川越市保健所医療講演会 2007年2月11日

「膠原病と痛みについて」

安藤医院 安藤聡一郎

はじめに

本日は、膠原病、関節リウマチ患者さんのために、痛みについてお話させていただきます。痛みがなぜ起こるのか、その痛みはいかにして和らげることができるのか、といったことをお話したいと思います。

たとえば、リウマチ白書の「リウマチによる職業生活への影響」のデータなどを見ますと、多くのリウマチ患者さんが、リウマチになったために仕事を制限したり、やめたりしなければならなくなっていることがわかります。ここにお集まりの患者さんの中にもそのような悩みを抱えていらっしゃる方は多いことでしょう。

そのデータには示されていませんが、そのようになってしまう原因はいろいろあるだろうと思います。通院が必要だから、とか、通勤ができなくなったからとかいろいろな原因があると思いますが、多かれ少なかれ、痛みがあるために制限せざるを得ないとか、痛みが強くなりそうでどうしても前向きになれないといったことはあるのではないでしょうか。「痛みが消えてくれたら、」あるいは、「もう少しコントロールできたら・・・」というのは、痛みを抱えたリウマチ患者さん、膠原病患者さんの共通の願いではないかと思います。

今日はまず、痛みがなぜ起こるのか、という話をさせていただき、痛みに対する治療法、対処法を紹介し、皆さんの療養の助けになればと思います。


痛みのメカニズム

痛みはどこで感じるかというと、脳で感じるわけです。たとえば手の痛みが脳にどうやって伝わるかというと、神経を通じて感じます。神経は全身に張り巡らされていて、最終的には脳に伝わります。ですから、体の神経が痛み刺激を受けると、その部分の刺激が痛みとして脳で感じるのです。では、神経はどのように刺激を受けるのでしょう。それは、さまざまな化学物質が刺激を与えます。体の中で、そのような化学物質(わかりやすくするために「痛み物質」といいましょう)が作られると、その化学物質が神経を刺激し、神経が脳に信号を送り、痛みを感じます。そのような痛み物質は、炎症が起こると作られます。炎症というのは、本来、身体を病原体などから守るときに起こる反応です。たとえば、手に傷ができてそこにバイキンが入ったとしましょう。するとそこは赤く腫れ、熱を持ち、痛みが起こるでしょう。そこで起きていることは、バイキンを身体から排除するために、白血球やリンパ球やさまざまな生体物質がバイキンと戦っていることなのです。そのときに産生される痛み物質が神経を刺激して、痛みとして感じるのです。

リウマチや膠原病患者さんの身体の中では、病原体などが入ったわけではなく、何らかの理由で炎症がおきてしまうのです。そして、リウマチ患者さんの場合であれば、関節で炎症性サイトカインと呼ばれるTNF-α、IL-1、IL-6などが様々な細胞から作られ、それらの物質がまた他の炎症性細胞を刺激し、プロスタグランジンなどの物質が作られます。これが痛み物質として神経を刺激し、その信号が脳に伝わり、「痛い」と感じるのです。

ですから、痛みの薬物治療には、これから述べますように、炎症そのものを鎮めること、痛み物質であるプロスタグランジンが作られないようにすること、神経をブロックして、痛みを感じなくすること、などがあります。

また、身体の痛みの感じ方には、「閾値」というものがあります。あるレベルまでは痛いと感じないが、そのレベルを超えると痛いと感じる、という境界線があり、それを閾値といいます。同じ刺激でも人それぞれ痛さとしての感じ方はさまざまです。それは、閾値が人によって多少違うからです。ですから、痛みに対する対処方法として、痛みの閾値を上げる、という方法も考えられるわけです。たとえば、鍼や灸の効果はそのような効果なのではないかという説もあります。また、さまざまなリラクゼーション、アロマセラピーとか、音楽などに痛みを和らげる効果があるのもそのような効果によるのではないかと考えられます。図に示すと次のようになります。器からこぼれた水が痛みを表します。器に注ぎ込む水が痛み物質です。痛み物質が多いと器からこぼれる水も増え、強い痛みを感じます。痛みに対する治療は、図に示したように、原因に近いところを治療し、痛み物質が作られないようにする、痛みを伝える神経をブロックして痛みを感じなくする、といったほうほうが考えられます。そして、痛みの閾値を上げる、つまり図でいうと器を大きくして痛み物質が増えてもこぼれなくする、といった方法もあるでしょう。

(図:左:痛みと痛みの治療薬、右:痛みの閾値の関係、著者オリジナル)

痛みへの対処

非ステロイド消炎鎮痛剤について

ステロイドについて

抗リウマチ薬、免疫抑制剤、生物学的製剤について


非薬物療法

代替医療について


セルフマネージメント

セルフマネージメントによる、痛みの管理の手法を紹介します。

痛みの自己管理者となるために

  1. 何をしたいか(目標を具体的にたてる)
  2. そのために必要なステップは
  3. 短期間の実行計画を立てる
  4. 実行プランの実施
  5. 結果をチェック
  6. 途中での修正を加える

1. 何をしたいか(目標を具体的にたてる)

2.そのために必要なステップは

3.短期間の実行計画を立てる

4.実行プランの実施

5.結果をチェック

6.修正を加える


日常生活の工夫

リウマチ体操

リウマチ体操は、参考文献1や以下のホームページなどが参考になります

リウマチ情報センターのホームページ

痛みに対する考え方

リウマチの関節保護


日常生活動作の工夫の具体例

外反母趾対策


まとめ


<参考文献、ホームページなど>

  1. 膠原病を克服する、橋本博史著、保健同人社
  2. The Arthritis Help Book, Kate Lorig, R. N., James F. Fries, Lifelong Books
  3. リウマチノート、松山赤十字病院リウマチセンター編、エーザイのパンフレット
  4. 膠原病・リウマチは治る、竹内勤著、文春新書
  5. 日本リウマチ友の会のホームページ(リウマチ白書のデータ、自助具の紹介など)
  6. リウマチ情報センターのホームページ(リウマチ体操やQ&Aなど)
  7. 埼玉県膠原病友の会(セルフマネージメントを取り入れています。住所:330-8522 埼玉県さいたま市浦和区大原3−10−1埼玉県障害者交流センター内TEL:048-832-8495)
  8. 日本慢性疾患セルフマネージメント協会のホームページ(セルフマネージメントに関する解説、ワークショップの案内など)

<質疑応答より>

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