難病医療講演会報告

「強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎と痛みについて」

平成24年10月28日(日)13時より 川越市総合保健センターにて


「痛み」は障害の生じた部位で痛みの原因物質が作られ、それが神経を伝わり、背骨の中を通っている脊髄を通って脳へと伝わり、そこで痛みとして感じられます。痛みを感じた脳は、大脳辺縁系を刺激し、痛みを不快だと理解し、それの伴い、血管の収縮、便秘、睡眠障害などの自律神経障害、さらには、うつ状態などを来すこともあります。血管の収縮は痛みを助長し、痛みの悪循環をもたらします。
一方、軽いマッサージや、笑いや気持ちが高ぶることなどによって痛みの感じ方が弱くなることがあります。ゲートコントロール、脳内モルヒネ、など痛みをやわらげる仕組みも備わっています。

痛みの治療は、痛みの元を治療することと、痛みの感じ方が弱くなるようにコントロールし、痛みによる自律神経症状を抑えることがポイントです。

今回の講演では、以下の図書を参考にお話しをさせて頂きました。

  1. 実地医家のための痛み読本、宮崎東洋著(永井書店)
  2. 痛みをやわらげる科学、下地恒毅(ソフトバンク・クリエイティブ)
  3. 痛みのサイエンス、半場道子(新潮選書)
  4. 膠原病の治し方、村島温子(講談社)
  5. 膠原病を克服する、橋本博史著(保健同人社)

講演の質疑応答をこちらに掲載します。

<事前質問より>

 ○強皮症関連

Q:日常生活で気をつけること、治療方法として、患者さんとしてできることは?

A:とにかく血流をよくすること。そのためには冷やさないように、冷えたらすぐに温めるように。そして、指先、足先のケアも大切。小さな傷も作らないように、軟膏、クリームなどを塗ること。

 Q:痛みはずっと続くのか

A:血行障害のため痛みは悪循環を来たし、持続しやすくなります。指先に感染があるとさらに痛みは複雑になります。その場合は感染を治すことも必要です。温熱療法は痛みの悪循環を断ち切る効果があります。

 Q:抗がん剤を内服していますが、強皮症に対して何か影響はありますか

A:基本的にはない、と考えてよいでしょう。ただし、抗がん剤の種類にもよりますが、間質性肺炎のある場合や、腎機能障害がある場合などは、影響が出る恐れはあります。

 

Q:指の爪の変形は、病気から来るのでしょうか

A:強皮症の場合は指先への血流が低下しますから、強皮症による爪の変形による場合もあります。また、爪白癬などの場合もあります。皮膚科で診察を受けて下さい。

 ○皮膚筋炎関連

Q:足がフラフラしたり、頭がボーっとするのは薬の副作用なのでしょうか。いつまで続くのでしょうか。

A:足のフラフラは筋炎によるものかもしれません。筋肉細胞が一部破壊されてしまっているので、回復は残された筋肉細胞を回復させることになります。根気よくリハビリを続けて下さい。ボーっとするのは薬の副作用の可能性もありますが、ステロイドが原因であれば減量によって軽快すると思います。ステロイドの副作用の場合、ある量を境に急に副作用の症状が亡くなることもあります。

 Q:薬(プレドニン)の副作用で骨粗鬆症になり、腰が曲がってしまいました。薬の減らし方を知りたい。

A:プレドニンの減らし方は一概には言えませんが、症状、検査データをみながら、1割ずつ減量するのが目安になります。プレドニン換算で10mgくらいが維持量となることもあります。

 多発性筋炎関連

Q:骨頭壊死になってしまいましたが、薬のせいなのでしょうか?

A:骨頭壊死は、大腿骨の根本の部分に行く血管がつまってしまうために起こります。血管がつまる原因は、ステロイドの副作用ばかりでなく、血管炎や高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙など、様々です。ステロイドを飲んでいない人でも起こることもあります。ステロイドの関連もしてきされていますが、ここのケースで原因を特定するのは難しいのが現実です。

Q:血栓になりやすいのでしょうか

A:プレドニンをある程度の量飲んでいると、血栓はできやすくなります。しかし、ステロイドだけでなく、血管炎、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙なども血栓の原因となりますから、減塩、バランスのよい食事、禁煙なども行って下さい。 

Q:喉の詰まりやすさは関係しているのでしょうか

A:筋炎ではのどの奥の筋肉にも病気は起こることがあり、飲み込みがうまくいかなくなることがあります。「喉の詰まりやすさ」というのがのどの奥の筋肉の問題によるものであれば関係はあり得ます。

 

<講演後の質疑応答>

 Q:皮膚筋炎と強皮症と診断されています。最近、急に指の第2関節が腫れて痛くなってきました。それは他の病気の合併なのでしょうか、それとも皮膚筋炎、強皮症の症状なのでしょうか。痛みは非常に激しくて、夜もよく眠れません。特に朝はつらいです。
A:強皮症の場合は関節炎が起こることはあります。特に強皮症では血流が低下していますので、先ほど説明したような、痛みと血管収縮という、痛みの悪循環は生じやすくなっています。朝より昼からの方が少し楽になってくるということですから、血流が悪いことは関係ありそうです。ただ、拝見したところ、関節が腫れていますので、関節リウマチの合併ということも考えられます。痛みに対しては、いろいろ薬を換えたり、関節保護のケアをするようにしてみてください。

Q:強皮症なのですが、手はよく温めるようにしているのですが、足も冷えて真っ白になっていたりすることがあるのですが。
A:いわゆるレイノー現象は手ばかりでなく、足にも起こります。足はなかなか手軽に温めるというのは難しいので、冷えないように、靴の中にいれており小さいカイロなどもあるようですから、そういった物を利用するのもよいでしょう。

Q:皮膚筋炎なのですが、痛みはありません。ただ、歩いていてもバランスが悪くていつ倒れるか不安な状態です。
A:筋炎の方では痛みは様々で、全く痛みのない場合もあります。筋炎では、筋肉の細胞が炎症によって障害を受けますから、今まで10の筋肉が働いていたのに5しか働かないような状態になります。人間の体というのは、普段意識はしませんが、立っているだけでもかなり筋肉を使っています。また、歩くという場合も、一歩踏み出して、一瞬片足立ちになるときなどは太股の前後の筋肉が相当働いています。それが半減していますから、バランスを崩しやすくなります。筋力を回復するよう、リハビリが必要です。たとえば、家ではどこかにつかまりながら、電話帳くらいの高さの台に片足ずつ上って、降りてを繰り返す足踏み運動などをするのがいいでしょう。
Q:目も見えにくくなってきたのですが。
A:一般に50代にもなると白内障は進み始めるそうです。さらにステロイドを使っていると進みやすくなりますから、白内障の可能性はあるでしょう。しかし、他にも網膜の問題などが隠れている場合もありますから、一度はきちんと、眼科で診てもらうことをお勧めします。

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