禁煙により手術後の合併症が減少

喫煙は肺癌や動脈硬化と関連が深く、健康上好ましくないことはよく知られていますが、手術にも影響するのです。それは、喫煙が心肺機能に影響したり、傷の治りに影響するためで、これまで心臓のバイパス手術やお腹の手術などで報告されてきました。これらの手術では、手術によって呼吸運動が抑えられたりするため術後の肺機能に影響しますが、このような手術ではなく、整形外科の手術でも喫煙が術後に影響することが発表されました(The Lancet 359, 114-117, 2002)のでここに紹介します。

研究はデンマークの3カ所の病院で行われました。対象となったのは喫煙習慣(一日平均15本)のある120人の患者さんです。これらの患者さんに、股関節か、膝関節の人工関節置換術が行われました。手術の6〜8週間前から半数の60人の患者さんには禁煙を指導し実行してもらいました。あとの半数の患者さんには特に禁煙指導は行いませんでした。術後の成績を比べると、術後合併症全体では禁煙した患者さんたちでは18%に対して、禁煙しなかった患者さんたちでは52%と明らかな差が認められました。特に術後の傷のトラブル(出血、感染など)、心血管系の合併症、再手術率に差があり、また、整形外科病棟での入院期間も、禁煙した人たちは平均11日だったのに対して、禁煙しなかった人たちでは13日と長くなり、特に集中治療室の入院期間が長かったという結果になっています。

喫煙は心臓、肺に影響するだけでなく、傷の治りにも影響することがわかっています。組織での毛細血管の循環が障害されるためと考えられており、実験的には禁煙すると3週間で傷の治りが改善することもわかっています。実際に手術の行われる患者さんでは禁煙がどう影響するか確認するためにこのような研究がなされたのです。結果は前述したとおりです。

ここで、ちょっと興味があるのはどうやって禁煙できたかということです。この論文の著者らも述べていますが、この研究では120人の喫煙患者さんに協力してもらっているわけですが、はじめは166人の喫煙患者さんに協力を求めたところ46人の患者さんには拒否されたのだそうです。理由は明らかにされていませんがおそらく禁煙はできないということが主な理由だったのではないかと思います。この研究で禁煙した半数の人たちはどうやって禁煙できたかというと、カウンセリングを受け、患者さんによってはニコチン製剤による禁煙援助を受けたということです。精神的なバックアップと薬による禁煙援助が功を奏したというわけです。

喫煙の健康被害はいろいろありますが、禁煙の援助となる方法もいろいろあります。タバコをすっている方は是非禁煙を考えてみてください。

当院でも禁煙援助のためのニコチンテープを扱っていますので、ご相談ください。

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