空腹時検査の意味


11月まで基本検診が行われています。この基本検診に限らず、人間ドックなどでも一般的に、朝御飯を食べないで来て検査を受けられることを勧めています。その理由はいくつかありますのでちょっと解説しましょう。


体重:食事の量に影響されない体重が測れますので毎年の体重の推移を比較するのに便利です。


体脂肪率:基本検診の必須項目ではありませんが当院では測定しています。身長と体重が同じでも脂肪の多いタイプの人は動脈硬化が進みやすいことが知られています。食事療法や運動療法の効果も体脂肪に現れます。ですから健康管理には大切な数値となります。しかし、体脂肪率は食事の影響などによって一日の中でも変動することが知られています。ですから、体脂肪率の推移をみるためには同じ条件で測っておくことが必要になります。朝、朝食前という条件で定期的に測定し比較すると食事療法、運動療法の効果がわかります。


血糖値:血糖値は血液中の糖分の量ですから食後には上がります。糖尿病かどうかの診断には空腹時の血糖値が一つのポイントです。血糖値が高かった場合、それが空腹時にもかかわらず高いのか、食後だから高いのかはっきりさせておかなければなりません。ですから、検診の目的で測定する血糖値は、空腹時に測った方がよいのです。ちなみに、糖尿病の診断と、治療経過観察には食後の血糖値がどのくらいかというのも大切です。


中性脂肪:中性脂肪も同様に食後には上昇します。正常値は150以下とされていますが、それは早朝空腹時に採血した場合の話です。せっかく検査しても、食後に採血したために150以上となってしまって異常値と誤解される可能性があります。


コレステロール:総コレステロール値自体は食事の影響はあまり受けませんが、総コレステロール、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、中性脂肪の数値から、計算により悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが計算できます。このときの中性脂肪の値が空腹時に採血したものでないと正確に計算できないことになります。


尿検査:食後血糖値が上がると尿糖が陽性となる場合があります。それも意味のあることですが、基本的には血糖値が一番低い状態で尿糖が出るかどうかをみておくことが検診の目的としては重要です。


腎機能検査:尿素窒素、クレアチニン、尿酸値は食事によって多少変化します。毎年の健診として検査するには朝食前で続けて測って比較したほうがよいでしょう。


貧血検査肝機能検査:食事の影響はほとんど受けません。


レントゲン心電図も食事の影響は受けません。

以上のような理由で早朝空腹時の検査を勧めているのです。ちなみに、水やお茶は飲んでもかまいませんが、ジュースや牛乳は検査値に影響します。また、朝の薬を飲んでおいた方がよい場合もありますのでご相談下さい。


どうしても午前中に時間のとれない患者さんには、朝のうちに、採血、採尿、体重測定だけ受けていただき(これだけならすぐに終わります)、午後の時間のあるときにほかの検査(問診、診察、レントゲン、心電図)を受けていただく、ということも行っております。二度手間のようですが、お仕事も休まずに受けることもできますのでご希望の方はご相談ください。

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