新型コロナウイルスのPCR検査は当院では行っていません
検査の意味について
上記の検査が保険収載となるということが決定しましたが、それはどこの医療機関でも受けられるという意味ではありません。誤解の多い点ですので、説明させていただきます。また、検査は、だれでも心配なら受けた方がよい、というわけではありません。その点について、某ラジオ番組にメールを投稿しました。その文章は以下ですので、ご参照ください。
はじめてお便りいたします。
新型コロナウイルス肺炎について、検査をもっとできるように、というご意見がありますが、技術的には民間の検査会社でも可能でも、現実的には難しい背景があります。
まず、感染性の検体ですから、その検査を受けた会社ではその検査を行う部屋ではほかの検査はできなくなるそうです。
また、検体をとる医師の側も防護服に身を包まなければなりません。そのような装備と部屋がなければ難しいのです。
検体はのどをぬぐって取りますが、そこにウイルスがたくさんいればいいですが、あまりたくさんはいません。たくさんいるのは鼻腔や気管です。鼻腔や気管から採ろうとすると、患者さんはせき込んだりしますから、ウイルスがいた場合、周囲にまき散らすことになり、のどから採るしかないというのが現実です。インフルエンザの検査では鼻腔から採るのですが、せき込んだりしたことがある方もいると思うのでお分かりいただけるかと思います。
次に、検査はPCR法という非常に優れた検査方法ですが、実際には陽性と陰性の境目というのは、黒か白かとはっきり分かれるわけではありません。たとえて言うなら、連続した数字で出た結果を、10以上は陽性、9以下は陰性としよう、と決めるのです。検査結果の数値が100とか200になれば明らかに陽性といえるでしょう。しかし、ウイルスはいないのに11や12という数字が出たり(偽陽性といいます)、ウイルスがいるのに9とか8という数字が出ることがあります(偽陰性といいます)。このPCR検査というのは、偽陰性が非常に多く、偽陽性もある程度出ます。
インフルエンザで病院に行った場合、「では検査してみましょう、陽性だからインフルエンザですね、陰性だから違いますね」ということが実際には行われているため、誤解されやすいかと思いますが、本来、診断には、症状や聴診所見、レントゲン所見を丁寧に分析して診断を推測し、確認のために検査をしているのです。検査前に十分な分析を行ったうえで検査を行って、検査結果を評価しないと、間違いのもととなります。
韓国のように片っ端から検査した方がいい、という意見もありますが、それを罹患率の低い集団(新型コロナにかかっている人が少ない集団)に行うと、偽陽性となる人数がかなり出て、間違いのもととなります。
今の日本の検査体制には問題がないとは思いませんが、希望すれば検査を受けられるようにすればいい、というのも間違いのもとだと思います。
以下が参考になります。ぜひお読みください。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200228-00165104/
ご理解いただけたら幸いです。上記の中では偽陽性を強調していますが、もちろん偽陰性も多くなり、ホントはコロナにかかっているのに検査は陰性、となる人が出てくることになります。したがって、検査を受けるよりも、怪しいと思ったら自宅で安静にしているのがよいのです。
実際、CT画像で所見がありその後コロナウイルス肺炎となったケースで検討したデータによると、PCR検査の感度は40~60%くらいではないか、つまり、ホントはコロナウイルスを持っていても検査では陰性となってしまう例が60~40%あるのではないか、と言われています。
現在の日本のやり方は、検査体制の問題はあるとしても、結果的に間違ってはいないことになると思います。
不便な生活を強いられますが、一日も早く終息できるよう、みんなで乗り切っていきましょう。
2020年3月4日