大豆蛋白に血圧低下効果

最近は、ダイエットにアミノ酸が取り上げられたり、大豆蛋白を成分とした飲料品が販売されるなど、蛋白、アミノ酸がブームになっています。

今回は、大豆蛋白に血圧を下げる効果がある、という興味深い論文が発表されました(Annals of Internal Medicine, 2005年7月5日号、143, p 1-9)ので紹介します。

植物性のタンパク質に血圧低下作用があることは以前から指摘されており、高血圧の治療食のモデルとも言える”DASH食”でも植物性食品の摂取を勧めているわけですが、今回、大豆蛋白の摂取が血圧低下に効果があることを示す研究が発表されました。

中国で行われた研究です。35歳〜64歳の302人の人を対象に行われました。対象者の血圧は、上が130〜159mmHg、下が80〜99、対象者を2グループに分け、一方のグループの人たちには一日40グラムの大豆蛋白をとってもらい、もう一方のグループの人たちには炭水化物の複合物をとってもらいました。12週間の観察で、大豆蛋白グループの人の血圧は上が13.0、下が5.4下がり、、炭水化物グループの人たちの血圧は、上が8.7、下が2.6下がりました。つまり、炭水化物グループの人たちに比べてに比べて、上が4.31、下が2.76低くなったことになります。特に、高血圧の人たちに限って調べると、炭水化物グループに比べ、大豆蛋白グループでは、上は7.88、下は5.27も下がったというのです。

大豆蛋白の血圧低下作用について、これまでの報告は、閉経後の女性で調べたところ、あまり変化がなかったというもの(Menopause 1999,6,7- 13)や、高血圧で治療中の患者さんの24時間血圧の変化で効果を認めたというもの(Hypertension2001, 38, 821- 826)などの報告がありました。今回の報告は健常者と軽症高血圧患者さんに対する効果を示したものといえると思います。ただ、期間が12週間と短期間である点は気になります。長期間のデータが待たれるところです。

大豆蛋白でなぜ血圧が下がるのか?

どうして大豆蛋白で血圧が下がるかという点については、様々な仮説があります。大豆蛋白に含まれるアルギニンというアミノ酸に血管拡張作用があるといわれていますし、蛋白摂取によりナトリウム、水、尿中ドーパミン(血圧を上げる作用のあるホルモン)の排泄が増加するともいわれていますし、インスリン感受性がよくなるということも指摘されています。それらの作用が重なって、血圧を下げたと考えられます。

リスクはないのか

そのような血圧低下効果のある大豆蛋白ですが、とりすぎの問題点も指摘されています。大豆の摂取量が一日の総カロリー1000kcalあたり36.9g以下の人に比べて、92.5g以上の人たちでは、膀胱癌の発生が2.3倍多いということが報告されているのです(ancer Epidemiol Biomarkers Prev 2002, 11, 1674- 1677)。

大豆蛋白40グラムとは:

大豆蛋白40gというのは、大豆バーガー1個(soy burger)と豆乳1〜2カップを2倍以上とらないととることはできないと著者らは指摘しています。ふつうに食事からとるのは難しい量ということになります。最近日本でも話題の黄粉(きなこ)ではどうかというと、黄粉100gあたりに含まれる蛋白質は35.5gです。たしかに大豆蛋白を毎日40g摂ろうと思ったら大変でしょう。

大豆蛋白がよいからといって、摂りすぎのリスクもあるわけですからバランスを考え、そればかり摂るのではなく、いろいろな食品を摂りながら、蛋白源はできるだけ大豆にする、と考える程度が現実的かもしれません。

ホームへ