新型インフルエンザについて
今、新型インフルエンザ流行の恐れがあることが報じられています。また、ちょうど今、インフルエンザの予防接種が行われており、また、インフルエンザの特効薬であるタミフルの備蓄や、一方でその副作用も話題となっています。ここで、今話題となっている”インフルエンザ”について整理したいと思います。
今話題となっている”インフルエンザ”には3種類あります。
(1)毎年流行するインフルエンザ
- これは、毎年2月から4月にかけて流行するインフルエンザで、A型とB型の2種類があります。今年流行するインフルエンザは、A型のH3N1とH1N1という型とB型と考えられていて、それに対するワクチンがあり、現在接種が行われています。このインフルエンザウイルスに対しては、今接種が推奨されているインフルエンザ予防接種が、100%とはいえないものの大変有効です。
(2)トリインフルエンザ
- これは、トリだけに感染するインフルエンザで、基本的にはトリの病気です。養鶏場で多くのトリが一度に死亡するという事件がアジア各国に起きており、日本も例外ではありません。基本的にはトリの病気ですが、ヒトに感染した例も報告されています。2003年の香港の例をはじめに、2005年10月現在で、東南アジアを中心に122例の感染例があり、そのうち62例の方は亡くなっています。この死亡率は大変高く、ウイルスそのものの病原性が高いと考えられています。基本的にはヒトに感染しない理由は、ウイルスというものは細胞の中に入り込んで増殖するのですが、細胞の中に入れるかどうかは、その細胞とウイルスとの間の鍵と鍵穴のような関係が一致するかどうかで決まります。つまり、トリの細胞とトリインフルエンザウイルスは、鍵と鍵穴が一致するのに対して、ヒトの細胞とトリインフルエンザウイルスとは鍵と鍵穴が一致しないのです。しかし、トリとの接触が濃厚な例外的なケースでは、おそらく入り込んできたウイルスの量が多いために、ヒトの細胞にもトリインフルエンザウイルスが入ってしまうのだろうと考えられています。東南アジアの感染例のほとんどは、トリとの濃厚な接触があった例です。このウイルスはA型インフルエンザの一つでH5N1という型であることがわかっています。
(3)新型インフルエンザ
- 現在世界的に話題となっているインフルエンザで、今のところ(2005年11月16日現在)流行は確認されていません。これは、トリインフルエンザウイルスが、何らかの変異を生じて、ヒトに感染しやすいタイプに変わってしまったウイルスのことを指します。平成17年11月16日現在、まだそのようなウイルスは発生していませんが、WHO(世界保健機構)の発表によると、それが起こるのは時間の問題と考えられています。このウイルスは、現在行われているインフルエンザ予防接種が効きません。そしてほとんどのヒトは、このウイルスに対する抗体を持っていません。したがって、多くのヒトが感染するだろうと予測されています。ワクチンも開発中ですが、細胞を培養して作るため、短期間に大量のワクチンを作ることは難しいとされています。感染した場合の病原性は高く、致死率も相当高いものとなるだろうと考えられているのです。今のところ、タミフルという抗ウイルス薬が効くのではないかといわれており、国を挙げて、その薬の備蓄が行われているところです。しかし、ベトナムでトリインフルエンザに感染した例では、タミフルの効かないウイルスだったことがわかっています。したがって、新型インフルエンザが、予防接種も間に合わない、タミフルも効かない、となると、大変恐ろしい事態になると考えられます。過去にそのようなことがあったかというと、1918年に大流行したスペインかぜが、当時の新型インフルエンザによるものだったといわれています。世界中で2000万人の人が亡くなったと伝えられています。
ウイルスの変異は次のような場合に起こるといわれています。
- トリインフルエンザウイルスと普通のインフルエンザウイルスが、豚などに感染し、豚の体内でウイルスの変異が起こり、ヒトに感染力があり、トリインフルエンザのように強い病原性を持ったウイルスに変化する。
- トリインフルエンザウイルスに感染したヒトが、普通のインフルエンザにもかかり、その人の体内でウイルスの変異が起こり、ヒトに感染力があり、トリインフルエンザのように強い病原性を持ったウイルスに変化する。
- トリインフルエンザに感染してしまったヒトの体内で、ウイルスが変異を起こし、ヒトに感染力があり、トリインフルエンザのように強い病原性を持ったウイルスに変化する。
以上のような場合にウイルスの変異が起こるとされており、今のように、トリインフルエンザが蔓延している時期に、ヒトの間で普通のインフルエンザが流行すると、とても危険ということも言えるのです。
まずは、毎年流行するふつうのインフルエンザに対する予防、つまり予防接種を受けて、そして、マスクの着用、手洗いの励行をしっかりするようにしましょう。また、新聞、テレビの情報をしっかりチェックし、もし、海外で新型インフルエンザが流行したら、流行地へは行かない、などの配慮も必要でしょう。
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