大豆の血圧降下作用と脂質改善効果

疫学的調査によると、大豆をよく食べる地域の人たちには心血管系疾患(心筋梗塞、狭心症、脳卒中など)が少ないことがわかっているそうです。一方、40歳〜70歳の人たちにおいては、血圧が115/75〜185/115の間で、収縮期血圧で20mmHg、拡張期血圧で10mmHg上がると、心血管系疾患のリスクが2倍になるというデータもあるそうです。今回紹介する論文(Archives of Internal Medicine 2007年5月28日号, vol 167, p 1060- 1067)は、大豆をたくさん摂ってもらうことで血圧や血清脂質(コレステロール、中性脂肪)にどのような効果が現れるかを検討したものです。

対象となったのは60人の健康な閉経後の女性です。この人たちに大豆の効果を確認するために2通りの食事を摂ってもらいました。一つはTLC食(Therapeutic Lifestyle Change diet、治療的生活習慣改善食とでも訳すのがよいでしょうか)で、もう一つがTLC食とカロリーは同じで、蛋白成分のうち25gをだけ、大豆蛋白25gに置き換えたもの(以下、TLC+大豆蛋白置換食とします)です。TLC食自体もバランスのよい食事で、総カロリーの30%が脂肪(飽和脂肪酸は7%以下、一価不飽和脂肪酸は12%、多価不飽和脂肪酸は11%)、15%が蛋白質、55%が炭水化物、そして一日のコレステロール摂取量は200mg以下となっています。そして、2グループに分け、一方のグループは8週間のTLC食の後、8週間のTLC+大豆蛋白置換食を摂ってもらい、もう一方のグループにはその反対の食事を摂ってもらいました。それぞれ、8週間の食事療法の後に血圧、血清脂質などを測り、大豆蛋白置換食の効果を検討しています。

その結果、大豆蛋白置換食によって、血圧の高い人(収縮期血圧140mmHg以上)では、収縮期血圧が9.9%、拡張期血圧が6.8%下がっていました。血圧が正常(収縮期血圧120mmHg以下)の人では、収縮期血圧が5.2%、拡張期血圧が2.9%下がっていました。収縮期血圧が120〜139nnHgの前高血圧の人では収縮期血圧が5.5%、拡張期血圧が2.7%下がっていました。また、血清脂質については、高血圧の人では、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)とアポリポ蛋白Bがそれぞれ11%、8%低下していました。

このように、8週間という比較的短期間の調査ではありますが、大豆蛋白の多い食事には、血圧を下げる効果があることが示唆されました。また、一部の人では血清脂質の改善効果も期待できることが示されました。

大豆には,動脈硬化を促進するといわれる飽和脂肪酸は含まれておらず,動脈硬化を予防する効果がある不飽和脂肪酸が含まれています.また,食物繊維も多く,カリウムも多く含まれていますが,今回の論文の著者らは,大豆の成分のうち,イソフラボンに注目しており,血圧降下作用は主にイソフラボンによってもたらされたのではないかと推測しています.この点は,今後の研究の成果を待ちたいところです.また、今回の研究では、対象となった食事もバランスのよい食事であり、その中の蛋白成分を大豆蛋白に置き換えているというところは重要なところで、今の食事にただ大豆を足せば同じような効果が得られる、という訳ではないところは注意が必要です。

大豆は日本人の食生活にはなじみが深く,私たちにとっては明るい情報といえそうです.豆腐,納豆など,多くの大豆製品が日本の食卓には並びます.これらを上手に毎日の食生活に取り入れたいものです.

ホームへ