午後のひと眠りの効果

昼間、ちょっとうたた寝をすると午後からの作業効率がよくなる、それを裏付ける論文が発表されました(Nature Neuroscience: 28 May 2002, doi: 10. 1038/nn864 )ので解説します。

一時間か、あるいはそれ以下の日中の睡眠は、欧米ではpower naps(napはうたたうねの意味)と呼ばれ、集中力、生産性、気分、いずれにもよいことが知られています。

夜間の睡眠に関しては、とりわけ6時間以上の睡眠については、経験に基づいて学んだことを身につける上で重要なことは以前から科学的に証明されています。では、日中の短時間のうたた寝、いわゆるpower napsの効果は科学的に証明できるのか、というのがこの論文のテーマです。

実験は、以下のような単純作業をしてもらい、その作業効率を調べ、昼のうたた寝の効果を検討しました。一日に4回、午前9時、正午、午後4時、午後7時にコンピューター画面を使ったテストを行いました。テストは、左下コーナーに現れた文字を確認しながら、ディスプレーの中心で作業を行うという視覚を酷使するような単純作業を行っています。このような単純作業のテストで、正確さとスピードを検査しました。

10名ずつの3グループに分けて比較しています。3グループとは、睡眠なし、午後2時に30分の睡眠をとる、午後2時に1時間の睡眠をとる、の3つです。

睡眠をとらないグループでは、2回目、3回目、4回目と回を重ねるごとに正確さが悪くなっていきました。睡眠をとった2グループでは、睡眠をとったあとの3回目、4回目のテストの正確さが悪くはならないという現象が観察されました。特に、1時間の睡眠をとったグループでは、睡眠をとった直後の3回目のテストの結果は1回目とほぼ同じ正確さでした。

このように午後の睡眠が仕事の効率を低下させないのに役立つことがわかりました。

また、休憩だけではどうかということも調べています。つまり、眠らないが、アイマスクをして休憩するグループを作り(眠っていないことは脳波をとって確認しています)、比較していますが、やはりこのグループでは、午後の3回目、4回目のテストの正確さは悪くなっていきました。

面白いことに、結果がよくなったら現金のボーナスを出すという、”ごほうび”を用意しても3回目、4回目に元のレベルまで改善した人はいなかったということです。つまり、“気合い”を入れただけでは午後からの作業効率をよくすることはできない、という結果とも解釈できると思います。

休憩や気合いよりも睡眠の方が効果があるということかも知れません。

IT社会となり、多くの作業がコンピューター上で行われるようになりました。便利になった反面、コンピューター上でのちょっとした入力ミスが大きな問題を引き起こすこともめずらしくありません。集中力を持続させるためにも、昼休みにひと眠りの時間をとることは大切なことかもしれません。

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