膜病変
- 薬による影響
これらが、膠原病で比較的多く見られる眼の病気です。特に乾性角結膜炎は頻度が高いと思います。
乾性角結膜炎
乾性角結膜炎の特徴
- シェーグレン症候群の特徴的症状
- 関節リウマチの15〜25%
- 全身性エリテマトーデス、強皮症などでもシェーグレン症候群合併例では起こる
- 症状:
- 眼の乾燥感、異物感、まぶしい
- これらの症状は、特に空気が乾燥しているとき(エアコンが効いているとき)、パソコン画面を長くみているときなどに起こりやすくなります。
- 症状がうっとうしく、日常生活の妨げとなる
- 進行すると角膜潰瘍を生じ、視力低下につながる
これらの症状は、涙が足りないために起こります。まず、涙について考えてみましょう。
涙の通り道
- 涙は涙腺から分泌される
- 眼の表面を潤す
- 上下のまぶたの内側の小涙点から鼻へ抜ける
- 分泌される涙の量と、涙点から抜ける涙の量のバランスで一定の量の涙が常に眼の表面を覆っています
涙について
- 涙は角膜を保護している
- リゾチームや免疫グロブリンを含み、眼の表面の感染予防の働きをする
- 実は3層構造をしている
- 角膜側から、粘液層、水層、油層です。
- 粘液層は、眼球表面全体に広がるのに重要で、油層は蒸発を防いでいます。水層は80%を占めています。
角膜の構造
- 角膜は透明な組織で光を通します
- 最外層は上皮細胞で、全部で5層の細胞からなっています
- 角膜上皮に欠損ができると、周辺の上皮細胞が移動し修復します。軽度の欠損では数時間で修復が終了します。
シェ-グレン症候群では
- 涙腺に慢性炎症が起こり、涙液の分泌が低下します
- 涙液の3層のうち、まず第2層の水層が減少、進行すると粘液層も減少します
- 涙液が減少すると、角膜、結膜の表面が乾燥し、傷ができやすくなります
診断
こららの検査により、涙が少ないかどうか、角膜に傷ができていないかなどを調べます。
ドライアイの一般的治療
- ゴーグルは涙の乾燥を防ぐのに有効
- こまめにまばたきをしてみましょう
- まばたきをすると涙が目に流れるしくみになっています
- 部屋をきれいに
- 睡眠をしっかりとりましょう
- コンタクトレンズはやめましょう
- 角膜に傷が付きやすくなります
- めがねは眼の乾燥を防いだり、ほこりが入るのを防ぐのに効果があります
治療
- 点眼薬:人工涙液、ヒアルロン酸
- 周囲の環境に応じて点眼回数を変えること
- 点眼によってかえってしみるような場合は防腐剤が原因の可能性も
- 防腐剤の入っていない、使いきりタイプの点眼薬もある
- 手術療法=涙点プラグ
点眼薬 (ジェネリック薬を除く)
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人工涙液 |
粘性剤を含む点眼薬 |
防腐剤添加 |
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- ティアーズナチュラル(ヒドロキシメチルセルロース)
- コンドロン(コンドロイチン硫酸)
- ヒアレイン(ヒアルロン酸ナトリウム)
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防腐剤無添加 |
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強膜炎、上強膜炎
強膜は眼球の最外層を被う膜ですが、そこに起きる炎症を強膜炎といいます。特に、その表面に起きる炎症を上強膜炎といいます。
上強膜炎の頻度
- 関節リウマチの1%以下
- 上強膜炎の6%は関節リウマチ
強膜炎の頻度
- 関節リウマチの0.7〜6.3%
- 強膜炎の33%は関節リウマチ
強膜炎の症状
- 異物感、羞明(まぶしい)、流涙、眼痛
- 虹彩毛様体炎を合併すると視力障害
関節リウマチにおける強膜炎の意義
- 関節リウマチの活動性と相関することがある
- 血管炎を併発していることがある
強膜炎の治療
- 上強膜炎であれば、自然に治まったり、点眼薬でおさまることが多い????
- 強膜炎では全身治療を要する
- 非ステロイド、ステロイド、免疫抑制剤など
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎を併発する膠原病
- ベーチェット病
80%
- ぶどう膜炎患者の約10〜20%
- 強直性脊椎炎 20〜40%
- 乾癬性関節炎 7%
- サルコイドーシス
20%
ぶどう膜炎の症状
ぶどう膜炎の治療
- 前部ぶどう膜炎
- 後部ぶどう膜炎
- 発作抑制に
- コルヒチン、シクロスポリン
網膜病変
膠原病における網膜病変には2通りあります
全身性エリテマトーデスの網膜病変
- 外来患者さんの3%
- 入院患者さんの30%
- という統計もあります
血管炎症候群、側頭動脈炎
網膜病変に対する治療
- ステロイド、免疫抑制剤による全身治療が原則
- 新生血管に対してレーザー治療
- 側頭動脈炎ではステロイド治療による失明予防効果
薬剤による眼の病気〜ステロイドによる影響〜
- 眼圧上昇、緑内障
- 点眼薬で起こりやすい
- ステロイド薬に感受性のある人(遺伝子で規定?)では眼圧上昇がありうる
- 初期は無症状、鼻側から視野狭窄。定期的検査を。
- 可能ならステロイド中止。点眼薬治療。手術療法
- 白内障
目薬について
- あふれた目薬はティッシュや清潔なガーゼでふき取りましょう
- 下まぶたを下げて、そこにそっと一滴たらします
- さした後、眼を閉じて、目頭を1分間くらい押さえるようにします
目にやさしい生活
- ビタミンA、C、B群を含む緑黄色野菜、ビタミンAを含むレバー、魚類、アントシアニンを含むブルーベリーを摂りましょう
- パソコン画面を見て仕事などをするときは長時間にならないように。一回45分以内が目安。
- 睡眠時間をしっかりとりましょう
<まとめ>
目は大切な臓器
- 膠原病の患者さんの場合、眼に症状が出る可能性は一般の人より高くなります
- 異常を感じたら早めに眼科を受診しましょう
- 早期治療は有効です
- その際、内科の担当医からの紹介状、診療情報提供書が役立ちます
- 眼科の所見は内科医にとっても大切です
- 特に症状がなくても定期的な眼科受診を
<参考文献>
- 標準眼科学 第9版 大野重昭、澤充、木下茂編、医学書院
- よくわかる最新医学ー白内障・緑内障・糖尿病網膜症、杉田美由紀著、主婦の友社
- 表題の疾患以外の目の病気についてもわかりやすく解説されています
- 膠原病ミニマムエッセンシャル、橋本博史、飯田昇監修、新興医学出版社
- 膠原病専門医向けのテキストです。シェーグレン症候群、全身症状、皮膚粘膜症状の部分は私が執筆しています
- 改訂新版 膠原病を克服する、橋本博史著、保健同人社
- 膠原病全般について、患者さん向けに詳しく書かれています
- 健康ライブラリー イラスト版 膠原病の治し方、村島温子著、講談社
- イラストを豊富に使い、特に女性向けに書かれている部分が多く、わかりやすい本です
<質疑応答>
Q1.健康な人の眼圧と病気の人の眼圧の違いと治療(半年ごとに検査しており、3月29日の検査では右11、左13、ヒアレイン使用)、また、高血圧の諸注意など教えて下さい。
(39歳、男性、SLE、病歴23年)
- A:眼圧の正常値は14~16、上限は20~21とされています。日内変動もあり、健常人でも6以内の変動はあり、午前中のほうがやや高いとされています。今の眼圧であれば問題はないでしょう。ステロイド服用により眼圧が上がる場合もありますので、定期的な検査は続けて受けてください。高血圧の場合、体重のコントロールと禁煙が重要です。特にステロイド服用中は体重が増えやすいので注意してください。喫煙をされているようでしたらぜひ禁煙してください。禁煙はなかなか難しいですが、ご自分の将来のためを考えぜひ挑戦してください。また、血圧を自宅でも測っておくことは大切です。特に最近は早朝高血圧のコントロールが重要視されており、早朝の血圧を測って主治医に報告することは大変重要です。薬は続けてください。
Q2.4,5年前より耳鳴りと軽いめまいが続いており、現在、検査の結果は異常ないとのことですが、シェーグレン症候群との因果関係はありますか。
(75歳、女性、シェーグレン症候群、病歴28年)
- A:耳鳴り、めまいとシェーグレン症候群とは直接の因果関係はないと思います。めまいの原因は多彩で、主なものはメニエール病、頭位変換性めまい、突発性難聴、頚性めまい、椎骨脳底動脈循環不全などですが、どれにもぴったり当てはまらないめまいもあることも事実です。おそらく、視力の低下、足の筋力の低下、過労、睡眠不足などの要素も重なってくるためにひとつの原因では説明のつかない症状となるものと思います。主治医によく症状を話して考えられる原因を少しずつ解決していくようにしてください。
Q3.昨年9月に両眼の白内障の手術をし、術後0.6が0.3に視力が落ちました。今年に入ってまぶたが下がり、視界が下半分見える感じで不自由な毎日です。SLEとの関係、また、良い治療法はありますか。
(66歳、女性、SLE)
- A:白内障手術後の視力低下については、視力低下の原因が白内障だけではなかった可能性や後発白内障などの可能性があると思いますので、眼科の先生によく確認してください。まぶたが下がる症状は眼瞼下垂といいます。まぶたの筋肉、脂肪のたるみだけが原因のこともありますが、まぶたの動きをつかさどっている神経が問題の場合もあります。前者の場合、まぶたを引き上げる手術もありますから、眼科の先生に相談してみてください。後者の場合、原因に応じて治療が必要ですので、検査を受けてください。
Q4.ステロイド剤とサプリメントの相性を教えて下さい。(「葉酸」と「リウマチ薬」では、効き目が悪いという話しを聞いたことがありますが)
(54歳、女性)
- A:ステロイド剤で特に相性のよくない、つまり、併用することでステロイドの効きが悪くなったり強くなったりするようなサプリメントはないと思います。ステロイド内服中はカリウムが排泄されますし、カルシウムの吸収が低下しますので、カリウム、カルシウムをサプリメントとしてとることは意味のあることです。葉酸は、リウマチ薬の中でも、リウマトレックス(一般名メソトレキサート)との併用が問題となります。葉酸は細胞分裂の際に必要な補酵素で、リウマトレックスはその葉酸の作用を阻害して、細胞分裂を抑制し、リウマチの炎症の元となっている滑膜の細胞増殖を抑えます。ですから、リウマトレックスを飲んでいるときに葉酸を摂ると、リウマトレックスの効きが悪くなる恐れがありますので併用は控えてください。ただし、他のリウマチ薬であれば併用は問題ありません。
Q5.採血など検査の結果は良いのですが、筋肉痛、胃の痛み、頭痛、微熱、振るえ(手)がひどい。殆どの症状が疼痛やストレス性なので、抜け出す方法が難しい。なにか良い方法はありますか。
(27歳、女性、多発性筋炎、病歴7年)
- A:多発性筋炎の場合、筋肉の炎症自体が落ち着けば検査データ上はCPKなどが正常値となりますが、炎症によって障害された筋肉は完全に元通りになるわけではないので、どうしても筋肉痛、ふるえ、肩こり、頭痛などの原因となることはあります。あなたの症状の一部は筋炎のいわば後遺症と考えられますので、筋力を回復させるリハビリが必要です。血行をよくするために筋肉を暖めたり、ストレッチをすることが大切です。筋力の落ちた筋肉は、痛みや疲れが残らない程度にトレーニングをすることが大切です。といって、いきなりスポーツジムで運度をするのはやりすぎですから、自宅で軽いスクワット、ダンベル体操などから始めてみるのがよいでしょう。その際主治医に確認することを忘れずに。一つ一つ問題が解決されれば、ストレスも減り、“抜け出す”道も見えてくるはずです。
Q6.最近、朝の起床時に指の関節や足の関節の動きが悪いためやっと歩ける状態です。でも30分ぐらい経過すると直ります。先生に話しをしたら「あー、君はリウマチ系だからなあ」と言われましたが、特別なアドバイスはありませんでした。将来、寝たきりにならない為のアドバイスをお願いします。
(64歳、男性,SLE、病歴11年)
- A:関節リウマチを合併しているという意味であれば、関節リウマチとしての治療も必要かもしれません。そうでないとしても、SLEで関節痛が起こることもあります。関節をよく暖めてよく動かすようにしてください。いわゆるリウマチ体操を参考に動かすとよいでしょう。夜の風呂上りに一回と、さらにもう一回、日中にも運動をするとよいでしょう。
Q7.発症して間もない為、日常生活(食事、運動、仕事など)で気をつけること、SLEについての知識を教えて下さい。現在ステロイド25mg服用中、足に静脈炎があります。治るのでしょうか。(32歳、女性、SLE)
- A:発症間もない時期は、ちょっとした身体の変化も気になったり、いろいろな情報に惑わされたりしてしまうと思います。このような会に出席して、知識を深め、同じ患者さんどうしの交流を持つことは大切なことだと思います。日常生活では、疲れやストレスをためないことが大切です。食事はバランスが大切ですが、多くの人は野菜不足です。最近は野菜ジュースも飲みやすくなりましたので利用するのもいいでしょう。毎回の食事に必ず野菜をとりましょう。また、乳製品などからカルシウムは多く摂りましょう。野菜のビタミン類は感染予防、症状緩和に役立ちますし、野菜に含まれるカリウムや、カルシウムはステロイド服用中は失われやすいので、多く摂った方がよいのです。また、ステロイド服用中は脂肪が付きやすくなります。特に体の中心(顔の周り、おなかの周り、背中など)に付きやすくなります。ですから、脂肪の元となる糖分、脂肪分の摂取は控えめにしましょう。ステロイドを服用中は食欲も増すのでつらいところですががんばりましょう。いわゆるムーンフェイスはステロイドの副作用のひとつですが、ステロイドが減量されるとなくなりますので、しばらく我慢しましょう。仕事に関しては、やりがいのある仕事をしていると、知らず知らずのうちに疲れをためてしまっていることがあります。休養をとる日や時間はあらかじめ確保するようにしましょう。がんばって翌日まで疲れが残るようではちょっとやり過ぎと考えましょう。運動は、ストレス解消、身体の代謝改善に有効なので是非続けてほしいと思いますが、いくつか注意点があります。日光過敏症のある患者さんの場合、屋外の運動時は日焼け対策をして下さい。関節に無理な力が加わるような運動(ウエイトトレーニングのようなもの)はさけた方がよいでしょう。運動の内容は、ウォーキング、サイクリング、山歩きなどがよいでしょう。ステロイド25mg服用中とのことですので、まだ活動期の治療が続いているところだと思いますし、足の静脈炎の程度によっては運動は避けた方がよいので、運動については主治医の先生とよく相談して下さい。足の静脈炎の治療で大切なのは血行をよくすることなので、足浴や足のマッサージ、立ち仕事などのときは弾性ストッキングを使用することなどが大切です。時間はかかりますがよくなりますから根気よく治療を続けましょう。
Q8.ネオメルクカプセル50mgを4錠服用しています。肺のほうが安定していてもいつまでも服用しなければならないのでしょうか。(副作用かと思いますが、1ヶ月ほど前にめまいをおこしました)
(59歳、女性、強皮症・多発性筋炎、病歴13年)
- A:筋炎に伴う間質性肺炎に対してネオマルク(シクロスポリン)という免疫抑制剤が投与されているものと思います。免疫抑制剤をいつまで投与するのかについてはさまざまな議論がありますが、まだ結論は出ていません。間質性肺炎はいろいろなタイプがあり、あまり進行しないものから急速に進行するものまであり、せっかく落ち着いているのに薬をやめる、ということにはどうしても慎重になるのが現実です。特に、筋炎に合併した間質性肺炎では、急速に進行するタイプのものもあり、なおさら慎重にならざるをえません。しかし、一方で薬の副作用の不安ということもありますから、病状を確認しながら、少しずつ減量し、安定していれば(自覚症状、検査データ、CTなどを見ながら)中止を試みるというのが現実的だと思います。主治医の先生とよく相談して下さい。
Q9.10年程前より、唇と舌の周りがヒリヒリしています。単純ヘルペスと言われ、マズレニンGでうがいをすると症状が軽くなりますが、止めるともとに戻ります。他に治す方法はないのでしょうか。
また、白内障といわれましたが、手術は困難でしょうか。
(64歳、女性、シェーグレン症候群、病歴13年)
- A:単純ヘルペスでも唇がヒリヒリするといった症状が起こりますが、多くは数日から数週間で治まります。おそらく、シェーグレン症候群による症状もあると思われます。シェーグレン症候群では唾液の分泌が低下し、口の中が乾燥し、ヒリヒリします。唾液の分泌をよくする薬がありますので、使っていなければそれを使う手はあると思います。また、人工唾液のサリベートや、一般薬のオーラルバランスなどを使ってみるものよいでしょう。白内障の手術は、角膜や結膜の状態がよければ、シェーグレン症候群だからといって受けられないことはありません。ただし、涙液の分泌が低下していますので、術後の点眼はこまめにしっかり行う必要はあるでしょう。
Q10.15年前頃より、まぶたを閉じたときに稲妻のような光がキラキラと目に映り、テレビの文字が欠けているように見えますが、強皮症の影響なのでしょうか。
(72歳、男性、強皮症、病歴13年)
- A:いわゆる光視症といわれる症状かもしれません。光視症は網膜剥離の初発症状など、網膜の病気の症状の可能性があります。また、テレビの文字が欠けているというのは具体的にどんな見え方なのかよくわかりませんが、視野の一部が欠けているということであれば緑内障やぶどう膜炎などの可能性もあります。強皮症の影響の可能性については関連は薄いと思います。早急に眼科を受診してください。
Q11.35歳のときにSLEを発病し、プレドニン1日おきに5mg服用し、白血球は27年間2500台前後で推移していましたが、今年の5月に急に1200~1700台に落ち込み、主治医より「血液の病気ではないか」と言われています。5/20に軽い脳梗塞で入院しましたので、「今のところもう少し様子を見ましょう」ということなり心配です。
(62歳、女性、SLE、病歴27年)
- A:白血球数が減る場合として、SLEの所見として自然経過の場合と再燃の場合、薬の副作用、血液の病気の併発、などが考えられます。血液の病気の可能性がある場合、骨髄の検査などを行うわけですが、痛い検査ですし、入院して行う場合もありますので、血液の病気の可能性が高いというわけでなく、薬剤の副作用でもなければ経過観察となることもあります。また、薬剤の影響も考えられます。特に、5月に脳梗塞になられたということですので、そちらで使われている薬が原因の可能性は検討するべきだと思います。「経過観察」、「様子を見る」、ということが患者さんにとっては不安の元となっていると思いますが、白血球減少がSLEの自然経過の場合もあり、自然に元の数値に戻ることもありますので、その可能性が高いと考えられれば経過観察のほうが患者さんへの負担も少なく、最善の方法ということになります。
Q12.ワーファリン服用の際にクロレラ・納豆以外に気をつける食べ物と、飲酒量について、また、肺線維症・肺高血圧症に関しての最新情報(治療薬など)を知りたいです。(40歳、女性、SLE、病歴19年)
- A:ワーファリンは、血液の凝固因子のうち、肝臓で作られる凝固因子の合成を阻害します。それらの凝固因子を作るのにビタミンKが必要で、ワーファリンはビタミンKの働きを阻害します。ですから、ビタミンKを多く摂ってしまうとワーファリンの効きが悪くなってしまいます。ビタミンKを多く含む食材の代表が、クロレラ、納豆なのですが、他に挙げるとすると青汁があります。また、アスパラガス、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、ほうれん草、レタスなどにもビタミンKは含まれていますが、通常の食べる量であれば問題はないとされています。アルコールはワーファリンの効果に影響がありますが、晩酌程度の量であれば問題はないとされています。アルコール性肝障害が出るほどのアルコールはワーファリンの効果を減弱させる恐れがあります。ワーファリン服用はアルコール摂取から6時間以上あけるのがよいとされています。前の晩に晩酌をして、朝ワーファリンを服用するのであれば問題ないでしょう。肺線維症の治療法は、ステロイドと免疫抑制剤というのが主流で、新しく開発された免疫抑制剤も試みられています。しかし、肺線維症の病型によって効果も異なるようです。また、最近関節リウマチの治療にも使われる生物学的製剤も試みられてはいますが、まだ一定の見解には至っていないようです。肺高血圧症に対しても、様々な治療が行われています。たとえば、一酸化窒素吸入、プロスタサイクリン持続注射などが行われていますが、肺高血圧症も様々な病型があり、原因によって治療法が異なりますので、主治医の先生によく確認してみて下さい。
Q13. 体重を落とすようにいわれて朝散歩をしています。起きてすぐに飲む骨粗鬆症の薬を飲んでいますがよいでしょうか
- A:起きてすぐ飲む骨粗鬆症の薬は、胃の中で食べ物と一緒になってしまうと、薬の吸収が悪くなるため、胃の中に食べ物がなくて、薬を飲んでからもしばらくは食べ物をとらない、というのがこの薬の飲み方になります。また、胃にとどまっていると、胃を荒らしたり、食道炎の原因となることがあるため、早く胃を通過させるため、30分間は横にならないことになっています。ですから、この薬の飲み方として、薬を飲んで、散歩に出かけるというのは大変よいことだと思います。ぜひ続けてください。また、この手の薬で、週1回飲めばよいものが近々発売されるそうですので、それであれば、だいぶ楽になるかもしれませんね。
Q14. サルコドーシスでぶどう膜炎があるため、テノン嚢注射を時々受けています。免疫抑制剤の内服投与などはしなくてよいのでしょうか
- A:免疫抑制剤の内服は、基本的には全身症状があるような場合に使われます。免疫抑制剤も、副作用はありますので使わずにすめばそれに越したことはありませんから、眼の局所だけの場合は、免疫抑制剤は使わず、局所への注射の方がよいと思います。
Q15. 高血圧の薬を飲んでいて、薬剤師さんからグレープフルーツは食べないように言われていますが、少しならいいですか。
- A:高血圧の薬でグレープフルーツと相性が悪いのはカルシウム拮抗薬といわれる種類の降圧剤です。グレープフルーツを食べると、カルシウム拮抗薬の代謝、分解に時間がかかるようになり、血中濃度が高くなり、結果的には効果が強く出ることになります。その程度には差があり、血中濃度が1.2倍から多いもので3倍程度まで上昇するといわれています。ですからそのような薬を飲んでいる人は、グレープフルーツは食べない方がよいということになります。どうしても食べたければ、血圧の薬を替えられないか、先生によく相談してみてください。
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