インターネット膠原病教室 

第3回 光線過敏症

膠原病における光線過敏症とは

SLEの患者さんでは、日光にあたると皮膚が真っ赤になったり、皮疹が悪化したりする場合があります。ときには全身症状の悪化をきたすこともあります。その症状を光線過敏症といいます。そのような患者さんでは、直射日光を避ける工夫が必要です。

SLE以外では、皮膚筋炎の患者さんでも日光に対する注意が必要です。また、シェーグレン症候群の患者さんでも光線過敏症のある方は注意が必要です。
光線過敏症のない慢性関節リウマチや強皮症などの膠原病の患者さんではそれほど神経質になることはありません。

紫外線の種類

紫外線には2種類あり、日焼けの原因となるUVAと、やけどや皮膚がんとの関連もいわれているUVBとがあります。いずれも光線過敏症のある患者さんでは避けたほうがよいとされています。

どの程度、どうやって日光を避けるか

服装、日焼け止めクリームについて

SLEの患者さんでは、光線過敏症があってもなくても直射日光を避けることが大切です。イギリスでは3月から9月の間は午前11時から午後3時の間の日光を避けるよう指導されています(BMJ1993, 307, p930)。日差しの強い時間は要注意ということですが、日差しの強さをどう判断するかが難しいと思いますが、地面に映った自分の影が自分の身長より長いときは外出しても危険性は低いといわれており(Sontheimer RD, Lahita'sSystemic Lupus Erythmatosus 3rd ed p644)、これはわかりやすい目安じゃないかと思います。

直射日光の防御策としては、つばの広い帽子をかぶり、長袖の服を着て、ズボンを履くことなどが簡単で効果的な方法として勧めらています。

次によいのが日焼け止めクリームです。日焼け止めクリームの、UVBを防ぐ働きの強さはSPF で、UVAを防ぐ働きはの強さはPA で表されます。SPFは最低15で、SPF、PAともいずれも強いものを使うことが勧められています。また、日焼け止めクリームは外出30分前には塗っておき、汗をかいたり水にぬれたときは2時間ごとに塗りなおすことも必要です(Sontheimer RD, Lahita'sSystemic Lupus Erythmatosus 3rd ed p644)。ここに興味ある報告があります。SPF15の日焼け止めクリームを光線過敏症の患者さんに使っていただいた検討ですが、多くの患者さんは化粧品メーカーが勧める使い方よりかなり薄く塗っていたために、表示されているSPFの効果が得られないということでした。また、塗りそこねの多い領域として後頸部、頸部側面、こめかみ、耳などが指摘されています(Br J Dermatol 1999, 140, 255-258)。塗りそこねのないように塗るようにしましょう。

特殊な場合(冬、反射光、高地、ガラスの透過光、蛍光灯)について

また、光線過敏症のある場合は、冬でも日焼け止めクリームが必要です。窓や雲はUVBは遮ってもUVAは通します。曇りの日の紫外線は弱くなるといっても20〜40%弱くなるだけですので油断はできません。また、砂、水、セメント、雪などは紫外線をよく反射するので、注意が必要です。また、高地では紫外線は強くなり、標高5000フィート(約1500メートル)では、紫外線は20%強くなります。

重症な光線過敏症の患者さんの場合は車の窓や家の窓に紫外線予防フィルムを張ることも必要です(Sintheimer RD, et al. Du Bois'Lupus Erythematosus 5th edn p569-623)。

蛍光灯はUVA、UVBの発生源になり、蛍光灯の光によって病気の悪化を来したという報告もありますが、これは、1mの距離で20時間も蛍光灯の光に当たっていたという特殊なケースです(J Rheumatol, 1983, 10, 811-812)。アクリルカバーをして130cm以上離れれば(天井と、椅子に座った状態の顔の位置に相当)、UVBは減衰して検出されないくらい弱くなりますので、念のため通常の紫外線放射防止のアクリルカバーをしておけば心配はないでしょう (Arthritis Rheumatism 1993, 36, 428-431)。

しかし、あまり神経質になってはいけません。平均的な患者さんでは日中特に防御をしなくても数ブロック(家の周りや買い物に出かける程度の距離)出歩くことでは病態に影響はないといわれています(Sintheimer RD, et al. Du Bois'Lupus Erythematosus 5th edn p1103)。