熱中症について

どんな症状?
熱中症は、高温の環境下で体温調節や循環機能などの働きに障害が起こる病気と定義されており、つぎの4つのタイプに分けられます。

熱射病:体温上昇のために中枢神経に異常を来たした状態で、突然意識障害に陥り、死亡率も高い。発病前にめまい、めまい、悪心、頭痛、耳鳴り、イライラ、嘔吐、下痢などが見られることがある。
熱けいれん:四肢や腹部の筋肉の痛みを伴い、発作的にけいれんを起す。大量の発汗による塩分喪失に対し、塩分を補給しなかったことにより起こる。
熱失神(熱虚脱):皮膚血管の拡張により血圧が低下し、全身倦怠、脱力、めまいが起こる。
熱疲労(熱疲はい):いわゆる脱水による症状で、初期には口褐、尿量減少で始まり、めまい、頭痛、吐き気などが起こる。

どんなときに起こる?

高温のときに起こることが多いのですが、気温だけでなく、湿度風速輻射熱などが関与します。たとえば、同じ気温でも湿度が高いほど熱中症は起こりやすくなります。また、暑さになれていない場合にも起こりやすくなります。したがって、梅雨の合間に突然気温が上昇した日や、合宿の初日などに起こりやすくなります。
熱中症の起こりやすさは気温、湿度、輻射熱を総合的に測る湿球黒球温度(WBGT)が参考になります。しかし実際にはどこでもWBGTが測定できるわけではありません。WBGTに相当する乾球温度(普通の温度計の温度)とともに熱中症予防のための運動指針を示します。(財団法人日本体育協会 スポーツ活動中の熱中症予防ハンドブックより、野外スポーツの指導者は必読の書だと思います)

WBGT 乾球温
31℃以上 35℃以上 運動は原則禁止
28℃以上 31℃以上 激しい運動は禁止。運動する場合は積極的に水分を補給する。体力の低いもの。暑さになれていないものは運動中止。
25℃以上 28℃以上 積極的に休息をとり、水分を補給する。激しい運動では30分おきくらいに休息をとる。
21℃以上 24℃以上 熱中症の死亡事故が起こる可能性はある。熱中症の徴候に注意するとともに運動の合間に積極的に水を飲むようにする。
21℃未満 24℃未満 通常は熱中症の危険性は少ないが、適宜水分補給は必要。

また、屋外だけではなく、屋内で熱中症になるケースが増えています。換気をしていない部屋や、屋根のすぐ下の部屋などは気温も湿度も上がりやすく、熱中症が起こりやすくなります。クーラーをつけるのを嫌がって熱中症になってしまうケースもあります。お年寄りの中には、「昔はクーラーなどは使わなかった、クーラーは、蒸し暑い夏を快適に過ごす贅沢品だ」というように思っている方もいらしゃいます。しかし、夏の暑さ自体が昔と違います。空気清浄機や加湿器と同じように、クーラーも健康のための家電製品と考えた方がいいのかもしれません。

発症のメカニズム
人間の体温は37℃になるように調節されています。外気温が上がれば皮膚の血管を拡張して皮膚への血流を増やして熱を放散させ、汗を皮膚から蒸発させるときに気化熱を奪って皮膚温を下げようとします。しかし、外気温が高く、特に、湿度や輻射熱も高いときに、運動や労働を行うとそのバランスが崩れ、体温調節が効かなくなり、過剰に体温が上昇してしまいます。それにより前述したような熱中症の諸症状が起こります。

予防と治療
予防にまさる治療はないわけですが、熱中症が起こりやすい状況を避けることが大切です。それには気温、湿度の高い日の外での運動や労働を避けることです。避けられないときは、水分の補給を十分に行うことです。それも水ではなく、0.2%の食塩水を補給することが望ましく、スポーツドリンクなどでもかまいません。補う水分量の目安は、野球などのスポーツでは、運動前に250〜500ml、1時間ごとに500〜1000mlとされています。温度、運動量により調節します。
水分を補給する意味は大きく分けて2つあります。一つは、脱水状態にならないようにするため。もう一つは皮膚から汗や水蒸気を放散させて体温を下げるためです。
熱中症予防のためには体温を上げないようにすることが大切ですが、水分を摂って汗をかく、ということもいいのですが、直接冷やすのがさらに効果的です。ビニール袋に入れた氷や凍らせた保冷剤などを首などにあてて体温を上げないようにする、というのもよい方法です。
もし、熱中症の症状が見られたら、涼しいところで安静にし、スポーツドリンクなどをとらせ、体温が高いときは裸にして冷水をかけたり濡れタオルをあてながら扇風機の風を当てるなどして体温の低下をはかるようにします。熱けいれんの場合は0.9%の食塩水を飲ませます。意識障害が見られる場合は熱射病の危険性がありますのでこれらの処置をしながら救急車を呼びましょう。

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