インターネット膠原病教室 

第4回 膠原病と目

膠原病は全身の様々な臓器に炎症が起こる疾患ですが、目にも起こることがあります。目は、日常生活を営む上で大変重要な臓器です。視力の低下は生活の質に大きな影響を与えます。膠原病患者さんが目を大切にし、日常生活を快適に過ごしていただけるように、また、症状がないと眼科にかかる理由がおわかり頂けない場合もあるかと思います。そこで、今回は目について解説します。

膠原病患者さんで、目が重要な場合として大きくわけて以下の3通りの場合があるかと思います。それぞれ解説したいと思います。

(1)膠原病の主症状である場合

(2)膠原病の病態を反映する場合

(3)治療の合併症の場合

(1)膠原病の主症状となる場合

シェーグレン症候群

ドライアイアイはェーグレン症候群では、口腔乾燥とともに主症状です。シェーグレン症候群では、涙腺に慢性炎症が起こるために涙液の分泌低下が起きます。涙液は常に分泌され、目の表面の乾燥を防いでいます。涙液が不足し、角膜(黒目)の表面が乾燥すると角膜の傷の原因となり、時には視力の低下につながることがあります。眼科で診てもらうポイントは角膜の乾燥の程度、涙液の分泌量、角膜の状態などです。涙液の分泌の低下している場合は点眼薬で角膜の乾燥を防ぎ、角膜に傷ができないようにします。

ベーチェット病

ベーチェット病では、男性の83〜95%、女性の67〜78%にぶどう膜炎が起こることが知られています。眼のぶどう膜というのは、眼球のもっとも内側の膜と、外側の膜の間にある膜で、眼の前の方では虹彩、奥の方では網膜ぶどう膜となっています。ベーチェット病では虹彩炎と網膜ぶどう膜炎の両者が起こる可能性があり、進行すると視力低下を来たし、失明に至る場合もあります。近年、免疫抑制剤のシクロスポリンが眼の病変に大変有効であることがわかってきました。眼の病変を伴うときは、内服薬では免疫抑制剤の併用が必要になったり、時には眼に直接ステロイドを注射したり、手術が必要になる場合もありますのでベーチェット病の患者さんは必ず眼科を定期的に受診しましょう。

(2)膠原病の病態を反映する場合

慢性関節リウマチの合併症

リウマチの患者さんでも頻度は少ないですが、眼の病変が問題となることがあります。それは、上強膜炎といって、白目の上の方を中心に炎症が起こるものです。炎症の中心は血管炎で、視力低下の原因となるだけでなく、全身症状の悪化の兆候となる点も重要です。リウマチ患者さん、特に悪性関節リウマチと診断されている患者さんでは眼の充血が現れたら必ず眼科を受診して専門医の診断を受けるようにしてください。

SLEの網膜の血管炎

SLEでも眼の病変を伴います。しかし、外から見えるところではなく、網膜という眼球の内側に起こります。眼に入ってきた光は水晶体というレンズで屈折し、網膜で像を結び、脳に信号として送られます。ですから、網膜の病変は視力低下につながる危険性があります。また、この病変は血管炎で、これが存在するということは全身症状の悪化の兆候でもあります。その点でも大事な症状ですので定期的な受診は欠かさないようにしましょう。

側頭動脈炎

側頭動脈炎という膠原病でも眼の症状は重要です。側頭動脈というのはちょうどこめかみのところを走っている動脈で、そこに炎症が起こるために、頭痛をはじめとした様々な症状を呈する疾患ですが、側頭動脈だけでなく、眼動脈にも病変が及ぶ場合があり、その場合は視力低下を来します。早期にステロイドを使用すれば有効ですので、視力障害が生じる前に治療を行うことが大切です。この疾患では、早期治療で予後は大変よいので、発症早期の眼科受診が特に重要です。

(3)治療経過上の合併症となる場合

白内障 :ステロイドの長期投与にともなって起きることがあります。投与を中止すれば進行は止まるものが多いといわれていますが、ステロイドの減量が困難な場合や老人性白内障を合併したような場合は治療が必要となります。点眼薬もありますが、予防や進行を抑える効果はあってもできあがってしまった水晶体の混濁をとる効果は期待できず、進行例では手術が必要となる場合もあります。やはり早期発見が大切ですのでステロイドを長期に服用している患者さんでは特に定期的な受診を心がけてください。

緑内障 :おもに点眼薬のステロイドの副作用として起こることがあります。一般に緑内障では眼の痛みを感じることが多いですが、ステロイドによる緑内障では自覚症状に乏しく、眼圧が上昇して充血、霧視、眼痛を訴えることがあります。ステロイドの中止や、点眼薬を使うなどにより改善します。自覚症状には乏しいのでやはり定期的な受診が大切です。

このように膠原病患者さんでは定期的に眼科の先生に診ていただく必要があります。大切な目を守るためです。このページを見て眼科受診の必要性を理解して頂く助けとなれば幸いです。

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