関節リウマチの経過は以前に比べよくなっているか

関節リウマチは、全身の多くの関節に炎症が起き、長い経過とともに関節の機能も障害される疾患です。しかし、近年、診断、治療の進歩に伴い、関節リウマチ患者さんの経過もよくなってきていることが報告されています。それは、関節リウマチの早期診断が可能となり、早期から積極的に治療が行われるようになったためと考えられています。

”関節リウマチ患者さんの経過が昔よりよくなっているかどうか”を検証するためには、同じような患者さんを同じ評価方法で、発病から数年単位、できるだけ長い経過をフォローして比較する必要があります。残念ながらこれまでそこまで厳密な比較は行われていなかったのですが、今回発表された論文(Arthritis and Rheumatism 2005年9月号、vol 52, p2616- 2624)では、1985年から早期の関節リウマチ患者さんをフォローし、同じ評価方法で比較して検討しています。

対象となったのはオランダの大学病院で診断され治療された関節リウマチの患者さんです。診断された時期を、1985〜1990年、1990〜1995年、1995〜2000年、2000〜2005年の4グループに分けて、それぞれの患者さんが、診断されてから5年間にどのような経過をとったかを、DAS28、あるいはHAQという関節リウマチの評価を定期的に行って比較しています。DAS28は、患者さんの痛みの評価、関節の炎症所見、CRPなどの炎症の数値などを総合的に評価して関節リウマチの活動性を測るためのものです。HAQは日常生活動作に関する患者さん自身の評価が主です。

結果は、最近関節リウマチと診断され治療が開始された患者さんほど、DAS28の値は早く下がり、治療開始後5年間、より低い数値を持続する傾向が認められました。 HAQについては最近の患者さんほどやや高い傾向が見られました。これも低い方がよいわけですが、この評価法は患者さんの主観をより多く取り入れているため、以前より患者さんの意識が高まっていれば、評価は低くなる可能性(満足度として低くなる可能性)があり、おそらくそのためであろうと論文の著者らは解釈しています。

DAS28のような客観的な評価が、ここ20年間の間によくなってきているのは、ステロイド、メソトレキサートなどの積極的使用、さらに最近では生物学的製剤の使用が普及したためだろうと論文の著者らは述べています。他の研究でも同様の指摘がされています。

我が国では、1999年にメソトレキサートが、2003年にインフリキシマブ、2005年にエターネルセプトが関節リウマチ患者さんへの使用が認可されてきました。これから、関節リウマチ患者さんの予後もきっとよくなっていくと期待されます。そのためには早期に的確な診断をつけ、治療を始めることが大切です。治療薬については副作用の心配や効果への疑問など感じられることも多いと思いますが、主治医とそういったことも遠慮なく話し合って治療を続けていきましょう。

当院でも、患者さんの疑問にしっかり答え、関節リウマチを克服するという気持ちを持続させられるよう、みなさんの力になりたいと思っています。

ホームへ