減塩による効果、心血管系疾患の予防効果も明らかに
塩分摂取を控えることにより血圧が下がることはよく知られていますが、今回発表された論文(British Medical Journal 2007年4月20日号)では、高血圧のない人たちに減塩を行い、心血管系疾患が減ることが示されましたので紹介します。
減塩の効果を調べた2つの臨床試験、TOHP IとTOHP IIの対象者を長期にわたって追跡したものです。いずれも30〜54歳の血圧は正常の人たちです。TOHP Iでは18ヶ月間、TOHP IIでは36〜48ヶ月間にわたり、塩分摂取の管理を行っています。10〜15年間の追跡調査により、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、冠動脈再建術、心血管系疾患による死亡)の発生頻度を調べています。
TOHP Iでは744人、TOHPIIでは2382人が調査対象となり、塩分制限を厳しく行うグループと、一般的指導にとどめるグループとに分けて比較しました。いずれのグループも開始時の一日の塩分摂取量は10グラム前後(9.0~10.8g)で、塩分制限を行ったグループは、TOHP Iで2.6g、TOHP IIで1.9gの減塩を達成していました。
最終的に2415人を追跡調査することができ、200人に上記の何らかの心血管系疾患が起きていました。分析の結果、心血管系疾患の発生については減塩をしたグループのほうが25%発生率が低いということがわかりました。開始時の塩分摂取量や体重も考慮に入れて分析すると、減塩による心血管系疾患の減少は30%になるそうです。
したがって、減塩は、血圧を下げるだけでなく、心血管系疾患そのものも減らす効果があるといえるようです。
この種の研究で問題になるのは、塩分摂取量が正確に測られているかという問題で、食事記録による塩分計算で検討することが多いのですが、その方法ですと、自己申告になるので、塩分摂取量が正確ではない可能性があります。しかし、この研究では、尿中のナトリウム排泄量を測り、塩分摂取量を計算しているので、その点は問題ないようです。また、気になったのは、はじめの18ヶ月、あるいは36〜48ヶ月の減塩指導で、長期間減塩が守られるのだろうか、という点でしたが、3ヶ月ほど減塩をしっかり行うとその後も長期間身につくものだという報告もあるそうです。
追跡調査した人たちについて、血圧や体重はわからないようで、できれば、血圧が上がった人たちに心血管系疾患が多かったのか、あるいは、血圧に関係なく、減塩で心血管系疾患が少なかったのか、そのあたりも知りたいところですが、いずれにしても、減塩の効果は確かなようです。
2グラムの塩分というと、味噌汁一杯くらいに相当します。今現在の塩分摂取量が9グラムで、みそ汁を飲んでいるようであれば、それをやめるだけで、この論文に示されたような減塩は達成できるということになります。日本人の食生活では減塩は難しいかもしれませんが、積極的に取り入れていくべき生活習慣でしょう。