インターネット膠原病教室

第6回 リウマトイド因子(リウマチ因子)について

慢性関節リウマチ、膠原病の外来患者さんとお話をしていると 時々聞かれるのが、”リウマチ検査”、”リウマチ反応”、”リウマチ因子”などのことです。これは正しくはリウマトイド因子といって、血液中の抗体の一つです。慢性関節リウマチ患者さんに主に検出されるため、このように呼ばれています。私たちでも判断に迷うことがあるのは、リウマトイド因子は陰性だが、診断は慢性関節リウマチでよいのだろうか、リウマチとは思えないがリウマトイド因子が陽性なのはどうしてだろうか、などの問題です。最近は健診でもリウマトイド因子を取り入れていることがあり、健診でこれが陽性だったということで、自分はリウマチになるのだろうかと心配されて外来を受診される方もおられます。そこで今回は、リウマトイド因子について解説したいと思います。

リウマトイド因子の歴史は古く、1940年にワーラーという人が慢性関節リウマチ患者さんの血清に特殊な抗体があることを発見したことが始まりです。当時はヒツジの赤血球を使って調べていましたが、現在は測定法も、ゼラチンの粒子を使って調べるなど近代化されています。

リウマトイド因子についてまず大切なことは、リウマトイド因子は慢性関節リウマチ患者さんならみんな陽性というわけではないということ、そして、逆に、陽性ならみんな慢性関節リウマチというわけでもないということです。

リウマトイド因子は慢性関節リウマチ患者さんならみんな陽性というわけではない:慢性関節リウマチ患者さんでのリウマトイド因子陽性率は70〜80%です。しかも、発症6ヶ月以内の早期の慢性関節リウマチ患者さんでは陽性率は30〜50%なのです。ですから、リウマトイド因子が陰性だからといって慢性関節リウマチではない、と診断することはできないのです。診断は臨床症状、診察所見と併せて考えなければなりません。逆に、臨床症状、診察所見で慢性関節リウマチが疑われ、リウマトイド因子が陽性であれば、診断の大きな助けとなります。

リウマトイド因子が陽性ならみんな慢性関節リウマチというわけでもない:一般の健康な人でもリウマトイド因子が陽性になることがあります。その頻度は5%以下とされています。しかも、高齢者になると陽性率は高くなります。計算上は、リウマトイド因子が陽性だった人が慢性関節リウマチである確率は20%となるそうです(参考文献1)。リウマトイド因子を測定した患者さん(症状などからリウマチや膠原病の可能性が考えられた患者さんが主体と考えられます)でも実際に慢性関節リウマチであった患者さんは100%ではありません。リウマトイド因子の値が高ければ慢性関節リウマチである頻度は高くなりますが、リウマトイド因子が高値の場合でも80〜90%で、低値であれば17〜33%です(参考文献2)。したがって、健診などでリウマトイド因子が陽性となっても、それだけで慢性関節リウマチなのではないかと心配する必要はありません。

では、慢性関節リウマチ以外にどんな場合にリウマトイド因子が陽性になるかというと、他の膠原病、肝疾患、感染症、悪性腫瘍、何も病気のない健康の場合などがあります。

ですから、リウマトイド因子が陽性の場合、慢性関節リウマチだけでなく、ほかの病気の可能性もありますから、二次検診や診察は受けた方がよいでしょう。

慢性関節リウマチ患者さんではリウマトイド因子は消えない?:慢性関節リウマチ患者さんの治療が奏功した場合、痛みや腫れが落ち着いて、血液検査でもCRPなど炎症所見が陰性化します。しかしそのような場合でも、リウマトイド因子は陰性とはならないといった場合、非常にがっかりされる患者さんがおられますが、リウマトイド因子は炎症の程度に応じてある程度は下がることもありますが、全く陰性となってしまうことはありません。他はいいのにリウマトイド因子だけが陰性にならないからといってがっかりしないでください。

リウマトイド因子は血液検査で陽性、陰性とはっきり出る反面、個々の患者さんにおける判断には十分注意が必要ですので専門医へのご相談をお勧めします。

<参考文献>

(1)膠原病診療ノート 三森明夫著 日本医事新報社

(2)リウマチ科第27巻特別増刊号p301-307

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