睡眠時間と若者の健康について

睡眠時間はどのくらいが適切なのか、ということには様々な議論があります。8時間寝ないとだめだという人もあれば、5時間で十分という人もいます。しかし、死亡率や、疾患との関連で調べた研究の多くでは、死亡率、冠動脈疾患、2型糖尿病の発症、日中の眠気、目覚めの良さ、などについて、7〜8時間の睡眠が、最もよく、それより長くても、短くてもよくないというデータが報告されています。また、睡眠時間が短いと高血圧のリスクともなることが報告されています。

今回発表された研究は、大学生の睡眠時間と健康状態の自己評価を比較検討したものです。Archives of Internal Medicine 2006年9月18日号(2006; 166: 1689-1692)に掲載されました。

対象となったのは、24カ国の27大学の17〜30歳の健康と関係のない学部(医学部とか看護学部など以外という意味だと思います)の17465名の大学生です。対象者には、平均睡眠時間について調査し、健康状態のアンケート調査結果と比較しました。健康状態については、「全般的に、あなたの健康状態は、すばらしい、大変よい、よい、まあまあ、わるいのどれですか?」という質問をし、まあまあと答えた人と悪いと答えた人を健康状態が悪い人と見なしました。そのような人が12%いたそうです。また、うつ状態についても13項目からなる質問票を用い、また、最近医療機関を受診しているかとったことも確認しています。4週間以内に受診している人は22%いたそうです。そんほか、様々な背景も検討対象としました。

その結果、睡眠時間が7〜8時間の人が63%、6〜7時間の人が15%、8〜10時間の人が10%、6時間以下の人が6%、10時間以上の人が6%でした。健康状態が悪いひとが現れる相対危険度は、7〜8時間の場合を1.00とすると、6〜7時間の人は1.56、6時間以下の人は1.99と、睡眠時間が短いほど、健康状態がよくないと自覚している人が多い傾向が見られました。一方、8〜10時間の人は0.89、10時間以上の人は0.93と、大きな差はありませんでした。

睡眠時間は、短くても長くてもよくないとされてきたわけですが、この研究結果を見る限りは、若いうちは長いことの弊害より、短いことの弊害の方が大きいといえるだろうと、論文の著者らは述べています。睡眠時間と疾患とは密接な関連があります。また、一方、疾患と睡眠の質も密接な関係があります。たとえば、慢性閉塞性肺疾患や喘息では、睡眠が妨げられます。また、睡眠と、免疫機能にも密接な関係が指摘されていて、たとえば、睡眠時間を4時間削ると、細胞性免疫機能の障害が起こり、炎症性サイトカインIL-6、TNF-αの産生が増えるといわれています。このようなサイトカインが増えると関節リウマチなどには悪い影響が出ることが予想されます。逆に、睡眠を多くとることで、炎症が軽くなることも期待できると思います。

このように、睡眠は、病気と相互に密接に関連しています。まずは、病気の予防のために、睡眠不足をさけ、もし睡眠不足になったとしてもそれが長く続かないように心がけることが大切でしょう。

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